俳優の木戸大聖さん(27歳)が、公開中のアニメーション映画『きみの色』で声優に初挑戦しました。山田尚子監督最新作の本作では、医者になることを期待されるも隠れて音楽活動をしているルイ役を好演しています。
声優初挑戦の木戸さんは、2017年に芸能活動をスタート。デビュー以降、映画・ドラマ・バラエティーと幅広く活躍中ですが、ある経験を機に仕事への向き合い方に変化があったとか。初挑戦の声優のこと、来たる30代のこと、理想とする人のことなど、さまざまなお話をうかがいました。
◆シアターに自分の声が響き、体温が上がった
――今回声優に初挑戦ということで、出演が決まったときはいかがでしたでしょうか?
木戸:今回オーディションを受けたのですが、一度も挑戦したことがないジャンルのお仕事でした。山田監督の作品を過去にも観ていたので、最新作のオーディションのお話をいただいた段階で、まず受ける権利が自分にあるのだとわくわくしました(笑)。なので、前向きに挑戦させていただきましたし、受かったときはうれしかったです。
――音楽で心を通わせていく三人の青春物語ですが、ルイというキャラクターについてはどのように受け止めましたか?
木戸:非常に優しくてもの静かではあるけれども、音楽が大好きなので、そういう自分が好きなことにはどんどんハマってテンションも上がっていくタイプです。トツ子(鈴川紗由)、きみ(髙石あかり)からすると、彼のふんわりした雰囲気が居心地いいのだろうなと思います。
――自分の声がスクリーンから出てくると思いますが、完成した映画の感想はいかがでしたか?
木戸:緊張してずっと汗かいていました(笑)。普段、実写映画やドラマの初号を観ているのでだいぶ慣れてきたと思ってはいましたが、今回は全然違いました。自分のシーンが来る! みたいに構えてしまって(笑)。シアターに自分の声が響き渡っていたので、体温がどんどん上がってました。
◆どの仕事もすべてがつながっていき、糧になる
――演じるという意味では普段と同じかと思いますが、アニメーションならではの難しさはありましたか?
木戸:ルイが少年心に戻るところは難しかったです。急にテンションが上がったり、ふたりに久しぶりに会えて飛び跳ねて喜んでいるシーンでは、当初自分が思う声を当てたとき、ルイのテンションに追いついてない、絵と声が分離している感じだったんです。自分が普段お芝居をしているときよりも、もっと大きな表現でみせないと足らない場面がありました。なので、普段とは違うアプローチでお芝居をしました。
――初挑戦も踏まえて、ご自身にとってはどういう作品になりましたか?
木戸:僕自身、役者はジャンルが違うどの仕事もすべてがつながっていき、糧になっていくという考え方をしています。いろいろなジャンルの仕事を今後もやっていきたいと思うなかで、今回の初めての声優業というのは、大きな体験でした。
特に山田監督の作品は人物の感情の変化を大事にされているので、僕が今度この経験を経て、ドラマや映画、舞台で演じるときに活きてくると思います。今回は声だけで表現しましたが、自分でもこういう声が出せるんだと気付きもあったので、またひとつ役者として成長させていただけた大きな作品です。
◆キャリアのスタートは子ども番組
――声優の経験がお芝居にも活きるという考え方は、仕事の向き合い方としてとても素晴らしいと思いましたが、いつ頃からそのような意識で仕事をされているのですか?
木戸:僕のキャリアのスタートが、子ども番組から始まっていることが大きいです。その当時は役者として活動している中で、20歳でレギュラーをいただけたことはありがたかったのですが、その分どこかで俳優業が止まってしまった感覚を持っていました。
けれども、番組のステージで小さいお子さんや親御さんと触れ合っていくうちに、情報番組でレポーターをしたとき、同世代の俳優の方々ができていないことが自分にはできているという感覚に変わったんです。
それ以来、自分にしか出来ていない経験は武器になるし、そういう経験をたくさん積み重ねていけば、唯一無二の役者になれると思ったんです。やったことがないことへの挑戦心は、常に持ち続けようと思うようになりました。
――そういう経験も経て今回の映画にも至るわけですが、映画やドラマで活躍中の現状をどう受け止めていますか?
