1980年代に女子プロレス旋風を巻き起こしたダンプ松本の半生を描くNetflixオリジナルドラマ『極悪女王』が話題です。全5話の本作は、物語のテンポがよくて一気見してしまったという視聴者も多いはず。
なかでも注目を集めているのは、主要キャストを務めた3人の女優です。それぞれに激しいトレーニングと増量で役作りに挑んだことも大きな話題となりました。今回筆者がそれぞれに感じた魅力をお伝えします。
◆俳優としての著しい「進化」で魅せた剛力彩芽
まず2020年に18年所属したオスカープロモーションを退社した剛力彩芽。お騒がせ女優のイメージが強く、演技力は正直イマイチという印象でした。しかしどうでしょう。本作では「こんなに繊細な表現ができるのか」と、驚かされました。
演じたのはライオネス飛鳥/北村智子。ダンプ松本の同期・昭和55年組のなかでは、もともと身体能力が高いエリートレスラーであり、清く強くあろうとする姿が美しかったです。リングの上で「自分のプロレスを貫こう」と戦う姿には、エリートらしい気高さと力強さがあり、惚れ惚れしました。
◆人気レスラーの苛立ちや葛藤も見事に表現
一方で第4話以降、リング外で、プロレス以外の仕事が増えたことや真剣勝負をさせてもらえないことへの苛立ち――そして葛藤を、細やかに表現。演技力はちょっと……のイメージを見事に覆してくれました。
◆体当たりの演技で見せつけた女優魂・唐田えりか
次は、不倫騒動でイメージが急落してしまった唐田えりか。もともと清純派の印象が強く、これといった代表作も思い浮かびません。新人賞を取り評価も高かった映画『寝ても覚めても』は、その後の騒動でもう色眼鏡なしでは観られないし……。そんな彼女が、体当たりの演技で女優魂を見せつけています。
ダンプ松本の同期であり、はじめは落ちこぼれだったがデビュー直後から人気を集め、ベビーフェイス(※)の国民的レスラーに上り詰める長与千種を演じています。(※プロレスにおける善玉を意味。ヒール=悪玉の対義語)
◆試合を重ねるごとに輝きを増す姿に感動
デビューの直後にライオネス飛鳥と試合し、その後ライオネス飛鳥とタッグチーム「クラッシュギャルズ」を結成。落ちこぼれだった彼女が、リングの上で少しずつ光を放っていく――ひと皮むけてスター性を纏っていく戦いぶりが、彼女をもう一人のヒロインたらしめました。そんな風に、試合を重ねるごとに輝きが増していく唐田の様子に感動を覚えたのは、筆者だけではないはずです。
欲を言えば、もう少し声が張れるとプロレスラーとしての迫力が増したのでは?! と、感じましたが、今後の活躍を期待させる迫真の演技でした。
◆レスラーとして観る者を圧倒・ゆりやんレトリィバァ
そして本作で最も凄まじい演技を見せてくれたのは、やはり主演! ゆりやんレトリィバァでした。前半は「ゆりやんまんま?!」といった印象でしたが、その後の変貌におみそれしました! まさにダンプ松本として、まさに悪役レスラーとして、物語のヒロインとして、観る者を圧倒。
特に第3話のラスト。劣悪な家庭環境で育ちながらも“優しさ”を捨てきれずに落ちこぼれレスラーだった松本香が、家族への怒り、長与への怒りを起爆剤にヒールレスラーとして覚醒。ダンプ松本へと変貌していく姿からは、目が離せませんでした。
◆伝説のヒール・ダンプ松本を見事再現した
リングの上だけでなく外でもヒールに徹した最恐レスラー。シーンによって垣間見せる、ヒールならではの孤独な表情もお見事でした。
歩き方や表情まで徹底的にダンプ松本を再現し、感動を呼んだゆりやん。主演女優として強烈なインパクトを残しました。
◆観るとプロレス好きになってしまうドラマ
筆者はプロレスを観ないで育ったため、実際に登場されたレスラーの方々もダンプ松本さんのお名前くらいしか知りませんでした。しかし3人の女優たちの鬼気迫るガチンコバトルによって、プロレスそのものにも魅了されるほど。これほどまでに女子プロレスの魅力を映し出した作品に、初めて触れました。ぜひ多くの人に観てほしいドラマです。
<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>
【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201
なかでも注目を集めているのは、主要キャストを務めた3人の女優です。それぞれに激しいトレーニングと増量で役作りに挑んだことも大きな話題となりました。今回筆者がそれぞれに感じた魅力をお伝えします。
◆俳優としての著しい「進化」で魅せた剛力彩芽
まず2020年に18年所属したオスカープロモーションを退社した剛力彩芽。お騒がせ女優のイメージが強く、演技力は正直イマイチという印象でした。しかしどうでしょう。本作では「こんなに繊細な表現ができるのか」と、驚かされました。
演じたのはライオネス飛鳥/北村智子。ダンプ松本の同期・昭和55年組のなかでは、もともと身体能力が高いエリートレスラーであり、清く強くあろうとする姿が美しかったです。リングの上で「自分のプロレスを貫こう」と戦う姿には、エリートらしい気高さと力強さがあり、惚れ惚れしました。
◆人気レスラーの苛立ちや葛藤も見事に表現
一方で第4話以降、リング外で、プロレス以外の仕事が増えたことや真剣勝負をさせてもらえないことへの苛立ち――そして葛藤を、細やかに表現。演技力はちょっと……のイメージを見事に覆してくれました。
◆体当たりの演技で見せつけた女優魂・唐田えりか
次は、不倫騒動でイメージが急落してしまった唐田えりか。もともと清純派の印象が強く、これといった代表作も思い浮かびません。新人賞を取り評価も高かった映画『寝ても覚めても』は、その後の騒動でもう色眼鏡なしでは観られないし……。そんな彼女が、体当たりの演技で女優魂を見せつけています。
ダンプ松本の同期であり、はじめは落ちこぼれだったがデビュー直後から人気を集め、ベビーフェイス(※)の国民的レスラーに上り詰める長与千種を演じています。(※プロレスにおける善玉を意味。ヒール=悪玉の対義語)
◆試合を重ねるごとに輝きを増す姿に感動
デビューの直後にライオネス飛鳥と試合し、その後ライオネス飛鳥とタッグチーム「クラッシュギャルズ」を結成。落ちこぼれだった彼女が、リングの上で少しずつ光を放っていく――ひと皮むけてスター性を纏っていく戦いぶりが、彼女をもう一人のヒロインたらしめました。そんな風に、試合を重ねるごとに輝きが増していく唐田の様子に感動を覚えたのは、筆者だけではないはずです。
欲を言えば、もう少し声が張れるとプロレスラーとしての迫力が増したのでは?! と、感じましたが、今後の活躍を期待させる迫真の演技でした。
◆レスラーとして観る者を圧倒・ゆりやんレトリィバァ
そして本作で最も凄まじい演技を見せてくれたのは、やはり主演! ゆりやんレトリィバァでした。前半は「ゆりやんまんま?!」といった印象でしたが、その後の変貌におみそれしました! まさにダンプ松本として、まさに悪役レスラーとして、物語のヒロインとして、観る者を圧倒。
特に第3話のラスト。劣悪な家庭環境で育ちながらも“優しさ”を捨てきれずに落ちこぼれレスラーだった松本香が、家族への怒り、長与への怒りを起爆剤にヒールレスラーとして覚醒。ダンプ松本へと変貌していく姿からは、目が離せませんでした。
◆伝説のヒール・ダンプ松本を見事再現した
リングの上だけでなく外でもヒールに徹した最恐レスラー。シーンによって垣間見せる、ヒールならではの孤独な表情もお見事でした。
歩き方や表情まで徹底的にダンプ松本を再現し、感動を呼んだゆりやん。主演女優として強烈なインパクトを残しました。
◆観るとプロレス好きになってしまうドラマ
筆者はプロレスを観ないで育ったため、実際に登場されたレスラーの方々もダンプ松本さんのお名前くらいしか知りませんでした。しかし3人の女優たちの鬼気迫るガチンコバトルによって、プロレスそのものにも魅了されるほど。これほどまでに女子プロレスの魅力を映し出した作品に、初めて触れました。ぜひ多くの人に観てほしいドラマです。
<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>
【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201