2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、私たちの生活は、ほぼコロナ禍以前の生活に戻っています。
しかし、病気自体がなくなったわけではなく、後遺症に苦しむ人もたくさんいます。
えぞいちごさんとその夫もその当事者で、新型コロナウイルス感染による筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(略称ME/CFS)に苦しみ、体験談を漫画にX(旧:Twitter)に投稿しています。
そんな彼女に罹患の経緯から、新型コロナウイルスを取り巻く現在の状況について話を聞きました。
◆筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(略称ME/CFS)とは
――筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(略称ME/CFS)はどのような病気なのでしょうか。
「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(以下ME/CFS)は、WHOが神経系疾患に分類している神経難病です。
これまで健康に生活をしていた人が突然、原因不明の全身の倦怠感に襲われ、微熱、関節痛、筋肉痛、認知機能・記憶力の低下、頭痛、不眠、動悸、抑うつ症状など、他にもさまざまな症状が現れ、日常生活を送るのに支障をきたす病気です。
体を動かす、頭を使う、感情が激しく揺さぶられるなどの後に、PEM(クラッシュ)と呼ばれる病的な倦怠感症状が現れることも特徴です。新型コロナウイルスやSARSなど、感染症に罹患したことをきっかけには発症することが多いようですが、外傷、輸血、ワクチン接種、ストレスなども引き金になると考えられています。
現在、完治することは難しいと考えられ、PEM(クラッシュ)を起こさないように気を付けながら長期的に対症療法を続け、改善を図る以外に手立てはありません。なお、PEM(クラッシュ)が現れると動くことが困難になり、これを繰り返すと(人によっては一度でも)寝たきりになるケースもあります。同じ病気であっても、人によって現れる症状、程度、タイミングは異なります。
ME/CFSは、一般の方のみならず医療従事者にもあまり知られておらず、専門医も限られていることから、発覚しづらい病気です。また、この病気の特性上、遠方の病院を受診しづらいことも課題として挙げられます。
私は罹患前の8割程度まで回復しましたが、たまに人と会う場合は、予定に合わせて体調の整え、会った翌日はしっかり休みをなどのコントロール、いわゆるペーシングが必要です。
また感染症や後遺症への周囲の無理解、加えてコロナ再感染によるリスクが高いこともあり、罹患以前のように気軽に人と会うことを躊躇してしまいます。夫は、以前は、肉体的にきつい仕事をこなしていて、とても活動的な人でした。しかし、私よりも症状が重く、仕事を辞めざるを得なくなり、出かけることが難しくなってしまいました」(えぞいちごさん 以下カギカッコ内同じ)
◆突然動けなくなる
――病名が発覚するまでの過程を簡単にお聞かせください。
「宿泊したホテルで海外からの旅行客と接触後、夫と私に軽い風邪の症状が現れました。
そして、その後夫にさまざまな症状が現れ、突然動けなくなるということが繰り返し起こりました。多くの病院やクリニックに受診をし、検査を行いましたが、症状が重いわりに大きな異常は認められず、不思議に思っていました。
そこで夫は自身で病気について調べ始め、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(以下ME/CFS)の患者会と接触。そのメンバー経由で、道内でME/CFSを多く診ている医師を紹介してもらい、夫がME/CFSの診断を受けました。
夫の受診について行った際、私も一緒に受診することになり、同時にME/CFSと診断されました。急に崩れ落ちるように体調を崩すことは頻繁にありましたが、『夫のケアを頑張りすぎたかな?』くらいにしか感じていなかったのですね」
◆死を選ぶ直前まで追い詰められた
――中医学の知識をお持ちです。病名発覚、闘病生活にどのように活かしましたか。
「私はいわゆる『理系』ですが、社会人になってからは中医学に興味を持ち、自主的に勉強をしていました。
医学論文を読むことができ、中医学の知識があり、夫婦で助け合えたことは、この病気と闘う上で大きいと感じています。もし、知識や情報収集ができなかったら、医療資源が乏しい田舎に暮らしていることもあり、この病気に対して手も足も出なかったでしょう。
このように、私は後遺症患者の中でもかなり有利な立場にいましたが、それでも追いつめられて死を選ぶ寸前まで行きました。それくらい、ME/CFSはシビアな病気です」
◆漫画の反響にうれしくて涙
――漫画の読者のポジティブな反響についてお聞かせください。
「『後遺症についてよくわかった』『一人でも多くの人が読むべき』『感染対策を意識するようになった』などのコメントをたくさんいただいています。
また、同じME/CFSの患者さんが、私の投稿を拡散してくださったり、誹謗中傷に対して一緒に怒ってくださったりすることには、うれしくて涙が出ますね。
他の患者さんたちも、周囲の理解を得ることに苦労しているようで、この漫画を見せて、会社、家族、友人などに理解を求めるケースもあるようです」
<文/増田洋子>
【増田洋子】
2匹のデグー、2匹のラットと暮らすライター。デグーオンリーイベント「デグーサロン」を運営。愛玩動物飼養管理士2級を取得。Twitter:@degutoichacora
しかし、病気自体がなくなったわけではなく、後遺症に苦しむ人もたくさんいます。
えぞいちごさんとその夫もその当事者で、新型コロナウイルス感染による筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(略称ME/CFS)に苦しみ、体験談を漫画にX(旧:Twitter)に投稿しています。
そんな彼女に罹患の経緯から、新型コロナウイルスを取り巻く現在の状況について話を聞きました。
◆筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(略称ME/CFS)とは
――筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(略称ME/CFS)はどのような病気なのでしょうか。
「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(以下ME/CFS)は、WHOが神経系疾患に分類している神経難病です。
これまで健康に生活をしていた人が突然、原因不明の全身の倦怠感に襲われ、微熱、関節痛、筋肉痛、認知機能・記憶力の低下、頭痛、不眠、動悸、抑うつ症状など、他にもさまざまな症状が現れ、日常生活を送るのに支障をきたす病気です。
体を動かす、頭を使う、感情が激しく揺さぶられるなどの後に、PEM(クラッシュ)と呼ばれる病的な倦怠感症状が現れることも特徴です。新型コロナウイルスやSARSなど、感染症に罹患したことをきっかけには発症することが多いようですが、外傷、輸血、ワクチン接種、ストレスなども引き金になると考えられています。
現在、完治することは難しいと考えられ、PEM(クラッシュ)を起こさないように気を付けながら長期的に対症療法を続け、改善を図る以外に手立てはありません。なお、PEM(クラッシュ)が現れると動くことが困難になり、これを繰り返すと(人によっては一度でも)寝たきりになるケースもあります。同じ病気であっても、人によって現れる症状、程度、タイミングは異なります。
ME/CFSは、一般の方のみならず医療従事者にもあまり知られておらず、専門医も限られていることから、発覚しづらい病気です。また、この病気の特性上、遠方の病院を受診しづらいことも課題として挙げられます。
私は罹患前の8割程度まで回復しましたが、たまに人と会う場合は、予定に合わせて体調の整え、会った翌日はしっかり休みをなどのコントロール、いわゆるペーシングが必要です。
また感染症や後遺症への周囲の無理解、加えてコロナ再感染によるリスクが高いこともあり、罹患以前のように気軽に人と会うことを躊躇してしまいます。夫は、以前は、肉体的にきつい仕事をこなしていて、とても活動的な人でした。しかし、私よりも症状が重く、仕事を辞めざるを得なくなり、出かけることが難しくなってしまいました」(えぞいちごさん 以下カギカッコ内同じ)
◆突然動けなくなる
――病名が発覚するまでの過程を簡単にお聞かせください。
「宿泊したホテルで海外からの旅行客と接触後、夫と私に軽い風邪の症状が現れました。
そして、その後夫にさまざまな症状が現れ、突然動けなくなるということが繰り返し起こりました。多くの病院やクリニックに受診をし、検査を行いましたが、症状が重いわりに大きな異常は認められず、不思議に思っていました。
そこで夫は自身で病気について調べ始め、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(以下ME/CFS)の患者会と接触。そのメンバー経由で、道内でME/CFSを多く診ている医師を紹介してもらい、夫がME/CFSの診断を受けました。
夫の受診について行った際、私も一緒に受診することになり、同時にME/CFSと診断されました。急に崩れ落ちるように体調を崩すことは頻繁にありましたが、『夫のケアを頑張りすぎたかな?』くらいにしか感じていなかったのですね」
◆死を選ぶ直前まで追い詰められた
――中医学の知識をお持ちです。病名発覚、闘病生活にどのように活かしましたか。
「私はいわゆる『理系』ですが、社会人になってからは中医学に興味を持ち、自主的に勉強をしていました。
医学論文を読むことができ、中医学の知識があり、夫婦で助け合えたことは、この病気と闘う上で大きいと感じています。もし、知識や情報収集ができなかったら、医療資源が乏しい田舎に暮らしていることもあり、この病気に対して手も足も出なかったでしょう。
このように、私は後遺症患者の中でもかなり有利な立場にいましたが、それでも追いつめられて死を選ぶ寸前まで行きました。それくらい、ME/CFSはシビアな病気です」
◆漫画の反響にうれしくて涙
――漫画の読者のポジティブな反響についてお聞かせください。
「『後遺症についてよくわかった』『一人でも多くの人が読むべき』『感染対策を意識するようになった』などのコメントをたくさんいただいています。
また、同じME/CFSの患者さんが、私の投稿を拡散してくださったり、誹謗中傷に対して一緒に怒ってくださったりすることには、うれしくて涙が出ますね。
他の患者さんたちも、周囲の理解を得ることに苦労しているようで、この漫画を見せて、会社、家族、友人などに理解を求めるケースもあるようです」
<文/増田洋子>
【増田洋子】
2匹のデグー、2匹のラットと暮らすライター。デグーオンリーイベント「デグーサロン」を運営。愛玩動物飼養管理士2級を取得。Twitter:@degutoichacora