2024年、西島秀俊の新しい挑戦が止まりません。まず7月にはハリウッドデビュー作となるミステリードラマ『サニー』(全10話)がApple TV+で配信をスタート。そして9月13日から公開中の映画『スオミの話をしよう』では、三谷幸喜作品に初参加しています。53歳となったイマも変わらず活躍目覚ましい西島が、最新作品で放つ魅力をご紹介。
◆53歳俳優のチャーミングすぎる投げキッス
『サニー』は近未来の京都が舞台。西島は主人公のアメリカ人女性・スージー(ラシダ・ジョーンズ)の夫・マサを演じています。物語冒頭、マサは息子とともに飛行機事故で消息不明に。悲しみに暮れるスージーは、冷蔵庫部門で働いていたはずの夫が製造したという家庭用ロボット・サニーと過ごすことに。サニーとの出逢いをきっかけに、スージーはマサへの疑念に駆られ、飛行機事故に隠された陰謀に巻き込まれていくという展開です。
第1話では出番の少ない西島ですが、飛行機に搭乗する直前のシーンで観る者の心を鷲掴みに! 搭乗口へと歩き出したと思ったら、ふと振り返ってスージーに“投げキッス”をしたのです!! えっ?! 何その“投げキッス”! こんなチャーミングな“投げキッス”見たことない! 筆者は「ハートを射抜かれるとは、こういうことか?!」と物語そっちのけで放心してしまいました。実はこの“投げキッス”、物語にとっても重要なカギとなっているのですが、それ以前に破壊力が凄まじかったです。
◆英語の台詞も完璧! 視聴者を虜にする優しい声
もちろん“投げキッス”だけではありません。妻に明かさずロボット開発をしていたマサの実情は少しずつ明かされていきますが、さまざまな葛藤や過去を抱えていることが分かります。そんなマサという人物を、西島は日本語と英語両方の台詞を巧みに操って演じているのです。
第2話ではスージーとマサが出逢い、心を通わせていく様子が描かれます。自身の過去を告白した際の複雑な心境は、声のトーンと抑揚だけでも伝わってきました。英語で聴いているとは思えないほどに。西島はこれまでも公の場所で英語を話していましたが、こんなにも作品に馴染むのは、並々ならぬ研鑽が積まれてきたからだと容易に分かります。そして第2話後半、ベッドで美しい肉体と優しい声の英語でスージーを口説く西島には完全KOされました。
これまで培われた西島の魅力を、新たな切り口で見せてくれた『サニー』。ぜひ第2シーズンも制作してほしい!
◆嫌味も愛おしく感じさせる“神経質”が新鮮!
新たな切り口という意味では、西島の“三谷幸喜作品”初参加となった映画『スオミの話をしよう』のキャラクターも新鮮でした。本作ではヒロイン・スオミ(長澤まさみ)の4番目の夫である、神経質な警察官・草野を演じています。
映画を観たら、その“神経質さ”は想像以上。色んなことに、とにかく細かい!! スオミに、彼女との“キス”について言及するシーンがあるのですが、こんなこと相手に言われたら誰でもブチ切れるような内容でした(笑)。しかし、なぜかイラッとさせないのが西島の不思議なところ。三谷監督も、SNSに公開した撮影日誌で次のように語っています。
<初めてご一緒する西島さん。料理が苦手だと言うスオミに「料理だけが苦手な言い方だな」と返す。かなり嫌味なセリフを、とても清々しく言ってくれる西島さんに、一瞬で信頼感が芽生えた。>(三谷幸喜Instagramより)
嫌味な台詞を清々しく“イラッ”と聞かせないのは、草野という人物を魅力的に見せるポイントだったのかも。過去にダメ男も色々演じてきた西島ですが、どうしてもどこか憎めないキャラクターになっています。役のもつ人間らしい愛らしさを表現するのが彼の魅力であり、好感度が高い理由なのかも知れません。
◆にじみ出る真摯な人柄が好感度を爆上げ
西島は映画の告知で多くのバラエティ番組にも出演していましたが、下積みが長かったからか、ベテランなのに驕(おご)った様子がまったくありません。目の前の人に対して真摯に向き合い、バラエティでも心からその企画を楽しんでいます。『バナナマンのせっかくグルメ!!』(9月8日放送/TBS系)で、店舗に腰低く撮影交渉をする姿や、出されたご飯を美味しそうに間食する姿、「天ぷらにハマっている」とはしゃぐ姿は、実に自然で彼の人柄を感じさせました。
また「ダンスは苦手」と公言していたのに、『スオミの話をしよう』ではダンスシーンも初披露した西島。苦手なダンスも、苦手ながら懸命に、楽しみながら踊っていることがスクリーンから伝わってきました。変わらず持ち合わせてきた好感度に、三谷監督のスパイスが加わり、また一味ちがった“俳優・西島秀俊”が楽しめます。
========
米アカデミー賞国際長編映画賞をはじめ多くの賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』の主演を務め、日本を代表する俳優の一人である西島。次はどんな役に挑んでくれるのか。また新たな挑戦で私たちを魅了してほしいです。
<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>
