―連載「沼の話を聞いてみた」―
スピリチュアルコンテンツを通じて出会い、結婚――たびたびこんな出来事を耳にするが、価値観の近いパートナーとめぐり合うのは、喜ばしいことだろう。
昨今のニュースだと、ノルウェーのマッタ・ルイーセ王女が思い出される。
王女は「天使と話すことができる」などの特別なパワーがあることを公言しており、米国のスピリチュアルガイドのデュレク・ベレット氏の顧客となったことをきっかけに交際へと発展し、今年8月に結婚したのだ。
デュレク氏もまた、「2001年の米同時多発テロを事前に予知した」などの特殊能力を自称する、シャーマンである。
◆前世でも結ばれていた
ふたりの出会いが「前世」だと主張されている点も興味深い。デュレク氏の前世は古代エジプトのファラオで、ルイーゼ王女は当時の王妃だったそうな。
日本でも「前世は卑弥呼」などの主張はびっくりするほどたくさん転がっており、スピリチュアル界でよく聞く話ではある(卑弥呼は一体何回転生した設定になっているのか?)。
そして、ルイーセ王女のInstagramによると、そうした縁のあるふたりは「魂で繋がったパートナー(ツインフレーム)」なんだとか。
荒唐無稽に聞こえるが、ふたりの絆の物語であり、共感できる人が楽しめばいい類の話だろう(全世界に発信すれば、そりゃある程度ツッコまれることは必須だが)。
しかしこうした世界観は、一方的なものであると当然トラブルになる。今回は「ツインレイ」という考えにハマった女性に夫婦で振り回された、佐倉亜紀さん(仮名)の体験談である。
◆「ツインレイ」=運命の相手
亜紀さんは、2人の小学生を育てる30代の専業主婦。カジュアルな雰囲気のバーを経営する夫と、4人で暮らしている。亜紀さんが夫の店を手伝うこともあり、店の常連客とも顔なじみだった。泥酔するようなタイプの客は少なく、健全で和やかな空間として、多くの客に愛されていた。
ところが、あるときから状況が一転した。常連客のひとりである女性・ヒナさん(仮名)が、亜紀さんの夫を、自分の「ツインレイ」であると主張しはじめたのだ。
ツインレイとは、スピリチュアルコンテンツでは「魂の片割れ」と説明されている。「Ray」はそのまんま訳すと「光線」。一つの光=魂だったものが二つにに分かれて生まれてきた、という感じのものらしい。要は「この世でひとりの、運命の相手」だろう。
少女漫画の金字塔『ガラスの仮面』で、社会的立場も年齢差もカップルとしてはかなり無理のある、主人公のマヤと真澄が、幾多の困難にぶつかってもなお「魂の片割れ……!」と惹かれ合う展開があるが、あれもツインレイだと説明できそうだ。
冒頭のルイーセ女王のInstagramで登場した「ツインフレーム」は、この世に数人いる魂のパートナーなんだとか。対してツインレイはたったひとりの相手であると、説明しているWEBサイトを多々見かける。つまり、後者のほうが覚悟がキマってる印象である。
また、「ツインレイは体の相性が抜群」だの、「ツインレイと出会うと、前兆として生理不順になる」だのという解説も多く、ネットで検索すればするほど不思議な森へ迷い込んでいく感覚があった。
◆妄想が加速していく
「ヒナさんと交流のある、ほかの常連客が私に教えてくれたことから発覚しました。彼女はSNSで店の名前を出しながら、自身の主観を発信していました。ハッシュタグは、#ツインレイです」
亜紀さんから送られてきたヒナさんの投稿スクショは、こんな感じのことが書かれていた。ここに登場する「彼」とは当然、亜紀さんの夫である。
〈今日のお通しは、私の大好きなバルサミコ味。これは、彼が私に送ってくれるサイン〉
〈彼はまだ覚醒していない。でも、私とのつながりを感じはじめているはず。同じ音楽が好き、映画が好き。猫が好き。シンパシー!〉
〈彼は既婚者だけど、これはツインレイの試練として定番なんだよね〉
〈彼の視線を感じた瞬間、時計を見たら11時1分……エンジェルナンバーだ〉
投稿の内容を説明しながら、亜紀さんはため息をつく。
「一体、なんの妄想でしょう。夫婦で彼女のアカウントを見ながら、意味がわからない……と、顔を見合わせました」
◆相手は既婚者なのに
忍ぶ恋も人生の味わいだろうが、相手が特定される形でネットで発信されるのは普通に困る。
亜紀さんより少し年上のヒナさんは、物静かな印象の女性だった。服装はジーンズにニットと、ごくシンプル。愛用のブレスレットは、控えめなサイズのパワーストーン。お酒が入ってもニコニコと、連れだって来ていた友人の話を聞いているような感じだった。
だから、意外すぎる情熱的な一面に驚いた。一般にSNS上でキャラが豹変する人はめずらしくないが、ヒナさんは次第に行動も豹変していった。
「SNSで語っていたようなツインレイの話を、店のカウンターでも積極的にするようになりました。夫に対し、『あなたはまだ覚醒していないだけ、私にはわかる!』『みんなはツインレイに出会っていないから、この感覚が理解できないんだ!』『彼の家族? ツインレイに試練はつきもの!』と。
妻である私のいる場でも挑戦的な態度をとってくるので、すっかり怖くなってしまいました」
恐怖を覚えたのは亜紀さんだけでなく、常連客もだった。オーナーの家族に失礼だろうととがめられ、その場は黙っても、またすぐにツインレイ語りがはじまる。微妙な空気がたびたび流れ、足が遠のく常連客も少なくなかった。
「お客様との距離を適切に保つのは接客業の基本ですから、常に気をつけていたポイントで、私の目からは夫に隙はなかったと思います。でもこうも情熱的に暴走されると、『期待させるようなことしたんじゃないのー?』みたいな、ゲスい勘ぐりも発生して……。
ネットへの書き込みもありましたし、そのうち子どもたちの耳にも入るんじゃないかと、夫婦で心労が積もっていきました」
何か対策はないかとInstagramやFacebookでヒナさんのアカウントを観察していると、ヒナさんはスピリチュアルセッションでツインレイを知った経緯がわかった。
◆警察にストーカー行為を相談
定期的にヒーラーのセッションを受け、何かあるたびに、アドバイスをもらっている様子だった。そこで、亜紀さんの夫に片思いをしていたことから、「彼はあなたのツインレイなのでは」とけしかけられたようだ。
しかし暴走のスイッチが判明しても、何の解決にもならない。
「次第に夫へのボディタッチも増え、帰宅中待ち伏せされたこともありました。夫がどんな拒絶の言葉を伝えても、そのときが来ればわかる、と暖簾に腕押しです」
恋愛モードになると暴走するタイプの人は一定数いるが、後ろにけしかける人物(=スピリチュアルヒーラー)がいるのがやっかいである。
「客商売のツラさですね。店に出ないわけにはいかないし、あからさまに邪険にもできない。ストーカーのような行為もあったので警察にも相談しましたが、決定的な被害がないとむずかしいんですよね。
意味のわからないトークを延々とするので、ほかの常連女性も、同席は遠慮したいと遠ざかってしまいました。お客様との距離が近い接客業では起こりうるリスクなのでしょうけど、困り果てました」
◆世界ではカルト的な集団も
亜紀さんのケースだけでなく、「ツインレイ」周辺には、トラブルが多い。アイドルにガチ恋して、ツインレイという概念によって妄想が深まってしまうケースも耳にする。
もちろん、ツインレイを信じるすべての人がそうだとは言わないが、巷には「ツインレイ詐偽」「ツインレイ商法」なるものまであるという。
恋愛成就をエサに希望をもたされ、占い師などにお金をつぎ込む単純な商法である。ロマンス詐欺に、近い感じもある。