木戸:「当時挑戦したかったことが、今できている」という喜びが一番にあります。その上で現場に行くことが今は楽しくて仕方がないですし、どんどん高みを目指したくなるような刺激もいっぱい得ています。主演の方のお芝居を近くで見て刺激を受けています。
◆憧れは所属事務所の社長でもある小栗旬
――ひとつひとつの仕事を丁寧に自分の中に織り込んでくような仕事の仕方とでも言いましょうか。
木戸:そういうスタイルかもしれないです。すべてがつながっていくという考え方をしていると言いましたが、これまで出会ってきた番組、人や作品は、それがもし一個でも欠けていたら、今この場に僕はいないと思うんです。そういう考え方をしているので、すべての経験が折り重なって厚みが出て、立派な役者になれると思っています。
――それこそ唯一無二の木戸さんの色が作られていく感じがします。
木戸:そうですね(笑)。でも自分を一色でたとえることが本当は難しいなと思っている部分があって、いろいろな色をみんなが持っているし、逆に役者という仕事をするなら、いろいろな色に染まれる白色が正解かも知れないです。自由自在に変わる、多彩な役者でいたいと思います。
――話をするにはまだ早いですが、来たる30代は楽しみですか?
木戸:楽しみではありますが、20代が終わってしまう不安もあります(笑)。でもしっかり地に足が着いた、厚みがある役を演じられる30代を過ごしたいなと思っています。
――将来的な理想像はありますか?
木戸:事務所の社長でもある小栗旬さんの役者ロードには、とてもあこがれがあります。20代は本当に多忙で輝いていて、やがて大河の主演やハリウッドまで挑戦しているという。まだまだ止まらない、どんどん前に進んで行く姿が、僕は後ろから見ていて本当にかっこいいと思います。そういうふうになりたいですし、素敵な社長です(笑)。
<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
声優初挑戦の木戸さんは、2017年に芸能活動をスタート。デビュー以降、映画・ドラマ・バラエティーと幅広く活躍中ですが、ある経験を機に仕事への向き合い方に変化があったとか。初挑戦の声優のこと、来たる30代のこと、理想とする人のことなど、さまざまなお話をうかがいました。
◆シアターに自分の声が響き、体温が上がった
――今回声優に初挑戦ということで、出演が決まったときはいかがでしたでしょうか?
木戸:今回オーディションを受けたのですが、一度も挑戦したことがないジャンルのお仕事でした。山田監督の作品を過去にも観ていたので、最新作のオーディションのお話をいただいた段階で、まず受ける権利が自分にあるのだとわくわくしました(笑)。なので、前向きに挑戦させていただきましたし、受かったときはうれしかったです。
――音楽で心を通わせていく三人の青春物語ですが、ルイというキャラクターについてはどのように受け止めましたか?
木戸:非常に優しくてもの静かではあるけれども、音楽が大好きなので、そういう自分が好きなことにはどんどんハマってテンションも上がっていくタイプです。トツ子(鈴川紗由)、きみ(髙石あかり)からすると、彼のふんわりした雰囲気が居心地いいのだろうなと思います。
――自分の声がスクリーンから出てくると思いますが、完成した映画の感想はいかがでしたか?
木戸:緊張してずっと汗かいていました(笑)。普段、実写映画やドラマの初号を観ているのでだいぶ慣れてきたと思ってはいましたが、今回は全然違いました。自分のシーンが来る! みたいに構えてしまって(笑)。シアターに自分の声が響き渡っていたので、体温がどんどん上がってました。
◆どの仕事もすべてがつながっていき、糧になる
――演じるという意味では普段と同じかと思いますが、アニメーションならではの難しさはありましたか?
木戸:ルイが少年心に戻るところは難しかったです。急にテンションが上がったり、ふたりに久しぶりに会えて飛び跳ねて喜んでいるシーンでは、当初自分が思う声を当てたとき、ルイのテンションに追いついてない、絵と声が分離している感じだったんです。自分が普段お芝居をしているときよりも、もっと大きな表現でみせないと足らない場面がありました。なので、普段とは違うアプローチでお芝居をしました。
――初挑戦も踏まえて、ご自身にとってはどういう作品になりましたか?
木戸:僕自身、役者はジャンルが違うどの仕事もすべてがつながっていき、糧になっていくという考え方をしています。いろいろなジャンルの仕事を今後もやっていきたいと思うなかで、今回の初めての声優業というのは、大きな体験でした。
特に山田監督の作品は人物の感情の変化を大事にされているので、僕が今度この経験を経て、ドラマや映画、舞台で演じるときに活きてくると思います。今回は声だけで表現しましたが、自分でもこういう声が出せるんだと気付きもあったので、またひとつ役者として成長させていただけた大きな作品です。
◆キャリアのスタートは子ども番組
――声優の経験がお芝居にも活きるという考え方は、仕事の向き合い方としてとても素晴らしいと思いましたが、いつ頃からそのような意識で仕事をされているのですか?
木戸:僕のキャリアのスタートが、子ども番組から始まっていることが大きいです。その当時は役者として活動している中で、20歳でレギュラーをいただけたことはありがたかったのですが、その分どこかで俳優業が止まってしまった感覚を持っていました。
けれども、番組のステージで小さいお子さんや親御さんと触れ合っていくうちに、情報番組でレポーターをしたとき、同世代の俳優の方々ができていないことが自分にはできているという感覚に変わったんです。
それ以来、自分にしか出来ていない経験は武器になるし、そういう経験をたくさん積み重ねていけば、唯一無二の役者になれると思ったんです。やったことがないことへの挑戦心は、常に持ち続けようと思うようになりました。
――そういう経験も経て今回の映画にも至るわけですが、映画やドラマで活躍中の現状をどう受け止めていますか?
木戸:「当時挑戦したかったことが、今できている」という喜びが一番にあります。その上で現場に行くことが今は楽しくて仕方がないですし、どんどん高みを目指したくなるような刺激もいっぱい得ています。主演の方のお芝居を近くで見て刺激を受けています。
◆憧れは所属事務所の社長でもある小栗旬
――ひとつひとつの仕事を丁寧に自分の中に織り込んでくような仕事の仕方とでも言いましょうか。
木戸:そういうスタイルかもしれないです。すべてがつながっていくという考え方をしていると言いましたが、これまで出会ってきた番組、人や作品は、それがもし一個でも欠けていたら、今この場に僕はいないと思うんです。そういう考え方をしているので、すべての経験が折り重なって厚みが出て、立派な役者になれると思っています。
――それこそ唯一無二の木戸さんの色が作られていく感じがします。
木戸:そうですね(笑)。でも自分を一色でたとえることが本当は難しいなと思っている部分があって、いろいろな色をみんなが持っているし、逆に役者という仕事をするなら、いろいろな色に染まれる白色が正解かも知れないです。自由自在に変わる、多彩な役者でいたいと思います。
――話をするにはまだ早いですが、来たる30代は楽しみですか?
木戸:楽しみではありますが、20代が終わってしまう不安もあります(笑)。でもしっかり地に足が着いた、厚みがある役を演じられる30代を過ごしたいなと思っています。
――将来的な理想像はありますか?
木戸:事務所の社長でもある小栗旬さんの役者ロードには、とてもあこがれがあります。20代は本当に多忙で輝いていて、やがて大河の主演やハリウッドまで挑戦しているという。まだまだ止まらない、どんどん前に進んで行く姿が、僕は後ろから見ていて本当にかっこいいと思います。そういうふうになりたいですし、素敵な社長です(笑)。
<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。