ベテランのお笑い芸人、ウッチャンナンチャンの内村光良が相変わらず人気だ。内村はMCとして現在でも『世界の果てまでイッテQ!』『THE突破ファイル』(ともに日本テレビ系)などの番組で司会を担当。スペシャル番組のMCを務めることもあり、ダウンタウンと同等の人気をほこっている。
コンビとしての活動はほとんどないが、内村一人で出演する『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK総合)ではコントも披露。事務所関係なく、後輩たちを引っ張り続けるリーダーとしての役目も果たし、唯一無二の芸人として尊敬を集めている。
◆16年ぶりの復活をとげた『内P』
そんな内村だが、ベテランながらここ最近の活躍が凄まじい。まず9月28日に『祝!内村光良還暦祭り 内村プロデュース復活SP!!』(テレビ朝日系)を放送。同局で2000年4月から2005年9月まで放送された『内村プロデュース』の特別番組で、内村の還暦に合わせて16年ぶりの復活をとげた。
出演者は、過去に番組に出演して経験を持つ「出てた芸人」として、さまぁ~ず、ふかわりょう、有吉弘行、土田晃之、出川哲朗、TIM、くりぃむしちゅー・有田哲平、おぎやはぎ、アンタッチャブル、バナナマンが登場。年末のスペシャル番組を作れるくらいの豪華メンバーとなった。
さらに、中堅芸人を中心に「見てた芸人」として、パンサー、狩野英孝、ハライチ・澤部佑、モグライダー、ニューヨーク、マヂカルラブリー・野田クリスタル、さらば青春の光、ヒコロヒー、見取り図が参加。人気芸人が総出演する形で内村の還暦を祝った。
◆有吉やバナナマンも全力で企画に挑戦
豪華布陣で制作された『内村プロデュース復活SP!!』だが、ベテランの「出てた芸人」たちが、全く手を抜いておらず素晴らしい働きをした印象だ。有吉や有田、バナナマンなどは各局で自身の番組を持つ超売れっ子で、正直言えば今回の特番には似つかわしくない芸人だ。
だが、忙しいスケジュールの中で番組参加しただけでなく、きっちりと全力で企画に挑戦。こんな豪華で面白い番組になったのも、内村の人徳があるからだろう。
現に有吉は番組の公式Xが公開した収録後の動画で、「満足しました、充実感ありましたね…年1でやりたいですね」とコメント。感動して泣きそうだったことを明かし「僕の青春の1ページに新しいページができたなと思います」と話した。
有吉といえば、猿岩石でブレイクした後の低迷期に、『内村プロデュース』へ出演し傍若無人な猫メークの猫男爵として活躍した。それだけに売れた後の番組参加や、内村との掛け合いに感慨深いものがあったのだろう。とうぜん、今回の『内村プロデュース復活SP!!』でも手を抜かず、大喜利や猫男爵の復活など体をはった企画で大暴れした。
また、バナナマンも同じく売れていなかった頃に番組に出演していたコンビで、今回の収録でも活躍。他にもベテランたちが手を抜かず、内村の還暦祝いを盛り上げるために笑いを生み出した形だ。
もちろん、ベテランに負けず中堅の「見てた芸人」も奮闘。内村が自ら企画に参戦する場面もあり、大盛りあがりのまま番組は終了した。
◆内村が見せたバランス感覚と愛
『内村プロデュース』に感じたのは、場の雰囲気のやわらかさだ。
なあなあでやっているわけではないが、緊張感を保ちながら各芸人がノビノビと芸を披露。若手もベテランも関係なく笑いを作り出すことができ、内村がスベリやミスもしっかりと笑いに変えてくれるので安心してボケを披露できる。
今回もレギュラー放送時と同じく、ふかわりょうが大喜利企画で珍回答をしても内村がやさしくフォロー。また、「引き出し王」で出川哲朗が無茶なリアクションで危険な笑いを披露した際、さらに「笑わせ王」でトランポリンを利用した危険な笑いを芸人がやりだした際は、抜群のタイミングで切り上げ笑いに変えた。
内村が確かなバランス感覚で場を仕切っていることで、芸人たちは追い込まれながら何かしらのネタを披露する勇気をもらえる。ミスをしたりスベっても救いの手を差し伸べ、全てを笑いに変えるテクニックを内村は持っているのだ。
◆笑いを何倍にも増やせる配慮やテクニック
また、芸人たちの笑いを何倍にも増やすフォローもうまい。
さらば青春の光・森田宅で「内P家庭訪問」を行った際は、芸人たちの暴走をうまくコントロールして次々とボケを生み出させた。
さらに有吉扮する猫男爵の登場シーンでは、うまく有吉を誘導しながら部屋で大暴れする動線を演出。最終的には場が荒れて収集がつかなくなったのだが、内村が機転を利かせて締めのコメントを行ってきれいに企画を終了させた。こういった配慮やテクニックがあるから、芸人たちはストレスなく楽しい収録を終えることが可能になるのだ。
これは、レギュラー放送していた時の『内村プロデュース』と同じく、特有の雰囲気は内村が作り出しているものである。今回の『内村プロデュース復活SP!!』でも、芸人たちは無茶振りの企画に対してさまざまなギャグやリアクションを披露したが、心底楽しそうに企画に挑んでいる様子が見られた。
◆内村にしか作り出せない『LIFE!』の柔らかい雰囲気
そして、内村のライフワークにもなっている『LIFE!~人生に捧げるコント~』は、12周年を迎えたことを記念して、9月16日、23日に特番『LIFE!12周年SP』を放送。
コント番組が激減している中で、『LIFE!12周年SP』では今田美桜の人生初コント挑戦や7年ぶりとなる星野源の出演、さらに川口春奈も参加するなど豪華なメンバーで制作され、SNSでも大きな話題を生み出した。
この『LIFE!シリーズ』の魅力は、なんといっても新しいコントの形を生み出しながら、ほっこりできる柔らかい雰囲気を醸し出しているところ。その中心にいるのはもちろん内村だ。
内村は、番組の主宰でありながら脇役に徹することが多い。今回の『LIFE!12周年SP』でも、今田や川口、星野が目立つ構成となった。もちろん、各コントで内村は活躍するが、自分が目立つことより他の出演者が光る潤滑油となるキャラに徹する。
そういった細かい心遣いがあるから、ゲストも緊張なくコントに参加でき良い作品が生み出され、またゲストだけでなくココリコ・田中直樹、ドランクドラゴン・塚地武雅といったレギュラー陣も輝き続けるのだろう。
◆現場に参加し、共演者に仲間としてフラットに接する内村だけの魅力
60歳を迎えた売れっ子ベテラン芸人ならば、MCとしてスタジオでの仕事だけを行うのが普通だ。しかし、内村はプレイヤーとしてコントやロケに参加し、他の芸人と切磋琢磨することを望む。そして現場で安心感を共演者に与え、笑いを作ることに貢献する。こういった姿勢は他のベテラン芸人にない、内村だけの魅力だといえる。
内村は、コントでも番組作りでも強者としての姿勢を見せず、一緒に笑いを作り出す仲間としてベテランも若手も関係なくフラットに接する。
こういった芸人としての姿勢は、いまにはじまったわけではないが、令和の時代により世の中にフィットするようになったのではないだろうか? だからこそ、今回の2つの特番だけでなく他のレギュラー番組も長く続いて幅広い世代から人気を集めているのだろう。
ちなみに、内村は2017年から行っているコントライブの最新版『内村文化祭 ’24 還暦』を2024年10月~11月にかけて開催する。このイベントにはラランドらが参加するが、さらに『内村後夜祭~ネタフェス~』として、11月4日に行う予定のイベントではジグザグジギー、真空ジェシカ、ダウ90000、錦鯉、ハンジロウ、パーパー、マシンガンズ、ヤーレンズ、ルシファー吉岡など多種多様なおもしろい芸人が出演。このメンバーは、内村の芸人を選択する審美眼もまだまだ確かなものであることを証明している。
番組ではやさしい雰囲気で場を和ませながら、イベントや『LIFE!シリーズ』では新たな取組を行い笑いの可能性を追求する内村。還暦を迎えたが、さらにお笑い芸人としての勢いは増していきそうだ。