海外ではそれが大規模なオンラインサロンになっているケースもあり、その実態を追ったAmazonオリジナルの海外ドキュメンタリー『ソウルメイトを求めて~SNSに潜むカルト~』(Netflixでは、『ツインフレームを逃れて』として配信されている)という作品もある。
コロナ禍の孤独感を商機とし、純粋に運命のパートナーを求めて入会したであろう人たちを、会員同士で「あの人がツインフレーム」とけしかけ強引にマッチングさせる。そこには、マインドコントロールや不安商法といったしくみも介在している。
しかしそんなマッチングはうまくいくはずもない。結局、苦しみながらもサロンから抜けられず、金も労働力も搾取されていくという構造が発生していた。
ドキュメンタリーが追った内容では、さらにショッキングで非人道的な行為まで行われていたが、ここはネタバレになってしまうので、興味のある方はぜひ見ていただきたい。
こうしたいろいろなケースを見ていると、暴走する本人の問題以前に、やはり沼をけしかける存在が圧倒的に問題だと思わされる。
古今東西、恋愛問題は多くの人が関わる身近なテーマでありながら、手軽な解決法は存在しない。それゆえ商売の格好のネタとなり、よきアドバイザーとなればリピーター獲得につながるだろう。だが、依存させて妄想にハマらせる、こうした悪質なものが数多く存在している。
◆誰も幸せにならない
亜紀さん夫婦が巻き込まれたこのケースは、お相手としては幸せを求めて信じたのに、自分も相手もその家族も、誰も幸せにならない不幸な沼である。
不確かなものを信じる勇気はときに素晴らしい力を発揮するだろうが、自分のふるまいを顧みる余裕は必須である。
その後、亜紀さん夫婦から解決の報告は、まだ来ていない。
<取材・文/山田ノジル>
【山田ノジル】
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru
スピリチュアルコンテンツを通じて出会い、結婚――たびたびこんな出来事を耳にするが、価値観の近いパートナーとめぐり合うのは、喜ばしいことだろう。
昨今のニュースだと、ノルウェーのマッタ・ルイーセ王女が思い出される。
王女は「天使と話すことができる」などの特別なパワーがあることを公言しており、米国のスピリチュアルガイドのデュレク・ベレット氏の顧客となったことをきっかけに交際へと発展し、今年8月に結婚したのだ。
デュレク氏もまた、「2001年の米同時多発テロを事前に予知した」などの特殊能力を自称する、シャーマンである。
◆前世でも結ばれていた
ふたりの出会いが「前世」だと主張されている点も興味深い。デュレク氏の前世は古代エジプトのファラオで、ルイーゼ王女は当時の王妃だったそうな。
日本でも「前世は卑弥呼」などの主張はびっくりするほどたくさん転がっており、スピリチュアル界でよく聞く話ではある(卑弥呼は一体何回転生した設定になっているのか?)。
そして、ルイーセ王女のInstagramによると、そうした縁のあるふたりは「魂で繋がったパートナー(ツインフレーム)」なんだとか。
荒唐無稽に聞こえるが、ふたりの絆の物語であり、共感できる人が楽しめばいい類の話だろう(全世界に発信すれば、そりゃある程度ツッコまれることは必須だが)。
しかしこうした世界観は、一方的なものであると当然トラブルになる。今回は「ツインレイ」という考えにハマった女性に夫婦で振り回された、佐倉亜紀さん(仮名)の体験談である。
◆「ツインレイ」=運命の相手
亜紀さんは、2人の小学生を育てる30代の専業主婦。カジュアルな雰囲気のバーを経営する夫と、4人で暮らしている。亜紀さんが夫の店を手伝うこともあり、店の常連客とも顔なじみだった。泥酔するようなタイプの客は少なく、健全で和やかな空間として、多くの客に愛されていた。
ところが、あるときから状況が一転した。常連客のひとりである女性・ヒナさん(仮名)が、亜紀さんの夫を、自分の「ツインレイ」であると主張しはじめたのだ。
ツインレイとは、スピリチュアルコンテンツでは「魂の片割れ」と説明されている。「Ray」はそのまんま訳すと「光線」。一つの光=魂だったものが二つにに分かれて生まれてきた、という感じのものらしい。要は「この世でひとりの、運命の相手」だろう。
少女漫画の金字塔『ガラスの仮面』で、社会的立場も年齢差もカップルとしてはかなり無理のある、主人公のマヤと真澄が、幾多の困難にぶつかってもなお「魂の片割れ……!」と惹かれ合う展開があるが、あれもツインレイだと説明できそうだ。
冒頭のルイーセ女王のInstagramで登場した「ツインフレーム」は、この世に数人いる魂のパートナーなんだとか。対してツインレイはたったひとりの相手であると、説明しているWEBサイトを多々見かける。つまり、後者のほうが覚悟がキマってる印象である。
また、「ツインレイは体の相性が抜群」だの、「ツインレイと出会うと、前兆として生理不順になる」だのという解説も多く、ネットで検索すればするほど不思議な森へ迷い込んでいく感覚があった。
◆妄想が加速していく
「ヒナさんと交流のある、ほかの常連客が私に教えてくれたことから発覚しました。彼女はSNSで店の名前を出しながら、自身の主観を発信していました。ハッシュタグは、#ツインレイです」
亜紀さんから送られてきたヒナさんの投稿スクショは、こんな感じのことが書かれていた。ここに登場する「彼」とは当然、亜紀さんの夫である。
〈今日のお通しは、私の大好きなバルサミコ味。これは、彼が私に送ってくれるサイン〉
〈彼はまだ覚醒していない。でも、私とのつながりを感じはじめているはず。同じ音楽が好き、映画が好き。猫が好き。シンパシー!〉
〈彼は既婚者だけど、これはツインレイの試練として定番なんだよね〉
〈彼の視線を感じた瞬間、時計を見たら11時1分……エンジェルナンバーだ〉
投稿の内容を説明しながら、亜紀さんはため息をつく。
「一体、なんの妄想でしょう。夫婦で彼女のアカウントを見ながら、意味がわからない……と、顔を見合わせました」
◆相手は既婚者なのに
忍ぶ恋も人生の味わいだろうが、相手が特定される形でネットで発信されるのは普通に困る。
亜紀さんより少し年上のヒナさんは、物静かな印象の女性だった。服装はジーンズにニットと、ごくシンプル。愛用のブレスレットは、控えめなサイズのパワーストーン。お酒が入ってもニコニコと、連れだって来ていた友人の話を聞いているような感じだった。
だから、意外すぎる情熱的な一面に驚いた。一般にSNS上でキャラが豹変する人はめずらしくないが、ヒナさんは次第に行動も豹変していった。
「SNSで語っていたようなツインレイの話を、店のカウンターでも積極的にするようになりました。夫に対し、『あなたはまだ覚醒していないだけ、私にはわかる!』『みんなはツインレイに出会っていないから、この感覚が理解できないんだ!』『彼の家族? ツインレイに試練はつきもの!』と。
妻である私のいる場でも挑戦的な態度をとってくるので、すっかり怖くなってしまいました」
恐怖を覚えたのは亜紀さんだけでなく、常連客もだった。オーナーの家族に失礼だろうととがめられ、その場は黙っても、またすぐにツインレイ語りがはじまる。微妙な空気がたびたび流れ、足が遠のく常連客も少なくなかった。
「お客様との距離を適切に保つのは接客業の基本ですから、常に気をつけていたポイントで、私の目からは夫に隙はなかったと思います。でもこうも情熱的に暴走されると、『期待させるようなことしたんじゃないのー?』みたいな、ゲスい勘ぐりも発生して……。
ネットへの書き込みもありましたし、そのうち子どもたちの耳にも入るんじゃないかと、夫婦で心労が積もっていきました」
何か対策はないかとInstagramやFacebookでヒナさんのアカウントを観察していると、ヒナさんはスピリチュアルセッションでツインレイを知った経緯がわかった。
◆警察にストーカー行為を相談
定期的にヒーラーのセッションを受け、何かあるたびに、アドバイスをもらっている様子だった。そこで、亜紀さんの夫に片思いをしていたことから、「彼はあなたのツインレイなのでは」とけしかけられたようだ。
しかし暴走のスイッチが判明しても、何の解決にもならない。
「次第に夫へのボディタッチも増え、帰宅中待ち伏せされたこともありました。夫がどんな拒絶の言葉を伝えても、そのときが来ればわかる、と暖簾に腕押しです」
恋愛モードになると暴走するタイプの人は一定数いるが、後ろにけしかける人物(=スピリチュアルヒーラー)がいるのがやっかいである。
「客商売のツラさですね。店に出ないわけにはいかないし、あからさまに邪険にもできない。ストーカーのような行為もあったので警察にも相談しましたが、決定的な被害がないとむずかしいんですよね。
意味のわからないトークを延々とするので、ほかの常連女性も、同席は遠慮したいと遠ざかってしまいました。お客様との距離が近い接客業では起こりうるリスクなのでしょうけど、困り果てました」
◆世界ではカルト的な集団も
亜紀さんのケースだけでなく、「ツインレイ」周辺には、トラブルが多い。アイドルにガチ恋して、ツインレイという概念によって妄想が深まってしまうケースも耳にする。
もちろん、ツインレイを信じるすべての人がそうだとは言わないが、巷には「ツインレイ詐偽」「ツインレイ商法」なるものまであるという。
恋愛成就をエサに希望をもたされ、占い師などにお金をつぎ込む単純な商法である。ロマンス詐欺に、近い感じもある。
海外ではそれが大規模なオンラインサロンになっているケースもあり、その実態を追ったAmazonオリジナルの海外ドキュメンタリー『ソウルメイトを求めて~SNSに潜むカルト~』(Netflixでは、『ツインフレームを逃れて』として配信されている)という作品もある。
コロナ禍の孤独感を商機とし、純粋に運命のパートナーを求めて入会したであろう人たちを、会員同士で「あの人がツインフレーム」とけしかけ強引にマッチングさせる。そこには、マインドコントロールや不安商法といったしくみも介在している。
しかしそんなマッチングはうまくいくはずもない。結局、苦しみながらもサロンから抜けられず、金も労働力も搾取されていくという構造が発生していた。
ドキュメンタリーが追った内容では、さらにショッキングで非人道的な行為まで行われていたが、ここはネタバレになってしまうので、興味のある方はぜひ見ていただきたい。
こうしたいろいろなケースを見ていると、暴走する本人の問題以前に、やはり沼をけしかける存在が圧倒的に問題だと思わされる。
古今東西、恋愛問題は多くの人が関わる身近なテーマでありながら、手軽な解決法は存在しない。それゆえ商売の格好のネタとなり、よきアドバイザーとなればリピーター獲得につながるだろう。だが、依存させて妄想にハマらせる、こうした悪質なものが数多く存在している。
◆誰も幸せにならない
亜紀さん夫婦が巻き込まれたこのケースは、お相手としては幸せを求めて信じたのに、自分も相手もその家族も、誰も幸せにならない不幸な沼である。
不確かなものを信じる勇気はときに素晴らしい力を発揮するだろうが、自分のふるまいを顧みる余裕は必須である。
その後、亜紀さん夫婦から解決の報告は、まだ来ていない。
<取材・文/山田ノジル>
【山田ノジル】
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru