『虎に翼』(NHK総合)最終回放送後の9月29日、桂場等一郎役で第1回から最終回までレギュラー出演した松山ケンイチが、Xアカウントを更新した。
「出演はしていたけども、思う所があり、観ていませんでした」と書いた松山は以降、第1回から視聴した感想をポストし始めたのである。放送後のロスが解消されつつ、この一連のポストのなかでもっとも興味深かったのが、共演者だった沢村一樹へのユニークな評である。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、松山ケンイチによる「エロ男爵」沢村一樹評を読み解く。
◆愛の眼差しで一貫していたライアン
『虎に翼』で愛のある行動を実践し続けたのは、“家庭裁判所の父”と呼ばれた多岐川幸四郎(滝藤賢一)だったが、主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)に対する愛の眼差しが一貫していたのは、最終的に東京家庭裁判所所長になった久藤頼安(沢村一樹)である。
愛称はライアン。周囲にはそう呼んでくれと自分から言ってまわっていたが、大名家の出自である彼には“殿様判事”との通称もあった。そんな日本的出自を全然感じさせないライアンは、根っからのアメリカンな紳士。
誰にでも気さくに接し、場合によっては率先して相手をエスコートする。第10週第46回では、職を得るために司法省にやってきた寅子をナイスアシストして、「サディ」というニックネームまで付けている。
◆ニックネームが付いていないふたり
寅子に限らず、会った人にはニックネームを付けずには気がすまない人でもある。自分はこう呼んでくれ、だからあなたはこう呼ぶねという具合に。それでもふたりだけ、ニックネームが付いていない人たちがいた。
ひとりは、寅子と明律大学で法律を学んだ学友で、戦後に弱い立場の人々を助ける弁護士になった山田よね(土居志央梨)。もうひとりは、寅子が法曹界を志すきっかけになり、最終的には最高裁判所第5代長官になった孤高の判事、桂場等一郎(松山ケンイチ)である。
ふたりとも極端に堅牢な性格で、人付き合いが得意ではない。誰に何を言われようと自分の意見は曲げない。だから、ライアンからのニックネームによって自分固有の名前が薄れてしまうことを頑なに嫌ったのだろう。
◆松山ケンイチの気になる付着物
もちろん可愛いところもある。特に桂場は、大の甘いもの好き。寅子たちも常連だった甘味処「竹もと」のあんこ団子を求めて、足しげく通った。他にもサツマイモを職場に持参したり、とにかく甘いもの好きキャラが随所で印象付けられた。
第50回では、「ジャムの方だ」とライアンが常備するイチゴジャムを早くよこせと所望していた。判事としてはあれだけ厳めしいのに、甘いものの前では子どものようになる。ライアンが提供する一匙のジャムの魔力は強力だった。
第46回で、門前払いされそうになった寅子を人事課長だった桂場の元に連れていくのもライアンのアシストによるものだったが、そのとき桂場の鼻に何か黒っぽいものが付着していた。視聴者みんなが気になったその付着物。
ライアンがひょいと軽やかに取ってやるそれが、サツマイモの皮だったのか。気になる。桂場役の松山ケンイチも、Xで「桂場、鼻になんかくっついてるぞ」とポスト。演じる本人すら気になっているくらいだ。
◆松山ケンイチによるユニークな沢村一樹評
でもそれ以上に気になるのは、この松山のXのポスト自体だ。本作放送後、実は放送を見ていなかったと明かす松山がせっせと視聴を繰り返して、第1回から各回ごとに丁寧な感想をポストしている。
「桂場、鼻になんかくっついてるぞ」と書いていたポスト最大のトピックは、ライアンの初登場について。沢村演じるこのライアンに対して、松山は「ライアン登場。振り返りから既にエロい!」と形容を当てて評している。割りと長いポスト中、実に9回も「エロ」と使っている。
他にも第47回でのポストでもライアンに対して「エロうさんくさすぎるんだよカメラ目線にすると!」、第52回のライアンにも「ライアン帽子を斜めに被るなエロいから」と、とにかく「エロ」を連打しまくっている。よくそんな細かいところにもそう感じながら、ユニークな沢村一樹評を書いてるなぁと感心してる場合じゃない。
ライアンを演じる沢村一樹本人にも、久しく耳にしていないニックネームがあったことを忘れていた(!)。
◆実は隠れ「エロ男爵」ファン?
人呼んで、「エロ男爵」。バラエティ番組などに出演した沢村が、あのにやけた、ハンサムだけどうさんくさい表情で、やたらとセクシートークを披露する姿が一時期よくあった。それで付いたあだ名だったと記憶している。
最近はあまりそのあだ名では呼ばれなくなったなぁと思っていたところに、松山のあの「エロ」連打である。まったく、油断も隙もない。そうだそうだ、沢村一樹はぼくらの「エロ男爵」だったんだなと清々しいあだ名を思い出させてくれる。
沢村のセクシートークは全然不潔ではなかった。どこか愛嬌があってキュートだから万人受けしていた。松山も実は隠れ「エロ男爵」ファンだったりして。近年最大の話題作だった『虎に翼』放送後のロスが、まさかこんな愉快な話題で解消されようとは!
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
「出演はしていたけども、思う所があり、観ていませんでした」と書いた松山は以降、第1回から視聴した感想をポストし始めたのである。放送後のロスが解消されつつ、この一連のポストのなかでもっとも興味深かったのが、共演者だった沢村一樹へのユニークな評である。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、松山ケンイチによる「エロ男爵」沢村一樹評を読み解く。
◆愛の眼差しで一貫していたライアン
『虎に翼』で愛のある行動を実践し続けたのは、“家庭裁判所の父”と呼ばれた多岐川幸四郎(滝藤賢一)だったが、主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)に対する愛の眼差しが一貫していたのは、最終的に東京家庭裁判所所長になった久藤頼安(沢村一樹)である。
愛称はライアン。周囲にはそう呼んでくれと自分から言ってまわっていたが、大名家の出自である彼には“殿様判事”との通称もあった。そんな日本的出自を全然感じさせないライアンは、根っからのアメリカンな紳士。
誰にでも気さくに接し、場合によっては率先して相手をエスコートする。第10週第46回では、職を得るために司法省にやってきた寅子をナイスアシストして、「サディ」というニックネームまで付けている。
◆ニックネームが付いていないふたり
寅子に限らず、会った人にはニックネームを付けずには気がすまない人でもある。自分はこう呼んでくれ、だからあなたはこう呼ぶねという具合に。それでもふたりだけ、ニックネームが付いていない人たちがいた。
ひとりは、寅子と明律大学で法律を学んだ学友で、戦後に弱い立場の人々を助ける弁護士になった山田よね(土居志央梨)。もうひとりは、寅子が法曹界を志すきっかけになり、最終的には最高裁判所第5代長官になった孤高の判事、桂場等一郎(松山ケンイチ)である。
ふたりとも極端に堅牢な性格で、人付き合いが得意ではない。誰に何を言われようと自分の意見は曲げない。だから、ライアンからのニックネームによって自分固有の名前が薄れてしまうことを頑なに嫌ったのだろう。
◆松山ケンイチの気になる付着物
もちろん可愛いところもある。特に桂場は、大の甘いもの好き。寅子たちも常連だった甘味処「竹もと」のあんこ団子を求めて、足しげく通った。他にもサツマイモを職場に持参したり、とにかく甘いもの好きキャラが随所で印象付けられた。
第50回では、「ジャムの方だ」とライアンが常備するイチゴジャムを早くよこせと所望していた。判事としてはあれだけ厳めしいのに、甘いものの前では子どものようになる。ライアンが提供する一匙のジャムの魔力は強力だった。
第46回で、門前払いされそうになった寅子を人事課長だった桂場の元に連れていくのもライアンのアシストによるものだったが、そのとき桂場の鼻に何か黒っぽいものが付着していた。視聴者みんなが気になったその付着物。
ライアンがひょいと軽やかに取ってやるそれが、サツマイモの皮だったのか。気になる。桂場役の松山ケンイチも、Xで「桂場、鼻になんかくっついてるぞ」とポスト。演じる本人すら気になっているくらいだ。
◆松山ケンイチによるユニークな沢村一樹評
でもそれ以上に気になるのは、この松山のXのポスト自体だ。本作放送後、実は放送を見ていなかったと明かす松山がせっせと視聴を繰り返して、第1回から各回ごとに丁寧な感想をポストしている。
「桂場、鼻になんかくっついてるぞ」と書いていたポスト最大のトピックは、ライアンの初登場について。沢村演じるこのライアンに対して、松山は「ライアン登場。振り返りから既にエロい!」と形容を当てて評している。割りと長いポスト中、実に9回も「エロ」と使っている。
他にも第47回でのポストでもライアンに対して「エロうさんくさすぎるんだよカメラ目線にすると!」、第52回のライアンにも「ライアン帽子を斜めに被るなエロいから」と、とにかく「エロ」を連打しまくっている。よくそんな細かいところにもそう感じながら、ユニークな沢村一樹評を書いてるなぁと感心してる場合じゃない。
ライアンを演じる沢村一樹本人にも、久しく耳にしていないニックネームがあったことを忘れていた(!)。
◆実は隠れ「エロ男爵」ファン?
人呼んで、「エロ男爵」。バラエティ番組などに出演した沢村が、あのにやけた、ハンサムだけどうさんくさい表情で、やたらとセクシートークを披露する姿が一時期よくあった。それで付いたあだ名だったと記憶している。
最近はあまりそのあだ名では呼ばれなくなったなぁと思っていたところに、松山のあの「エロ」連打である。まったく、油断も隙もない。そうだそうだ、沢村一樹はぼくらの「エロ男爵」だったんだなと清々しいあだ名を思い出させてくれる。
沢村のセクシートークは全然不潔ではなかった。どこか愛嬌があってキュートだから万人受けしていた。松山も実は隠れ「エロ男爵」ファンだったりして。近年最大の話題作だった『虎に翼』放送後のロスが、まさかこんな愉快な話題で解消されようとは!
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu