近年、高齢者による運転事故が社会問題化しており、そのたびに免許の返納が話題にのぼります。実際、逆光運転など高齢者による運転事故の割合は年々増えており、2023年度は全体の4分の1にあたる7万1000件ほどが65歳以上のものでした。
年を取ると、体力とともに認知能力などもどんどん低下していきます。個人差はありますが、65歳以上になると、反射神経や判断能力、視力など、運転に必要な身体機能の低下が顕著になるとされます。
運転経験が豊富で、運転技術に自信をもっている人でも、こうした身体機能の低下にはあらがえません。高齢者が事故を起こしやすいのは自然の摂理といえます。
親がいまだに運転していてが心配という人も多いと思いますが、運転免許証の返納を切り出しづらいと感じる人もいるでしょう。しかし、運転免許証を返納すると、自治体によっては特典を受けられることがあります。そこで、編集部が調べた特典を紹介します。
さらに運転ができなくなったあと、どのような移動手段を使えばいいのかを、最近、運転免許証を返納し、運転経歴証明書にされたという、NPO法人渋谷介護サポートセンター理事長の服部万里子先生に伺いました。
(この記事は、『おひとりさま[老後生活]安心便利帳』より一部を抜粋し、再編集しています)
◆運転免許証を身分証明書として使っている人はどうすればいい?
マイナンバーカードが普及した現在でも、運転免許証を身分証明書代わりに使っている人はまだ多くいます。そういう人にとっては、運転免許証の返納に抵抗があるかもしれません。
しかし、運転免許証を返納すると「運転経歴証明書」が交付されます。これは公的な本人確認書類として利用できるので、身分証明書の代わりとなります。
また、運転経歴証明書は一度取得すればずっと使い続けることができるので、運転免許証のように更新手続きに出向く必要もありません。ただし、運転経歴証明書の交付には1100円の手数料がかかります。
運転免許証を身分証明書代わりに使っている人も、これで安心して返納できるのではないでしょうか。
◆運転免許証を返納すると、さまざまな特典が使える
運転免許証を返納するメリットとして、特典を受けられることがあります。自治体によって特典内容は変わりますが、多くの自治体が特典を実施しています。
多くの自治体で実施しているのが、公共交通機関やタクシー、配送サービスの割引です。
運転できなくなると、これらのサービスを利用する頻度も増えるので、うれしい特典といえるでしょう。また、生活用品の割引や定期預金の金利優遇を受けられる自治体もあります。
◆東京都の特典は?
具体例の一つとして、東京都の特典を紹介します。
東京都では、帝国ホテルなど有名ホテルのレストランで料理や飲み物10%割引、はとバスでの観光割引や美術館などの入館割引、メガネや補聴器・電動アシスト自転車の割引サービス、買い物代行や付き添いサービスの割引など盛りだくさんです。
特典の内容は、各都道府県警や各自治体のサイトに記載されています。どんな特典があるかを確認したい場合は、お住まいの地域のサイトを確認し、参考にしてみましょう。
◆免許返納のあと、移動困難になったらどうしたらいい?
実際に運転免許証を返納したあと、問題になるのが移動手段です。高齢者が一人で生活していて、移動が困難になることは、とても心配なことです。
まず、一番の手軽な選択肢となるのが電車やバスなどの公共交通機関とタクシーでしょう。
そのほかには、高齢者向けの移動手段や外出を支援してくれるサービスがあるのでしょうか? 服部先生にそのサービスを紹介してもらいました。
「高齢者の移動手段としては『電動車いす』や『シニアカー』があります。シニアカーは電動カートのような乗り物で、免許なしで乗ることができます。
自治体によっては購入やレンタルする場合に補助金を受けられる場合もありますし、“要介護認定”されていれば介護保険を使って利用することも可能です。
電動車いすやシニアカーはレンタルも可能なので、乗り心地などを試すためにレンタルから始めるのもいいでしょう。地域による車に代わる移動手段は多様です。返納前に確認が大切です」(服部先生)
◆外出が困難な場合は「福祉タクシー」や「介護タクシー」も
さらに、外出が困難な高齢者には、「福祉タクシー」や「介護タクシー」があります。
「福祉タクシーは、利用するのに条件がありますが、買い物やレジャー、旅行など自由に利用できます。
介護タクシーは介護保険が適用されるサービスで、用途は通院や預金の引き出しなどに限られます。福祉タクシーと介護タクシーを利用したい場合は、自治体の福祉系の窓口か、地域包括支援センターに相談することをおすすめします」(服部先生)
服部先生は、「自分で行く必要があるか、手紙などですむのか、決めることから始めましょう」とアドバイスもしてくれました。また、「通院が必要なら訪問診療も利用できる」とのことです。
◆「外出支援サービス」の活用で外部とのかかわりをもてる
このほかに、多くの自治体が実施しているのが、買い物や外食、イベントの参加などに専門のヘルパーやスタッフが同行してくれる「外出支援サービス」があります。
また、介護が必要な人に旅行を楽しんでもらうためのサービスに「トラベルヘルパー」も。介護の技術と旅の業務知識を兼ね備えた専門家が旅行に付き添ってくれます。
運転免許証を返納すると、外出する機会が減ってしまうケースもありますが、家に閉じこもっていると、心身ともに衰えてしまいます。高齢者にとって外出は、外部とのかかわりをもてるという点でも大切ですから、外出の機会を減らさないようなサービスの利用も考えましょう。
【NPO法人渋谷介護サポートセンター理事長 服部万里子先生】
服部メディカル研究所所長。公益社団法人・長寿社会文化協会理事長、NPO渋谷介護サポートセンター理事長、日本ケアマネ学会理事などを兼務。元立教大学教授。看護師、社会福祉士、主任介護支援専門員の資格も持つ。
<構成/女子SPA!編集部>
【女子SPA!編集部】
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa
年を取ると、体力とともに認知能力などもどんどん低下していきます。個人差はありますが、65歳以上になると、反射神経や判断能力、視力など、運転に必要な身体機能の低下が顕著になるとされます。
運転経験が豊富で、運転技術に自信をもっている人でも、こうした身体機能の低下にはあらがえません。高齢者が事故を起こしやすいのは自然の摂理といえます。
親がいまだに運転していてが心配という人も多いと思いますが、運転免許証の返納を切り出しづらいと感じる人もいるでしょう。しかし、運転免許証を返納すると、自治体によっては特典を受けられることがあります。そこで、編集部が調べた特典を紹介します。
さらに運転ができなくなったあと、どのような移動手段を使えばいいのかを、最近、運転免許証を返納し、運転経歴証明書にされたという、NPO法人渋谷介護サポートセンター理事長の服部万里子先生に伺いました。
(この記事は、『おひとりさま[老後生活]安心便利帳』より一部を抜粋し、再編集しています)
◆運転免許証を身分証明書として使っている人はどうすればいい?
マイナンバーカードが普及した現在でも、運転免許証を身分証明書代わりに使っている人はまだ多くいます。そういう人にとっては、運転免許証の返納に抵抗があるかもしれません。
しかし、運転免許証を返納すると「運転経歴証明書」が交付されます。これは公的な本人確認書類として利用できるので、身分証明書の代わりとなります。
また、運転経歴証明書は一度取得すればずっと使い続けることができるので、運転免許証のように更新手続きに出向く必要もありません。ただし、運転経歴証明書の交付には1100円の手数料がかかります。
運転免許証を身分証明書代わりに使っている人も、これで安心して返納できるのではないでしょうか。
◆運転免許証を返納すると、さまざまな特典が使える
運転免許証を返納するメリットとして、特典を受けられることがあります。自治体によって特典内容は変わりますが、多くの自治体が特典を実施しています。
多くの自治体で実施しているのが、公共交通機関やタクシー、配送サービスの割引です。
運転できなくなると、これらのサービスを利用する頻度も増えるので、うれしい特典といえるでしょう。また、生活用品の割引や定期預金の金利優遇を受けられる自治体もあります。
◆東京都の特典は?
具体例の一つとして、東京都の特典を紹介します。
東京都では、帝国ホテルなど有名ホテルのレストランで料理や飲み物10%割引、はとバスでの観光割引や美術館などの入館割引、メガネや補聴器・電動アシスト自転車の割引サービス、買い物代行や付き添いサービスの割引など盛りだくさんです。
特典の内容は、各都道府県警や各自治体のサイトに記載されています。どんな特典があるかを確認したい場合は、お住まいの地域のサイトを確認し、参考にしてみましょう。
◆免許返納のあと、移動困難になったらどうしたらいい?
実際に運転免許証を返納したあと、問題になるのが移動手段です。高齢者が一人で生活していて、移動が困難になることは、とても心配なことです。
まず、一番の手軽な選択肢となるのが電車やバスなどの公共交通機関とタクシーでしょう。
そのほかには、高齢者向けの移動手段や外出を支援してくれるサービスがあるのでしょうか? 服部先生にそのサービスを紹介してもらいました。
「高齢者の移動手段としては『電動車いす』や『シニアカー』があります。シニアカーは電動カートのような乗り物で、免許なしで乗ることができます。
自治体によっては購入やレンタルする場合に補助金を受けられる場合もありますし、“要介護認定”されていれば介護保険を使って利用することも可能です。
電動車いすやシニアカーはレンタルも可能なので、乗り心地などを試すためにレンタルから始めるのもいいでしょう。地域による車に代わる移動手段は多様です。返納前に確認が大切です」(服部先生)
◆外出が困難な場合は「福祉タクシー」や「介護タクシー」も
さらに、外出が困難な高齢者には、「福祉タクシー」や「介護タクシー」があります。
「福祉タクシーは、利用するのに条件がありますが、買い物やレジャー、旅行など自由に利用できます。
介護タクシーは介護保険が適用されるサービスで、用途は通院や預金の引き出しなどに限られます。福祉タクシーと介護タクシーを利用したい場合は、自治体の福祉系の窓口か、地域包括支援センターに相談することをおすすめします」(服部先生)
服部先生は、「自分で行く必要があるか、手紙などですむのか、決めることから始めましょう」とアドバイスもしてくれました。また、「通院が必要なら訪問診療も利用できる」とのことです。
◆「外出支援サービス」の活用で外部とのかかわりをもてる
このほかに、多くの自治体が実施しているのが、買い物や外食、イベントの参加などに専門のヘルパーやスタッフが同行してくれる「外出支援サービス」があります。
また、介護が必要な人に旅行を楽しんでもらうためのサービスに「トラベルヘルパー」も。介護の技術と旅の業務知識を兼ね備えた専門家が旅行に付き添ってくれます。
運転免許証を返納すると、外出する機会が減ってしまうケースもありますが、家に閉じこもっていると、心身ともに衰えてしまいます。高齢者にとって外出は、外部とのかかわりをもてるという点でも大切ですから、外出の機会を減らさないようなサービスの利用も考えましょう。
【NPO法人渋谷介護サポートセンター理事長 服部万里子先生】
服部メディカル研究所所長。公益社団法人・長寿社会文化協会理事長、NPO渋谷介護サポートセンター理事長、日本ケアマネ学会理事などを兼務。元立教大学教授。看護師、社会福祉士、主任介護支援専門員の資格も持つ。
<構成/女子SPA!編集部>
【女子SPA!編集部】
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa