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なぜ炎上? カワイイを語った「ダヴ」広告の“致命的な問題点”。外見コンプレックス掘り起こす、だけじゃない

女子SPA! 2024年10月11日 8時46分

 洗顔料や石鹸などを取り扱っているビューティーブランド「Dove(ダヴ)」の広告が炎上している。Doveを展開するユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社は10月11日の国際ガールズデーに合わせ、2024年10月7日に渋谷駅の構内に広告を掲出。 その内容は「#カワイイに正解なんてない」をスローガンに、世間に溢れる美しさや可愛さを推し量る言葉に異を唱えるというもの。

◆画一的な美しさの基準に異を唱えるはずが

 具体的には、身長と体重を引いた数値で痩せているかどうかの基準「スペ110」や、鼻と顎を結ぶ直線で横顔の美しさの基準「Eライン」など、計10種類の“基準”の言葉を塗りつぶし、一緒に「#カワイイに正解なんてない」と記したデザインだ。

「スペ110」や「Eライン」といった基準に惑わされず、自分らしさの追求を促した広告であることは理解できる。決して「痩せていることは正義」「小顔のほうが可愛い」とコンプレックスを煽ったわけではない。にもかかわらず、なぜ今回炎上騒動まで発展したのだろうか。

◆「#カワイイに正解はある」に変換されてしまう

 まず、結果的にはコンプレックスを煽っているようにしか見えないことが大きい。顔から身体まで、様々な見た目に関する各基準の意味を短い文字数で丁寧に紹介しており、かえって各基準の重要性が強調されているように思う。もちろん「#カワイイに正解なんてない」というスローガンを問題視する必要はないが、具体的に記された各基準と一緒に載ると、むしろ「#カワイイに正解はある」というメッセージに変換されてしまう。そのことに嫌悪感を覚えた人が多かったのではないか。

「スペ110」「Eライン」という言葉が広まることで、それらが“美の基準”として認識されることを懸念した人も少なくないと考えられる。「Eライン」という言葉をDoveの広告で初めて知り、自身の顔と照らし合わせて「Eラインに収まっていない」とショックを受ける人が出るかもしれない。加えて、他者を攻撃するためのボキャブラリーとして「スペ110」「Eライン」という言葉を使う人間が現れるかもしれない。コンプレックスに無理矢理気づかせたり、他者を貶める煽り文句を教えたりなど、“いらない情報”を不特定多数の人が確認できるところに提示したことが、より燃え上がらせた要因としても想定される。

◆肝心のメッセージより、否定したい言葉が目立つデザイン

 広告のデザインも影響している。各基準は濃い色で書かれており、なにより文字自体が大きい。一方、「#カワイイに正解なんてない」という文字は各基準よりも小さく、色も明るいため目立たない。また、各基準に異議を唱えることを意味しているペンで書き殴ったような横線の色もこれまた明るい。

 こうしたデザインにより、むしろ各基準を否定するどころか引き立てている印象さえ与え、やはり「#カワイイに正解はある」というメッセージを発しているように錯覚してしまう。

◆Doveはどの立ち位置から発信したかったのか

 そもそも、Doveの立ち位置にも問題があるのかもしれない。Doveは主に洗顔料や石鹸などを取り扱っているが、いずれも今回登場した各基準に何かしらのアプローチをしてくれるわけでは基本的にない。Doveが手がける商品と各基準の関係性はあまり深くない。つまりは部外者・門外漢である。Doveの主張の良し悪しは置いておいて、部外者が各基準について言及していることに腹を立てた人も一定数いるのではないか。

 Doveは今回、広告掲載だけではなく、16~19歳の女性400名を対象にした容姿や体形に関するアンケート調査も実施している。ルッキズムを助長して炎上騒動に発展した取り組みに、結果的に多くの若者を関与させた罪は重いように思う。ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社が今後どのような動きを見せるか注視したい。

<文/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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