江口のりこさん、小泉孝太郎さんが夫婦役で共演した映画『愛に乱暴』が現在公開中です。吉田修一の同名小説を森ガキ侑大監督が映画化した本作は、愛のいびつな暴走を描いたヒューマンサスペンスです。
結婚8年目にして徐々に平穏を失っていく“妻”桃子を江口さんが、家庭生活を送りながらも心は常にどこか違う場所にある“夫”真守を小泉さんが好演。共演の感想や夫婦の愛の形など作品にまつわる話を聞きました。
◆数年に1回共演する仲
――おふたりは結婚8年目の夫婦役でしたが、改めて共演はいかがでしたか?
小泉:江口さんとは何年かに1回という面白いサイクルでお会いしてるんですけど、江口さんに追いつめられる、もう精神的にも参ってしまうくらいの役がこれまでもあって。今回もある意味、江口さんとは心の底からハッピーになれる役じゃないんです。むしろその逆(笑)。それはそれで面白いですし、江口さんとのご縁だなと思っています。僕の中で強烈な印象を残す女性ですよ、江口さんって。今回の桃子も、もう忘れられない(笑)。
江口:共演がとても楽しみでした。孝太郎さんとは何度かご一緒させてもらっているのですが、がっつり一緒にお芝居したのが10年くらい前のTBSのドラマ(『名もなき毒』)でした。わたしが孝太郎さんに一方的に惚れてストーカーして、その娘まで誘拐する役でした。
小泉:あれはすごかったです(笑)。
江口:そういうとんでもない女性の役だったんですけど、今回旦那さん役が孝太郎さんで、またしてもこう一方的に孝太郎さんを追い詰める役で。なんでわたしは小泉孝太郎を追いかけ回す役ばっかりなんだろうって思いました。でも、これだけ世の中に役者さんがたくさんいるのに、不思議なご縁があると思いました。やっぱり孝太郎さんってすごく面白い方なのでね。一緒に時間を過ごせるのは、とても楽しみでした。
小泉:うれしいです(笑)。そんなふうに思ってくださって。
◆「もう、変じゃないですか」
――撮影中の面白かったエピソードなどありますか?
江口:エピソードっていうか、もう、変じゃないですか。
小泉:変。変みたいです。江口さんから見て、僕(笑)。
江口:みんなが思っていることなんですよ(笑)。上手く説明できないんですけどね。あとたぶん10分くらい話していれば誰もが気づくと思うんですけどね。面白い方です。
小泉:僕自身は真剣に考えて生きていることが、江口さんからしたら本当に変に映っているという(笑)。
江口:そうなんです。決してふざけているわけではないんですよ、全然。別に笑かそうと思ってやってるわけではないんですよね。
◆脚本を読んで“生きた心地がしない”気分に
――本作の脚本を最初に読んだときの印象はいかがでしたか?
小泉:僕は呼吸が浅くなるような感じはしましたよね。生きた心地がしないというか、落ち着いて深呼吸もできないようなね。正直、僕はまだ独身だから、夫婦がたとえばあのような形で毎日を過ごさなきゃいけないんだったら、あそこまでして一緒にいる必要ないなとも思う。
あそこまでの我慢をしてね。もっとお互いにとってのいい形っていうのはなかったのかな、とか。結婚する人、結婚した人にしかわからないんだろうなと。そういう夫婦の形を考えたときに息苦しかったですよ。
江口:小説から映画(脚本)にするにあたって、登場人物だったり、エピソードだったりをずいぶんそぎ落として、とてもシンプルになっていたんですよね。そういう脚本だったので、桃子を演じるのは難しいなと思いました。
◆夫婦役を演じてみて
――実際演じてみて、どうでしたか?
江口:孝太郎さんや義母役の風吹ジュンさん、共演者の方々に助けていただいて、桃子を作っていった感じです。
小泉:夫婦役ですからね。いろいろな愛の形があると思いますが、いろいろな愛が家の中や日常生活の中にあるわけで、それが僕が演じた真守にとっては、本当に苦しく、余計なものなんだろうなと。息苦しい現実でしかなかったんだろうなと思いました。
江口:どんな役も難しさってあるんですが、とてもいい現場で、スタッフさんも共演者のみなさんもそれぞれが自分の仕事と向き合って、一生懸命楽しくやれたので、それはとても良かったですね。
◆“妙な夫婦”になっている
――原作者の吉田先生も公式サイトのコメントでとてもキラキラした現場とおっしゃっていましたよね。
小泉:現場良かったですよ。ほとんどワンシーンワンカットで気持ち良かったですしね。そのワンカットの魅力も詰まっていると思う。ワンカットだからこその迫力や雰囲気。たとえば 後ろ姿だけであえて見せるとかね。なんだかじっと見入ってしまう説得力みたいなものがあるんじゃないですかね。
ただ、たとえばいろいろな夫婦の方にインタビューしたら、こういうこと、こういう感情ってあるよねってなると思うんですよ。ごく日常的な夫婦の様相だったり会話だったりが描かれているので、多くの人が「こういうことあったな」とか「桃子の(真守の)感じはわかる」とか思えるであろうシーンが多いので、だからこそワンカットが効いたような気がしますね。
――世の中のご夫婦をはじめ、みなさんどういう感想を抱かれるのか楽しみですよね。
小泉:小泉孝太郎、江口のりこっていう夫婦は、想像つかないと思うので面白いと思います(笑)。自分でも想像つかなかったですし、たぶんご覧になる方もそうだと思う。江口さんが演じる桃子、僕が演じる真守。客観的に見ても面白いです。
江口:妙な夫婦になっていると思います。少し可笑しさも感じてもらえるような。とにかく、劇場で観ていただきたいです。
<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
結婚8年目にして徐々に平穏を失っていく“妻”桃子を江口さんが、家庭生活を送りながらも心は常にどこか違う場所にある“夫”真守を小泉さんが好演。共演の感想や夫婦の愛の形など作品にまつわる話を聞きました。
◆数年に1回共演する仲
――おふたりは結婚8年目の夫婦役でしたが、改めて共演はいかがでしたか?
小泉:江口さんとは何年かに1回という面白いサイクルでお会いしてるんですけど、江口さんに追いつめられる、もう精神的にも参ってしまうくらいの役がこれまでもあって。今回もある意味、江口さんとは心の底からハッピーになれる役じゃないんです。むしろその逆(笑)。それはそれで面白いですし、江口さんとのご縁だなと思っています。僕の中で強烈な印象を残す女性ですよ、江口さんって。今回の桃子も、もう忘れられない(笑)。
江口:共演がとても楽しみでした。孝太郎さんとは何度かご一緒させてもらっているのですが、がっつり一緒にお芝居したのが10年くらい前のTBSのドラマ(『名もなき毒』)でした。わたしが孝太郎さんに一方的に惚れてストーカーして、その娘まで誘拐する役でした。
小泉:あれはすごかったです(笑)。
江口:そういうとんでもない女性の役だったんですけど、今回旦那さん役が孝太郎さんで、またしてもこう一方的に孝太郎さんを追い詰める役で。なんでわたしは小泉孝太郎を追いかけ回す役ばっかりなんだろうって思いました。でも、これだけ世の中に役者さんがたくさんいるのに、不思議なご縁があると思いました。やっぱり孝太郎さんってすごく面白い方なのでね。一緒に時間を過ごせるのは、とても楽しみでした。
小泉:うれしいです(笑)。そんなふうに思ってくださって。
◆「もう、変じゃないですか」
――撮影中の面白かったエピソードなどありますか?
江口:エピソードっていうか、もう、変じゃないですか。
小泉:変。変みたいです。江口さんから見て、僕(笑)。
江口:みんなが思っていることなんですよ(笑)。上手く説明できないんですけどね。あとたぶん10分くらい話していれば誰もが気づくと思うんですけどね。面白い方です。
小泉:僕自身は真剣に考えて生きていることが、江口さんからしたら本当に変に映っているという(笑)。
江口:そうなんです。決してふざけているわけではないんですよ、全然。別に笑かそうと思ってやってるわけではないんですよね。
◆脚本を読んで“生きた心地がしない”気分に
――本作の脚本を最初に読んだときの印象はいかがでしたか?
小泉:僕は呼吸が浅くなるような感じはしましたよね。生きた心地がしないというか、落ち着いて深呼吸もできないようなね。正直、僕はまだ独身だから、夫婦がたとえばあのような形で毎日を過ごさなきゃいけないんだったら、あそこまでして一緒にいる必要ないなとも思う。
あそこまでの我慢をしてね。もっとお互いにとってのいい形っていうのはなかったのかな、とか。結婚する人、結婚した人にしかわからないんだろうなと。そういう夫婦の形を考えたときに息苦しかったですよ。
江口:小説から映画(脚本)にするにあたって、登場人物だったり、エピソードだったりをずいぶんそぎ落として、とてもシンプルになっていたんですよね。そういう脚本だったので、桃子を演じるのは難しいなと思いました。
◆夫婦役を演じてみて
――実際演じてみて、どうでしたか?
江口:孝太郎さんや義母役の風吹ジュンさん、共演者の方々に助けていただいて、桃子を作っていった感じです。
小泉:夫婦役ですからね。いろいろな愛の形があると思いますが、いろいろな愛が家の中や日常生活の中にあるわけで、それが僕が演じた真守にとっては、本当に苦しく、余計なものなんだろうなと。息苦しい現実でしかなかったんだろうなと思いました。
江口:どんな役も難しさってあるんですが、とてもいい現場で、スタッフさんも共演者のみなさんもそれぞれが自分の仕事と向き合って、一生懸命楽しくやれたので、それはとても良かったですね。
◆“妙な夫婦”になっている
――原作者の吉田先生も公式サイトのコメントでとてもキラキラした現場とおっしゃっていましたよね。
小泉:現場良かったですよ。ほとんどワンシーンワンカットで気持ち良かったですしね。そのワンカットの魅力も詰まっていると思う。ワンカットだからこその迫力や雰囲気。たとえば 後ろ姿だけであえて見せるとかね。なんだかじっと見入ってしまう説得力みたいなものがあるんじゃないですかね。
ただ、たとえばいろいろな夫婦の方にインタビューしたら、こういうこと、こういう感情ってあるよねってなると思うんですよ。ごく日常的な夫婦の様相だったり会話だったりが描かれているので、多くの人が「こういうことあったな」とか「桃子の(真守の)感じはわかる」とか思えるであろうシーンが多いので、だからこそワンカットが効いたような気がしますね。
――世の中のご夫婦をはじめ、みなさんどういう感想を抱かれるのか楽しみですよね。
小泉:小泉孝太郎、江口のりこっていう夫婦は、想像つかないと思うので面白いと思います(笑)。自分でも想像つかなかったですし、たぶんご覧になる方もそうだと思う。江口さんが演じる桃子、僕が演じる真守。客観的に見ても面白いです。
江口:妙な夫婦になっていると思います。少し可笑しさも感じてもらえるような。とにかく、劇場で観ていただきたいです。
<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。