【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201
◆53歳俳優のチャーミングすぎる投げキッス
『サニー』は近未来の京都が舞台。西島は主人公のアメリカ人女性・スージー(ラシダ・ジョーンズ)の夫・マサを演じています。物語冒頭、マサは息子とともに飛行機事故で消息不明に。悲しみに暮れるスージーは、冷蔵庫部門で働いていたはずの夫が製造したという家庭用ロボット・サニーと過ごすことに。サニーとの出逢いをきっかけに、スージーはマサへの疑念に駆られ、飛行機事故に隠された陰謀に巻き込まれていくという展開です。
第1話では出番の少ない西島ですが、飛行機に搭乗する直前のシーンで観る者の心を鷲掴みに! 搭乗口へと歩き出したと思ったら、ふと振り返ってスージーに“投げキッス”をしたのです!! えっ?! 何その“投げキッス”! こんなチャーミングな“投げキッス”見たことない! 筆者は「ハートを射抜かれるとは、こういうことか?!」と物語そっちのけで放心してしまいました。実はこの“投げキッス”、物語にとっても重要なカギとなっているのですが、それ以前に破壊力が凄まじかったです。
◆英語の台詞も完璧! 視聴者を虜にする優しい声
もちろん“投げキッス”だけではありません。妻に明かさずロボット開発をしていたマサの実情は少しずつ明かされていきますが、さまざまな葛藤や過去を抱えていることが分かります。そんなマサという人物を、西島は日本語と英語両方の台詞を巧みに操って演じているのです。
第2話ではスージーとマサが出逢い、心を通わせていく様子が描かれます。自身の過去を告白した際の複雑な心境は、声のトーンと抑揚だけでも伝わってきました。英語で聴いているとは思えないほどに。西島はこれまでも公の場所で英語を話していましたが、こんなにも作品に馴染むのは、並々ならぬ研鑽が積まれてきたからだと容易に分かります。そして第2話後半、ベッドで美しい肉体と優しい声の英語でスージーを口説く西島には完全KOされました。
これまで培われた西島の魅力を、新たな切り口で見せてくれた『サニー』。ぜひ第2シーズンも制作してほしい!
◆嫌味も愛おしく感じさせる“神経質”が新鮮!
新たな切り口という意味では、西島の“三谷幸喜作品”初参加となった映画『スオミの話をしよう』のキャラクターも新鮮でした。本作ではヒロイン・スオミ(長澤まさみ)の4番目の夫である、神経質な警察官・草野を演じています。
映画を観たら、その“神経質さ”は想像以上。色んなことに、とにかく細かい!! スオミに、彼女との“キス”について言及するシーンがあるのですが、こんなこと相手に言われたら誰でもブチ切れるような内容でした(笑)。しかし、なぜかイラッとさせないのが西島の不思議なところ。三谷監督も、SNSに公開した撮影日誌で次のように語っています。
<初めてご一緒する西島さん。料理が苦手だと言うスオミに「料理だけが苦手な言い方だな」と返す。かなり嫌味なセリフを、とても清々しく言ってくれる西島さんに、一瞬で信頼感が芽生えた。>(三谷幸喜Instagramより)
嫌味な台詞を清々しく“イラッ”と聞かせないのは、草野という人物を魅力的に見せるポイントだったのかも。過去にダメ男も色々演じてきた西島ですが、どうしてもどこか憎めないキャラクターになっています。役のもつ人間らしい愛らしさを表現するのが彼の魅力であり、好感度が高い理由なのかも知れません。
◆にじみ出る真摯な人柄が好感度を爆上げ
西島は映画の告知で多くのバラエティ番組にも出演していましたが、下積みが長かったからか、ベテランなのに驕(おご)った様子がまったくありません。目の前の人に対して真摯に向き合い、バラエティでも心からその企画を楽しんでいます。『バナナマンのせっかくグルメ!!』(9月8日放送/TBS系)で、店舗に腰低く撮影交渉をする姿や、出されたご飯を美味しそうに間食する姿、「天ぷらにハマっている」とはしゃぐ姿は、実に自然で彼の人柄を感じさせました。
また「ダンスは苦手」と公言していたのに、『スオミの話をしよう』ではダンスシーンも初披露した西島。苦手なダンスも、苦手ながら懸命に、楽しみながら踊っていることがスクリーンから伝わってきました。変わらず持ち合わせてきた好感度に、三谷監督のスパイスが加わり、また一味ちがった“俳優・西島秀俊”が楽しめます。
========
米アカデミー賞国際長編映画賞をはじめ多くの賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』の主演を務め、日本を代表する俳優の一人である西島。次はどんな役に挑んでくれるのか。また新たな挑戦で私たちを魅了してほしいです。
<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>
【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201