『わたし史上最高のおしゃれになる!』『お金をかけずにシックなおしゃれ』などの著書があるファッションブロガー小林直子さんが、愛用しているアイテムをご紹介します。
◆服を作るより買ったほうが安い時代に
たぶん2000年以降の傾向だと思います。どんなに小さな街にも一つはあった手芸店が少しずつ消えていきました。ボタンを買ったあのお店も、アンダリヤのバッグ作りを習いに行ったあのお店も、気づけばなくなっていました。
それだけではなく、生地や毛糸、その他、手作りをするために必要なあれこれが売られていた大型の店舗も、知らない間に売り場が縮小、あるいは閉店してしまいました。中学や高校の家庭科の授業で使う必要な生地を探し回った、町田駅近辺の生地屋さんも今はもうありません。
もちろん今でも蒲田まで行けばあらゆるものがそろっているユザワヤがあって、困ることはありません。けれども、もっと身近にあった手作りや手芸は少し遠くの存在になってしまいました。
そんなことを感じていたあるとき、編み物が趣味の友達に、こう言われました。
「小林さん、自分で服を作ったり、セーターを編む趣味はすごくお金がかかるんです。今は服もセーターも買ったほうが安いですから!」
◆古着から新しいドレスを作るリメイク
そうなのです。私が学生だったころ、自分で作ったほうが安かった服やセーターは、ファストファッションの出現以降、買ったほうがずっと安いものになってしまい、手芸や洋服作りは、お金と時間に余裕がある人の趣味になってしまったのでした。今はもう、手作りの服やセーターを着て学校に行く学生なんて、あまり見かけないでしょう。
確かに生地の値段もだいぶ上がりました。生地の原材料はほとんど輸入品ですから、円安になればなおさらです。今、生地はとても高価なものになってしまいました。
一方、セカンドハンド店や古着屋は急増しています。もう既に作られた洋服なら安く簡単に、どこの街でも手に入ります。もちろん新しく生地を買うよりずっと安い。これを使ってリメイクすればいい、それはわかっていました。
けれども新しく一から何かをデザインして作るのと、もう既にあるものから別の何かを作るのでは、考え方が全く違うのです。
学校ではリメイクの仕方など習いません。指導されるのは生地の地の目を通すこと、柄合わせをすることです。となると、リメイクは二の足を踏んでしまいます。
しかし先日インスタグラムで、リメイクを得意とするトレーシーという女子を見つけました。彼女はニューヨークのFIT(ファッション工科大学)の卒業生なので、作り方もしっかりしています。
トレーシーは工業用ボディを使って形を作り、パターンを起こして裁断、自分で縫製して、古着から新しいドレスを作る様子の動画を次々にアップしています。それを見ながら、そうか、こうやればいいんだと、少しわかったつもりになったので、早速トレーシーを真似して、私もリメイクしてみることにしました。
◆きれいなレースの古着のスカートを使ってキャミソールに
見つけたのはきれいなレースの古着のスカート。先月使ったヘンプの生地がまだ少し余っていたので、その生地とレース生地で何かできないか、まずはボディに生地を当てながら考察。そこで思いついたのが、黒い短いトップつきのレースキャミソールです。
それまでも、要らなくなった服からポーチやクッションカバーは作ったことがありましたが、服から違う服を作るのは初めてです。これは想像していた以上に難しい。
作りたいデザインがあったとしても、生地幅が足りなかったり、素材とデザインが合わなかったりします。ああでもない、こうでもないと考えて、試行錯誤した結果、簡単なキャミソールとなりました。
◆簡単にできるものでもないリメイク。ポイントは…
なんてことはないデザインなのですが、縫製がまたひと苦労です。考えたら、こんなにスカスカのレース素材を縫うのは、これもまた初めて。試し縫いしたり、縫い直しをしたりと、見た目が簡単そうな割には、作るのに時間がかかりました。
ひととおり服作りができる私ですらこれだけ大変なのですから、素人がもう既にある服から違う服を作るのはもっと大変なことでしょう。誰でも簡単にできるものでもないと思います。
それでもリメイクするとしたら、ポイントは、まず大き目の古着を用意すること、切り替えが多いか、小さ目のパーツでできているデザインにすること、になるでしょう。作るのが簡単なのは、小さなクッションやポーチ、あるいはパッチワークでしょうか。
また古い着物だったら、糸をほどいてもパーツが長方形なので、リメイクしやすいと思います。ミシンを使うのが面倒だったら、手縫いでもいいでしょう。
もちろんそこまで完全なリメイクでなくても、裾丈を短くしたり、何か飾りをつける程度のことならもっと簡単です。最近はそういった、古着に何かしら新たにデザインを加えることをリデザインと呼んだりします。
手芸店は遠くなってしまったけれども、リサイクルショップや古着屋は身近な存在となりました。これからは、何かリメイクできるものがないか探しながら、リサイクルショップや古着屋を定期的に見て回るのもまた、一興ではないでしょうか。
◆参考:Tracy Garcia(@transformationsbytracy)
ヘンプ40番手平織りソフト(有限会社福田織物)
<文/小林直子>
【小林直子】
ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。著書『わたし史上最高のおしゃれになる!』など。
◆服を作るより買ったほうが安い時代に
たぶん2000年以降の傾向だと思います。どんなに小さな街にも一つはあった手芸店が少しずつ消えていきました。ボタンを買ったあのお店も、アンダリヤのバッグ作りを習いに行ったあのお店も、気づけばなくなっていました。
それだけではなく、生地や毛糸、その他、手作りをするために必要なあれこれが売られていた大型の店舗も、知らない間に売り場が縮小、あるいは閉店してしまいました。中学や高校の家庭科の授業で使う必要な生地を探し回った、町田駅近辺の生地屋さんも今はもうありません。
もちろん今でも蒲田まで行けばあらゆるものがそろっているユザワヤがあって、困ることはありません。けれども、もっと身近にあった手作りや手芸は少し遠くの存在になってしまいました。
そんなことを感じていたあるとき、編み物が趣味の友達に、こう言われました。
「小林さん、自分で服を作ったり、セーターを編む趣味はすごくお金がかかるんです。今は服もセーターも買ったほうが安いですから!」
◆古着から新しいドレスを作るリメイク
そうなのです。私が学生だったころ、自分で作ったほうが安かった服やセーターは、ファストファッションの出現以降、買ったほうがずっと安いものになってしまい、手芸や洋服作りは、お金と時間に余裕がある人の趣味になってしまったのでした。今はもう、手作りの服やセーターを着て学校に行く学生なんて、あまり見かけないでしょう。
確かに生地の値段もだいぶ上がりました。生地の原材料はほとんど輸入品ですから、円安になればなおさらです。今、生地はとても高価なものになってしまいました。
一方、セカンドハンド店や古着屋は急増しています。もう既に作られた洋服なら安く簡単に、どこの街でも手に入ります。もちろん新しく生地を買うよりずっと安い。これを使ってリメイクすればいい、それはわかっていました。
けれども新しく一から何かをデザインして作るのと、もう既にあるものから別の何かを作るのでは、考え方が全く違うのです。
学校ではリメイクの仕方など習いません。指導されるのは生地の地の目を通すこと、柄合わせをすることです。となると、リメイクは二の足を踏んでしまいます。
しかし先日インスタグラムで、リメイクを得意とするトレーシーという女子を見つけました。彼女はニューヨークのFIT(ファッション工科大学)の卒業生なので、作り方もしっかりしています。
トレーシーは工業用ボディを使って形を作り、パターンを起こして裁断、自分で縫製して、古着から新しいドレスを作る様子の動画を次々にアップしています。それを見ながら、そうか、こうやればいいんだと、少しわかったつもりになったので、早速トレーシーを真似して、私もリメイクしてみることにしました。
◆きれいなレースの古着のスカートを使ってキャミソールに
見つけたのはきれいなレースの古着のスカート。先月使ったヘンプの生地がまだ少し余っていたので、その生地とレース生地で何かできないか、まずはボディに生地を当てながら考察。そこで思いついたのが、黒い短いトップつきのレースキャミソールです。
それまでも、要らなくなった服からポーチやクッションカバーは作ったことがありましたが、服から違う服を作るのは初めてです。これは想像していた以上に難しい。
作りたいデザインがあったとしても、生地幅が足りなかったり、素材とデザインが合わなかったりします。ああでもない、こうでもないと考えて、試行錯誤した結果、簡単なキャミソールとなりました。
◆簡単にできるものでもないリメイク。ポイントは…
なんてことはないデザインなのですが、縫製がまたひと苦労です。考えたら、こんなにスカスカのレース素材を縫うのは、これもまた初めて。試し縫いしたり、縫い直しをしたりと、見た目が簡単そうな割には、作るのに時間がかかりました。
ひととおり服作りができる私ですらこれだけ大変なのですから、素人がもう既にある服から違う服を作るのはもっと大変なことでしょう。誰でも簡単にできるものでもないと思います。
それでもリメイクするとしたら、ポイントは、まず大き目の古着を用意すること、切り替えが多いか、小さ目のパーツでできているデザインにすること、になるでしょう。作るのが簡単なのは、小さなクッションやポーチ、あるいはパッチワークでしょうか。
また古い着物だったら、糸をほどいてもパーツが長方形なので、リメイクしやすいと思います。ミシンを使うのが面倒だったら、手縫いでもいいでしょう。
もちろんそこまで完全なリメイクでなくても、裾丈を短くしたり、何か飾りをつける程度のことならもっと簡単です。最近はそういった、古着に何かしら新たにデザインを加えることをリデザインと呼んだりします。
手芸店は遠くなってしまったけれども、リサイクルショップや古着屋は身近な存在となりました。これからは、何かリメイクできるものがないか探しながら、リサイクルショップや古着屋を定期的に見て回るのもまた、一興ではないでしょうか。
◆参考:Tracy Garcia(@transformationsbytracy)
ヘンプ40番手平織りソフト(有限会社福田織物)
<文/小林直子>
【小林直子】
ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。著書『わたし史上最高のおしゃれになる!』など。