<文/ゆるま小林>
【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆
コンビとしての活動はほとんどないが、内村一人で出演する『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK総合)ではコントも披露。事務所関係なく、後輩たちを引っ張り続けるリーダーとしての役目も果たし、唯一無二の芸人として尊敬を集めている。
◆16年ぶりの復活をとげた『内P』
そんな内村だが、ベテランながらここ最近の活躍が凄まじい。まず9月28日に『祝!内村光良還暦祭り 内村プロデュース復活SP!!』(テレビ朝日系)を放送。同局で2000年4月から2005年9月まで放送された『内村プロデュース』の特別番組で、内村の還暦に合わせて16年ぶりの復活をとげた。
出演者は、過去に番組に出演して経験を持つ「出てた芸人」として、さまぁ~ず、ふかわりょう、有吉弘行、土田晃之、出川哲朗、TIM、くりぃむしちゅー・有田哲平、おぎやはぎ、アンタッチャブル、バナナマンが登場。年末のスペシャル番組を作れるくらいの豪華メンバーとなった。
さらに、中堅芸人を中心に「見てた芸人」として、パンサー、狩野英孝、ハライチ・澤部佑、モグライダー、ニューヨーク、マヂカルラブリー・野田クリスタル、さらば青春の光、ヒコロヒー、見取り図が参加。人気芸人が総出演する形で内村の還暦を祝った。
◆有吉やバナナマンも全力で企画に挑戦
豪華布陣で制作された『内村プロデュース復活SP!!』だが、ベテランの「出てた芸人」たちが、全く手を抜いておらず素晴らしい働きをした印象だ。有吉や有田、バナナマンなどは各局で自身の番組を持つ超売れっ子で、正直言えば今回の特番には似つかわしくない芸人だ。
だが、忙しいスケジュールの中で番組参加しただけでなく、きっちりと全力で企画に挑戦。こんな豪華で面白い番組になったのも、内村の人徳があるからだろう。
現に有吉は番組の公式Xが公開した収録後の動画で、「満足しました、充実感ありましたね…年1でやりたいですね」とコメント。感動して泣きそうだったことを明かし「僕の青春の1ページに新しいページができたなと思います」と話した。
有吉といえば、猿岩石でブレイクした後の低迷期に、『内村プロデュース』へ出演し傍若無人な猫メークの猫男爵として活躍した。それだけに売れた後の番組参加や、内村との掛け合いに感慨深いものがあったのだろう。とうぜん、今回の『内村プロデュース復活SP!!』でも手を抜かず、大喜利や猫男爵の復活など体をはった企画で大暴れした。
また、バナナマンも同じく売れていなかった頃に番組に出演していたコンビで、今回の収録でも活躍。他にもベテランたちが手を抜かず、内村の還暦祝いを盛り上げるために笑いを生み出した形だ。
もちろん、ベテランに負けず中堅の「見てた芸人」も奮闘。内村が自ら企画に参戦する場面もあり、大盛りあがりのまま番組は終了した。
◆内村が見せたバランス感覚と愛
『内村プロデュース』に感じたのは、場の雰囲気のやわらかさだ。
なあなあでやっているわけではないが、緊張感を保ちながら各芸人がノビノビと芸を披露。若手もベテランも関係なく笑いを作り出すことができ、内村がスベリやミスもしっかりと笑いに変えてくれるので安心してボケを披露できる。
今回もレギュラー放送時と同じく、ふかわりょうが大喜利企画で珍回答をしても内村がやさしくフォロー。また、「引き出し王」で出川哲朗が無茶なリアクションで危険な笑いを披露した際、さらに「笑わせ王」でトランポリンを利用した危険な笑いを芸人がやりだした際は、抜群のタイミングで切り上げ笑いに変えた。
内村が確かなバランス感覚で場を仕切っていることで、芸人たちは追い込まれながら何かしらのネタを披露する勇気をもらえる。ミスをしたりスベっても救いの手を差し伸べ、全てを笑いに変えるテクニックを内村は持っているのだ。
◆笑いを何倍にも増やせる配慮やテクニック
