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朝ドラ『おむすび』賛否あるけど…“50歳俳優”に注目してみるとめっぽう面白くなるワケ

女子SPA! 2024年10月12日 8時46分

 大変な話題だった『虎に翼』(NHK総合)放送後のロスで、橋本環奈主演の新作朝ドラ『おむすび』を平常心で見ていられない気持ちはよくわかる。

 でもだからといって、頭ごなしに批判をあびせるのはどうかと思う。仮に橋本環奈に対する思い入れがない視聴者でさえ、『おむすび』は案外面白く見られてしまうからだ。それに本作にはとっておきの“安心材料”的な俳優がいる。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、北村有起哉推しで見たら、本作がめっぽう面白くなる理由を解説する。

◆批判的なコメントが散見されたが

『おむすび』第1週が放送されるや、SNS上ではかなり辛辣というか、頭ごなしに批判的なコメントが散見された。「評価下すの早すぎるけど」と前置きがされつつ、さっそく「#おむすび反省会」のハッシュタグが盛り上がりを見せるなど、これは前作の朝ドラ『虎に翼』への反動なのだろうか。

 確かに『虎に翼』は、近年の朝ドラとしては桁外れに素晴らしい作品だった。同作のあととなると、これは相当やりづらいだろうなと単純に予想していたが、『虎に翼』だって別に非の打ち所がない、完璧な作品だったわけではない。

 序盤から中盤は戦前、戦中、戦後を描く映像の処理が的確で申し分なかった。でも後半は戦後の社会問題をテーマとして単に言葉で説明しているようにしか見えなかった。だから筆者のように後半にノレなかった組は、最終的に『虎に翼』に特別な思い入れも込めず(故にロスにもならずに)、ひとまず次作である『おむすび』をフラットな気持ちで見ることができた。

◆橋本環奈の初主演映画を思い出す

 しかも第1回を見ると、これが案外悪くないのだ。時代設定は『虎に翼』からだいぶ下って2004年。平成真っ只中。高校生になった主人公・米田結(橋本環奈)が、初登校の準備をする様子から始まる。

 熱心に鏡を見つめ、胸のリボンが曲がっていないか、スカートの丈もこれくらいの長さかなと、丹念に調整する。初登校とはいえ、どうしてこんなに制服姿の橋本環奈に対して時間を割くのかと不思議に思うと、そういえば、橋本の初主演映画は『セーラー服と機関銃-卒業-』(2016年)だった。

 あの鮮烈な初主演が記憶させているのは、ヤクザの跡目を継いだ主人公が、堅気の女子高校生に戻るという、可憐な制服姿の力強い物語だった。それを思い出すと、SNS上での「ハシカン(橋本環奈)の無駄づかい」という批判コメントも見当違いだなと思えてくる。

◆『おむすび』第一声は誰か

 とはいえ、筆者は特別、橋本環奈に思い入れがあるわけでもない。『おむすび』に対して意外と悪くない始まり方だぞと感じながら、『虎に翼』ロスを引きずることなく、それなりに楽しめてしまうほんとうの理由は、実は北村有起哉にこそある。

 本作の初登場は、制服を調整する橋本環奈だが、第一声は誰か。北村有起哉である。結の父親・米田聖人役を演じる。結はどれだけ準備に時間をかけているのかと、朝食の席で「結、遅くないか」と第一声。

 北村有起哉と朝食。本作最大の安心材料であり、これだけでもう見ていられる。何だかいつも機嫌が悪そうな仏頂面。ぶつぶつ小言を言いながら、ご飯はちゃんと食べる。あまり健康的ではなさそうなのに、俄然生命力を感じさせる表情。北村有起哉とは、不思議な魅力の人である。

◆食べる系ドラマ作品にしか見えない

『ヤクザと家族』(2021年)での硬派なやくざ役から、いかにもふてぶてしいキャラクターのドラマプロデューサーを演じた『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日、2021年)まで、役柄の幅が地味に広い。食べることでいうなら、向井理と共演した『先生のおとりよせ』(テレビ東京、2022年)の中田くるみ役は最高のはまり役だった。

 向井扮する官能小説家と毎回お取り寄せグルメに仲良く舌鼓を打つ同作の漫画家役は、ちょうど『きのう何食べた?』(テレビ東京、2019年)の内野聖陽が担っているように柔らかな役どころ。「何これ!」とあまりに柔らかな食レポに正直笑ってしまいそうにもなるが、北村と食べる系ドラマ作品との相性は折り紙つきである。

 松重豊主演の『孤独のグルメ』(テレビ東京、2012年)以来、男性俳優、女性俳優問わず、ひとり飯を満喫するドラマ作品は量産されている。玉石混淆の中、北村が仏頂面キャラを生かした、ひとり飯&誰かとの共有飯しっぽり飲み系ドラマ主演作『たそがれ優作』(BSテレビ東京、2023年)は、北村ファンにはたまらない大好物ドラマだったろう。

 その意味でも『おむすび』は、橋本環奈主演の朝ドラではあるけど、もうこれは北村有起哉の食べる系ドラマ作品にしか見えないのだ。

◆北村有起哉推しで見たらめっぽう面白くなる

 第1回の食卓では、結の祖父・米田永吉役の松平健との掛け合いで、さらに北村有起哉の食べる姿がぐんぐん引き立つ。松平の食べっぷりもなかなか魅力的で、毎食、結を挟んで、左右の席に聖人と永吉が座る。この位置関係でちょっとした小競り合いがある。

 第2回の夕食場面。画面奥の永吉が焼酎の水割り、画面手前の聖人がビールをそれぞれ飲んでいる。聖人側すぐ近くのテレビ画面には野球中継が写り、応援するダイエーが点数を取られるごとに、永吉が「かぁ~~~」とひとり声をあげる。

 頭にきた永吉は聖人にテレビを消せと言うが、またすぐにつけろと言う。その都度、ぶつぶつ文句を言いながら、腰をあげる聖人のだらっとしたコミカルさがとてもいい。食卓の中に北村有起哉がいて、彼がちょっと画面の前景で動いてみるだけでドラマ全体が豊かになる。というわけで、北村有起哉推しで見たら本作はめっぽう面白くなる。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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