ついに歌手デビューか!?
竹内涼真が9月10日放送の『バナナサンド』(TBS系)に出演。人気コーナーのハモリ我慢ゲームで「レイニーブルー」(德永英明)と「田園」(玉置浩二)で変わらぬ歌うまぶりを披露しました。
◆歌う役者ブームのなか竹内涼真は逸材
これまでにも「LOVE SONG」(CHAGE and ASKA)や「ボクノート」(スキマスイッチ)、「LA・LA・LA LOVE SONG」(久保田利伸 with ナオミ・キャンベル)などの名曲を歌い、視聴者を驚かせてきた竹内。最近はミュージカルでも主演を務めるなど、着実に“歌うま俳優”としての認知度を高めてきました。
近年は男女ともに歌う役者ブームです。ミュージシャンとしてもヒット曲を持つ菅田将暉や北村匠海を筆頭に、司会業もこなす松下洸平。女優では上白石萌歌、萌音の姉妹に、ギターを弾く姿がかっこいい池田エライザや、星野源とのセッションでも達者な高畑充希など、多士済済です。
しかし、“歌手、竹内涼真”はこの激しい競争の中で抜きん出るだけの逸材です。期待も込めて、その素晴らしさを考えてみたいと思います。
◆最も大事な音楽に向いた声、それが最大の強み
歌手に必要な要素とは何でしょうか? 確かな音程、リズム感、音域の広さ、声量。色々あると思いますが、大前提として音楽に向いた声を持っていなければ話になりません。わかりやすく言えば、聞いていたい声であるかどうか、ということです。竹内涼真は最も大事なものを持っています。
湿り気と、ほんのわずかのかすれ具合。この絶妙なブレンドが、ただキラキラと元気がよいだけでなく、音楽の侘び寂び(わびさび)を引き出している。フレーズごとの無意識の引き算が色気を生んでいるのですね。
これは技術ではなく、勘所(かんどころ)と呼ぶべきものでしょう。教えられてもできないことを、自然にできている。それが竹内涼真の歌の最大の強みなのです。
“上手いのになぜか売れないよね”という歌手がいると思います。そういう人は、残念ながら肝心なものが欠けているのです。音程やリズム、節回しやボリュームの調節など、聞く人が頭で理解できる技術は持ち合わせているのだけど、味わいがない。レシピを正確に再現しただけでは美味しい料理が仕上がらないのと同じことですね。
竹内涼真は、全体の味わいを声で表現することができるのです。
◆歌っている自分に没入せず余裕あるたたずまい
そして、この全体を把握する力が余裕あるたたずまいにつながっています。高い音を出すときでも常に周囲が見えている安心感があります。歌っている自分に没入していないのです。たとえば、目が血走って肩も肘もガチガチでハンドルを握っている人の運転する車に乗りたいと思うでしょうか?
歌もそれと同じこと。曲が道だとすれば、歌手はドライバーで聞く人は乗客。目的地に安全に到着することと、道中を楽しませることを両立させなければなりません。
熱唱しなくても豊かな声量を確保できる竹内の歌には、ときにリズムをずらして遊ぶ余裕があります。一生懸命さや必死さに甘えないところも、他にはない強みだと言えるでしょう。
喉(のど)を締め付けるような苦しさがなく、大きな骨格の箱で鳴っている。フィジカル面でのアドバンテージを生かした歌には、昨今の音楽シーンにはないスケール感があります。
◆余興のまま遊ばせておくのは音楽シーンにとって損失
いまのところ、バラエティ番組などでお遊び的に歌うことが多いようですが、これを余興のまま遊ばせておくのはもったいない。日本の音楽シーンにとって大きな損失です。
ただ上手いのではない。竹内涼真の歌は、良いのです。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
竹内涼真が9月10日放送の『バナナサンド』(TBS系)に出演。人気コーナーのハモリ我慢ゲームで「レイニーブルー」(德永英明)と「田園」(玉置浩二)で変わらぬ歌うまぶりを披露しました。
◆歌う役者ブームのなか竹内涼真は逸材
これまでにも「LOVE SONG」(CHAGE and ASKA)や「ボクノート」(スキマスイッチ)、「LA・LA・LA LOVE SONG」(久保田利伸 with ナオミ・キャンベル)などの名曲を歌い、視聴者を驚かせてきた竹内。最近はミュージカルでも主演を務めるなど、着実に“歌うま俳優”としての認知度を高めてきました。
近年は男女ともに歌う役者ブームです。ミュージシャンとしてもヒット曲を持つ菅田将暉や北村匠海を筆頭に、司会業もこなす松下洸平。女優では上白石萌歌、萌音の姉妹に、ギターを弾く姿がかっこいい池田エライザや、星野源とのセッションでも達者な高畑充希など、多士済済です。
しかし、“歌手、竹内涼真”はこの激しい競争の中で抜きん出るだけの逸材です。期待も込めて、その素晴らしさを考えてみたいと思います。
◆最も大事な音楽に向いた声、それが最大の強み
歌手に必要な要素とは何でしょうか? 確かな音程、リズム感、音域の広さ、声量。色々あると思いますが、大前提として音楽に向いた声を持っていなければ話になりません。わかりやすく言えば、聞いていたい声であるかどうか、ということです。竹内涼真は最も大事なものを持っています。
湿り気と、ほんのわずかのかすれ具合。この絶妙なブレンドが、ただキラキラと元気がよいだけでなく、音楽の侘び寂び(わびさび)を引き出している。フレーズごとの無意識の引き算が色気を生んでいるのですね。
これは技術ではなく、勘所(かんどころ)と呼ぶべきものでしょう。教えられてもできないことを、自然にできている。それが竹内涼真の歌の最大の強みなのです。
“上手いのになぜか売れないよね”という歌手がいると思います。そういう人は、残念ながら肝心なものが欠けているのです。音程やリズム、節回しやボリュームの調節など、聞く人が頭で理解できる技術は持ち合わせているのだけど、味わいがない。レシピを正確に再現しただけでは美味しい料理が仕上がらないのと同じことですね。
竹内涼真は、全体の味わいを声で表現することができるのです。
◆歌っている自分に没入せず余裕あるたたずまい
そして、この全体を把握する力が余裕あるたたずまいにつながっています。高い音を出すときでも常に周囲が見えている安心感があります。歌っている自分に没入していないのです。たとえば、目が血走って肩も肘もガチガチでハンドルを握っている人の運転する車に乗りたいと思うでしょうか?
歌もそれと同じこと。曲が道だとすれば、歌手はドライバーで聞く人は乗客。目的地に安全に到着することと、道中を楽しませることを両立させなければなりません。
熱唱しなくても豊かな声量を確保できる竹内の歌には、ときにリズムをずらして遊ぶ余裕があります。一生懸命さや必死さに甘えないところも、他にはない強みだと言えるでしょう。
喉(のど)を締め付けるような苦しさがなく、大きな骨格の箱で鳴っている。フィジカル面でのアドバンテージを生かした歌には、昨今の音楽シーンにはないスケール感があります。
◆余興のまま遊ばせておくのは音楽シーンにとって損失
いまのところ、バラエティ番組などでお遊び的に歌うことが多いようですが、これを余興のまま遊ばせておくのはもったいない。日本の音楽シーンにとって大きな損失です。
ただ上手いのではない。竹内涼真の歌は、良いのです。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4