また、芸人たちの笑いを何倍にも増やすフォローもうまい。
さらば青春の光・森田宅で「内P家庭訪問」を行った際は、芸人たちの暴走をうまくコントロールして次々とボケを生み出させた。
さらに有吉扮する猫男爵の登場シーンでは、うまく有吉を誘導しながら部屋で大暴れする動線を演出。最終的には場が荒れて収集がつかなくなったのだが、内村が機転を利かせて締めのコメントを行ってきれいに企画を終了させた。こういった配慮やテクニックがあるから、芸人たちはストレスなく楽しい収録を終えることが可能になるのだ。
これは、レギュラー放送していた時の『内村プロデュース』と同じく、特有の雰囲気は内村が作り出しているものである。今回の『内村プロデュース復活SP!!』でも、芸人たちは無茶振りの企画に対してさまざまなギャグやリアクションを披露したが、心底楽しそうに企画に挑んでいる様子が見られた。
◆内村にしか作り出せない『LIFE!』の柔らかい雰囲気
そして、内村のライフワークにもなっている『LIFE!~人生に捧げるコント~』は、12周年を迎えたことを記念して、9月16日、23日に特番『LIFE!12周年SP』を放送。
コント番組が激減している中で、『LIFE!12周年SP』では今田美桜の人生初コント挑戦や7年ぶりとなる星野源の出演、さらに川口春奈も参加するなど豪華なメンバーで制作され、SNSでも大きな話題を生み出した。
この『LIFE!シリーズ』の魅力は、なんといっても新しいコントの形を生み出しながら、ほっこりできる柔らかい雰囲気を醸し出しているところ。その中心にいるのはもちろん内村だ。
内村は、番組の主宰でありながら脇役に徹することが多い。今回の『LIFE!12周年SP』でも、今田や川口、星野が目立つ構成となった。もちろん、各コントで内村は活躍するが、自分が目立つことより他の出演者が光る潤滑油となるキャラに徹する。
そういった細かい心遣いがあるから、ゲストも緊張なくコントに参加でき良い作品が生み出され、またゲストだけでなくココリコ・田中直樹、ドランクドラゴン・塚地武雅といったレギュラー陣も輝き続けるのだろう。
◆現場に参加し、共演者に仲間としてフラットに接する内村だけの魅力
60歳を迎えた売れっ子ベテラン芸人ならば、MCとしてスタジオでの仕事だけを行うのが普通だ。しかし、内村はプレイヤーとしてコントやロケに参加し、他の芸人と切磋琢磨することを望む。そして現場で安心感を共演者に与え、笑いを作ることに貢献する。こういった姿勢は他のベテラン芸人にない、内村だけの魅力だといえる。
内村は、コントでも番組作りでも強者としての姿勢を見せず、一緒に笑いを作り出す仲間としてベテランも若手も関係なくフラットに接する。
こういった芸人としての姿勢は、いまにはじまったわけではないが、令和の時代により世の中にフィットするようになったのではないだろうか? だからこそ、今回の2つの特番だけでなく他のレギュラー番組も長く続いて幅広い世代から人気を集めているのだろう。
ちなみに、内村は2017年から行っているコントライブの最新版『内村文化祭 ’24 還暦』を2024年10月~11月にかけて開催する。このイベントにはラランドらが参加するが、さらに『内村後夜祭~ネタフェス~』として、11月4日に行う予定のイベントではジグザグジギー、真空ジェシカ、ダウ90000、錦鯉、ハンジロウ、パーパー、マシンガンズ、ヤーレンズ、ルシファー吉岡など多種多様なおもしろい芸人が出演。このメンバーは、内村の芸人を選択する審美眼もまだまだ確かなものであることを証明している。
番組ではやさしい雰囲気で場を和ませながら、イベントや『LIFE!シリーズ』では新たな取組を行い笑いの可能性を追求する内村。還暦を迎えたが、さらにお笑い芸人としての勢いは増していきそうだ。
<文/ゆるま小林>
【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