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迫真の「お前のせいだ!」にゾッ…!仲間から恨まれようとも権力者としての道を進む道長|大河ドラマ『光る君へ』第38回

女子SPA! 2024年10月13日 15時45分

久しぶりにまひろとききょうが顔合わせる。友人同士のふたりの会話はすっかり様変わりしてしまった。みな、地位のある大人になってしまった。だからこそ、関係性も変わっていく。

ある意味、それぞれの変わったものと変わらないものがはっきりと描かれた回と言えるのかもしれない。

◆まひろに伝えたかったききょうの想い

紫式部(吉高由里子)と清少納言(ファーストサマーウイカ)、いや、まひろとききょうの対面から始まった第38回。

「光る君の物語、読みました。惹きこまれました」と切り出すききょう。そして「まひろ様はまことに根がお暗い」と言いつつ、つらつらと作品について語り出す。しっかりと物語を読み込んだ上で、まひろの性格も併せて批評。少しばかりの嫌味も混ぜつつも、まひろの「漢籍の知識の深さ」、「この世のできごとを物語に移し替える巧みさ」を指摘し、ちゃんと褒めてもいる。

まひろもききょうがどういう人なのか分かっているので、その言葉をしっかりと受け止めてるように見えた。少し嬉しそうでもある。

まひろはききょうが来ればもっと藤壺は華やかになる、と言うが、ききょうはこれをぴしゃりとはねのける。

ききょうの心は定子だけのもの。「この命は定子様の灯を守り続けるためにある」と言い切る。

そして「私は腹を立てておりますのよ、まひろ様に。源氏の物語を恨んでおりますの」とも。

「源氏物語」が一条天皇(塩野瑛久)の心を動かし、彰子(見上愛)のもとへ渡るようになった。そして皇子も生まれた。一条天皇の心の中に定子以外の女性の存在がある。それを知れば定子が悲しむ……いや、この世にある定子の影が薄くなってしまうような、そんなところかもしれない。ききょうはただ、定子を守りたいのだ。

まひろとききょう、ふたりの豊かな表情が言葉以上の想いを伝えてくる。作家として、誰かを想う人間として、友として、複雑な思いが溢れる様子が胸を打った。

◆道長たちに向けられる敵意

一方、道長(柄本佑)にはまた頭を悩ませるような出来事が。

敦成親王の寝所から、呪符が見つかったのだ。行成(渡辺大知)に調べさせた結果、円能という僧侶が関わっていることが分かる。そして呪詛の首謀者は伊周(三浦翔平)の叔母、伊周の妻の兄・源方理で、呪詛の対象者は彰子と敦成親王、道長。目的は伊周と敵対する者の排除。

本来なら、死罪が相当だが、厳しい罰を与えたせいで、彰子と敦成親王への恨みが増すことを道長は懸念していた。そのため、罪は軽いものとなったが、道長と彰子、敦成親王が恨みを買っていることには変わりはない。敦成親王、赤ちゃんやぞ……赤ちゃんに呪詛するって……などと思ってしまうが、誰が次の帝になるか、という点において、そんなことは関係ないのだろう。

そして、道長は敦成親王を次の東宮にし、ゆくゆくは帝に、という思いをはっきりと息子の頼通に伝える。これは家のためではなく民のため、と言うが、たいていの人はそれは建前で、本音は家のためではないのか、と思うはずだ。道長自身もどのように自覚しているのかが分からない。でも、こういう言葉を口にする時点で、道長もやはり変わってしまったのだなあ、と感じずにはいられない。

◆道長の鈍感さ

一方で、道長は頼通(渡邊圭祐)の婿入りについても考え始めており、倫子(黒木華)に相談をする。まずは本人の思いを聞かないと、という倫子に対し、道長は「妻は己の気持ちで決めるものではない」という。男の行く末は妻で決まる、やる気のない末っ子だった自分が今あるのは倫子のおかげだと。ものすごくさらっと「別にそなたのことは好きではなかった」と告白したけども、それを微笑んで流す倫子よ……。倫子はきっと、道長の心にずっと棲んでいるのがまひろだと気がついているだろうし、だからこそ何も言わないのか。

鈍い道長はそんな倫子の本当の心を知らない。だから、相変わらず悪気なくまひろのもとを訪れる。

賢子(梨里花)の年齢を聞き、もうすぐ裳着か、という。賢子の裳着には道長から何か贈り物が欲しいというまひろ。父からの贈り物を、というところだろう。道長は一瞬の間のあと、了承した。何度かチャンスはあったように思うのだが、結局のところ、賢子が自分の娘だと気がついているのだろうか。賢子も藤壺で働けばいい、と言うが、それはまひろの娘だからなのか、自分とまひろの娘だからなのか。いやどっちにしろまひろの娘であることが道長にとっては重要なのかもしれない。

◆伊周の呪詛が己を呪う

敦成親王を東宮に、という動きと共に、道長は彰子から敦康親王を引き離すことを画策し始める。定子の子どもだから、というよりは、彰子に懐きすぎている敦康親王に警戒しているのだろう。道長の頭には「源氏物語」が過る。こういうことには鈍いはずの道長だが、まひろによってその点が改善されているのか……。

藤壺でぼやが起きたのをきっかけに、敦康親王は一時的に伊周の邸へと移った。道長が自分を邪魔にしている、と不満を漏らす敦康親王。

伊周はその後、道長のもとを訪れ、あまり敦康を帝から引き離さないでほしい、という。そして、次の東宮は敦康親王だ、とも。

呪詛の件で参内を禁じられていた伊周だが、彰子の懐妊をきっかけに一条天皇はこれを解いていた。しかし参内しなかった伊周に、道長が理由を尋ねる。すると、伊周は「お前のせいだ!」と叫ぶ。呪詛を繰り返す伊周の表情が凄まじい。完全に焦点が合っていないように見える目の動きは一体どうしたものか。

周りの者たちに抱えられるようにして部屋から出ていく伊周の姿を見つめる道長。そんな道長をまひろが見ていた。目が合うと、わずかに道長の視線が泳ぐ。その思いは見られたくなかった、なのか、できることなら、駆け寄ってすがりたい、癒しを得たい、という気持ちだったのだろうか。

<文/ふくだりょうこ>

【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ

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