タコ、おいしいですよね。たこ焼きは言わずもがな、揚げたり、タコ飯にしたり、酢の物にしたり、活用法も意外に幅広いし。でも、この活用法は盲点でした。なんと、本物のタコを型取りしてアクセサリーを作っている女性がいるのです。
パッと見ではわかりにくいですが……まぎれもなくタコの足!
このネックレスを作ったのは、アクセサリー作家のタコナクションさん(@takonaction_)。名前からして“タコ愛”がだだ漏れですが、なぜタコをアクセサリーにしようと考えたのか、ご本人に聞いてみました。
◆なぜ、タコの虜になったのか?
――なにをきっかけに、タコに惹かれたのですか?
タコナクション:ある日、晩御飯をつくっているときでした。いただきもののタコがあって、茹でる前にじっくり観察してみたんです。もともと、私は生き物が好きで大学でも生物学を専攻していたのもあって。一旦、タコという概念を捨てて、その造形美に注目してみると「型取りしたい」「これで作品を作りたい」と思い始めて(笑)。だから、タコという生き物より形として興味を持ったのが最初でした。特に、やっぱり吸盤が好きで。だから、吸盤だけのアクセサリーは今までにいっぱい作りました。
先日も「三忠」(東京都文京区)さんというタコ料理専門のお店に行って、「私はタコを型取りして作品を作っている作家です」とお話しし、ミズダコの腕1本分の吸盤をいただきました。
――ちょっ、タコナクションさんの首がタコに巻かれているんですか? マフラーかと思いましたよ!
◆タコのアクセサリー作りは時間との勝負!
――タコアクセサリーの作り方を教えてください。
タコナクション:可能であれば生きているタコを市場などで仕入れ、生きている状態を観察します。そして、しめて塩もみをして茹でる。その後、表面がぬめぬめしてるので少し乾燥させる。そこからシリコンで型を取ります。
タコナクション:鯛焼きの型を作るイメージです。片面ずつ型を取り、この中に樹脂を流して原型を作ります。最後に、それを鋳造(金属を溶かし固める加工法)するという感じです。
――型取りした後、そのタコは食べるんですか?
タコナクション:食べられないんです……。いろいろ薬品がついているのと、シリコンで型を取るのに半日ぐらいかかるので夏場だと傷んでしまうんですね。で、時間を置けば置くほどタコの原型も崩れてしまいます。タコのアクセサリー作りは時間との勝負でもあるんです。
――ちょっと気になったのですが、競馬が好きな人は馬肉を食べられないって言うじゃないですか。タコナクションさんはタコを食べるのは問題ないですか?
タコナクション:食べます(笑)。
◆「これ、タコだよ」「え、それタコなの!?」で初めて完成
――タコナクションさんが作るアクセサリーは、“タコ好き”の人たちにウケているのでしょうか? それとも、個性的なアクセサリーを求める人が購入している?
タコナクション:両方ですね。タコという生き物そのものが好きな人は、見るからにタコとわかるアクセサリーを購入されます。一方、「身につけたいけどあんまり主張が激しいのはなあ」という人もいて、そういう方たちはパッと見ではタコとわからないアクセサリーを選ばれます。
私のコンセプトでもあるのですが、「日常に擬態する」アクセサリーを今までたくさん作ってきました。「これ、タコなんだよ」と友だちに教えたら「え、そうなの!?」と驚かれ、そこで初めて完成する作品。例えば、タコの足の先っぽを真珠で挟んだ指輪は「日常に擬態する」アクセサリーです。
――まじまじ見たことがないのでわからないのですが、タコの足の先っぽなんでしょうね……。
タコナクション:海外の一部の地域でタコは「デビルフィッシュ」と呼ばれており、「怖い」「気持ち悪い」と悪魔的なイメージを抱かれる側面があります。だから、タコのアクセサリーを見つけたとしても、黒っぽくてゴツゴツした男性寄りのものが多かったんですね。自分が身につけたいものがなかったのも、アクセサリー作りを始めた一つのきっかけです。ファッションは綺麗目だけれど、こだわりが強く、人と被らないようなものが好き。そんな人につけてもらいたいと思って制作しています。
◆結婚式につけて行くのは「むしろバッチリ」
――たしかに、タコナクションさんが作るアクセサリーは上品ですよね。ちなみに、今までで一番人気があったものはどれですか?
タコナクション:私がタコのアクセサリー作りを始めて最初に作ったものです。
――でか……!
タコナクション:2021年に作ったもので、私のアイコン的な存在です。これは主張が激しいタコタコしいやつです(笑)。イヤリングとピアスの2タイプがあって、これまでに200本以上作ってきました。
――こういったタコのアクセサリーを購入された人たちからは、どんな反響が寄せられていますか?
タコナクション:以前、「結婚式につけて行ってもいいですか?」と質問されたことがあります。タコって「多幸」と書いて縁起物でもあるんです。なので、「むしろバッチリですよ!」とお伝えしました(笑)。実際、結婚式につけていった方や、ウェディングフォトを撮影した方もいらっしゃるみたいです。日常に擬態するデザインだからこそですね。
◆これから、どんなタコのアクセサリーを作りたい?
――「今後、こんな作品を作ってみたい」というアイデアはありますか?
タコナクション:ちっちゃめの「イイダコ」というタコがあるのですが、あれを丸ごと型取りしたいと思っていて。ペーパーウェイトでもいいし……。でも、型取りした後に発想が湧くことって実は多いんです。だから、未定です(笑)。
――「三忠」さんのタコの足を首に巻いて、マフラーみたいにしていたじゃないですか。ああいうマフラーを作ろうとは思わないですか?
タコナクション:作ってみたいですよねえ。でも、作るとたぶん何万円にもなっちゃう(笑)。
――あんなマフラーがあったら、私は買います(笑)。
タコナクション:マフラーは難しいですが、あのときのタコを型取りした吸盤を4つつなげたネックレスは10月に完成予定で、10月26~27日に京都で出展するイベント「いきもにあ」でお披露目します。
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タコを「形」「造形美」という視点から語るタコナクションさんのタコ論が、めちゃくちゃ新鮮でした。タコナクションさんが作るアクセサリーには「固定概念は捨て去り、広い視野を持って世界を広く見よう」というメッセージが込められています。
たった1つの視点しか持たない人生より、8つの視点を持って生きたほうが人生は楽しいかもしれません。タコだけに……!
<取材・文/寺西ジャジューカ>
パッと見ではわかりにくいですが……まぎれもなくタコの足!
このネックレスを作ったのは、アクセサリー作家のタコナクションさん(@takonaction_)。名前からして“タコ愛”がだだ漏れですが、なぜタコをアクセサリーにしようと考えたのか、ご本人に聞いてみました。
◆なぜ、タコの虜になったのか?
――なにをきっかけに、タコに惹かれたのですか?
タコナクション:ある日、晩御飯をつくっているときでした。いただきもののタコがあって、茹でる前にじっくり観察してみたんです。もともと、私は生き物が好きで大学でも生物学を専攻していたのもあって。一旦、タコという概念を捨てて、その造形美に注目してみると「型取りしたい」「これで作品を作りたい」と思い始めて(笑)。だから、タコという生き物より形として興味を持ったのが最初でした。特に、やっぱり吸盤が好きで。だから、吸盤だけのアクセサリーは今までにいっぱい作りました。
先日も「三忠」(東京都文京区)さんというタコ料理専門のお店に行って、「私はタコを型取りして作品を作っている作家です」とお話しし、ミズダコの腕1本分の吸盤をいただきました。
――ちょっ、タコナクションさんの首がタコに巻かれているんですか? マフラーかと思いましたよ!
◆タコのアクセサリー作りは時間との勝負!
――タコアクセサリーの作り方を教えてください。
タコナクション:可能であれば生きているタコを市場などで仕入れ、生きている状態を観察します。そして、しめて塩もみをして茹でる。その後、表面がぬめぬめしてるので少し乾燥させる。そこからシリコンで型を取ります。
タコナクション:鯛焼きの型を作るイメージです。片面ずつ型を取り、この中に樹脂を流して原型を作ります。最後に、それを鋳造(金属を溶かし固める加工法)するという感じです。
――型取りした後、そのタコは食べるんですか?
タコナクション:食べられないんです……。いろいろ薬品がついているのと、シリコンで型を取るのに半日ぐらいかかるので夏場だと傷んでしまうんですね。で、時間を置けば置くほどタコの原型も崩れてしまいます。タコのアクセサリー作りは時間との勝負でもあるんです。
――ちょっと気になったのですが、競馬が好きな人は馬肉を食べられないって言うじゃないですか。タコナクションさんはタコを食べるのは問題ないですか?
タコナクション:食べます(笑)。
◆「これ、タコだよ」「え、それタコなの!?」で初めて完成
――タコナクションさんが作るアクセサリーは、“タコ好き”の人たちにウケているのでしょうか? それとも、個性的なアクセサリーを求める人が購入している?
タコナクション:両方ですね。タコという生き物そのものが好きな人は、見るからにタコとわかるアクセサリーを購入されます。一方、「身につけたいけどあんまり主張が激しいのはなあ」という人もいて、そういう方たちはパッと見ではタコとわからないアクセサリーを選ばれます。
私のコンセプトでもあるのですが、「日常に擬態する」アクセサリーを今までたくさん作ってきました。「これ、タコなんだよ」と友だちに教えたら「え、そうなの!?」と驚かれ、そこで初めて完成する作品。例えば、タコの足の先っぽを真珠で挟んだ指輪は「日常に擬態する」アクセサリーです。
――まじまじ見たことがないのでわからないのですが、タコの足の先っぽなんでしょうね……。
タコナクション:海外の一部の地域でタコは「デビルフィッシュ」と呼ばれており、「怖い」「気持ち悪い」と悪魔的なイメージを抱かれる側面があります。だから、タコのアクセサリーを見つけたとしても、黒っぽくてゴツゴツした男性寄りのものが多かったんですね。自分が身につけたいものがなかったのも、アクセサリー作りを始めた一つのきっかけです。ファッションは綺麗目だけれど、こだわりが強く、人と被らないようなものが好き。そんな人につけてもらいたいと思って制作しています。
◆結婚式につけて行くのは「むしろバッチリ」
――たしかに、タコナクションさんが作るアクセサリーは上品ですよね。ちなみに、今までで一番人気があったものはどれですか?
タコナクション:私がタコのアクセサリー作りを始めて最初に作ったものです。
――でか……!
タコナクション:2021年に作ったもので、私のアイコン的な存在です。これは主張が激しいタコタコしいやつです(笑)。イヤリングとピアスの2タイプがあって、これまでに200本以上作ってきました。
――こういったタコのアクセサリーを購入された人たちからは、どんな反響が寄せられていますか?
タコナクション:以前、「結婚式につけて行ってもいいですか?」と質問されたことがあります。タコって「多幸」と書いて縁起物でもあるんです。なので、「むしろバッチリですよ!」とお伝えしました(笑)。実際、結婚式につけていった方や、ウェディングフォトを撮影した方もいらっしゃるみたいです。日常に擬態するデザインだからこそですね。
◆これから、どんなタコのアクセサリーを作りたい?
――「今後、こんな作品を作ってみたい」というアイデアはありますか?
タコナクション:ちっちゃめの「イイダコ」というタコがあるのですが、あれを丸ごと型取りしたいと思っていて。ペーパーウェイトでもいいし……。でも、型取りした後に発想が湧くことって実は多いんです。だから、未定です(笑)。
――「三忠」さんのタコの足を首に巻いて、マフラーみたいにしていたじゃないですか。ああいうマフラーを作ろうとは思わないですか?
タコナクション:作ってみたいですよねえ。でも、作るとたぶん何万円にもなっちゃう(笑)。
――あんなマフラーがあったら、私は買います(笑)。
タコナクション:マフラーは難しいですが、あのときのタコを型取りした吸盤を4つつなげたネックレスは10月に完成予定で、10月26~27日に京都で出展するイベント「いきもにあ」でお披露目します。
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タコを「形」「造形美」という視点から語るタコナクションさんのタコ論が、めちゃくちゃ新鮮でした。タコナクションさんが作るアクセサリーには「固定概念は捨て去り、広い視野を持って世界を広く見よう」というメッセージが込められています。
たった1つの視点しか持たない人生より、8つの視点を持って生きたほうが人生は楽しいかもしれません。タコだけに……!
<取材・文/寺西ジャジューカ>