女子SPA!で2024年9月に公開された記事のなかから、ランキングトップ5入りした記事を紹介します。(初公開日は2024年9月27日 記事は公開時の状況)
==========
美容医療に従事する看護師を指す“美容ナース”。そんな美容ナースが広く知られる存在になる先駆けであるのが、現在もインフルエンサーとして活動しながら、今年9月に自身のクリニックを開業した、みるくナースさんです。
みるくナースさんは美容整形した過去を公表し、そのために使った総額は1000万円を超えていると明かしています。また、昨年『女子SPA!』に登場した際には、美容ナースになる前の東大病院での病棟勤務の経験や、医療の現場に立ち続けることへの思いを語ってくれました。
今回、融資や貯金など約7000万円を捻出し、完全に1人でクリニックの開業へと踏み切った彼女。ここまで強い意志を持って自身のクリニックを作ろうとしたのはなぜなのか?
インタビューを進めていくと、美容クリニック業界の闇と、それに真っ向から立ち向かい、彼女のモットーである“賢く強く可愛い女”を体現する、意志の強さと思いを知ることができました。
◆自分の理想の美容医療を提供したかった
――クリニックをオープンさせようと思ったきっかけを教えてください。
自分のSNSを見て来てくれる患者さんには、自分が思う美容医療を提供したいという思いが強くて、どこかのクリニックに所属するより、自分でクリニックを作ったほうが自分の納得のいくものを提供できるというのが、“開業するしかない!”と思ったのがきっかけですね。
美容ナースとして7年働いてきて、働くクリニックによって方針が違うから、自分がやりたいと思ってること全部ができる場所はなかったんです。
いろいろな患者さんを診てきたし、いろんなところで働いて、インフルエンサーだけではなく、美容の仕事はずっと続けたいなと思っていたんですけど。
――クリニックの開業を報告するInstagramの投稿では<過去に酷く騙されたこともあり、一度諦めた夢で「クリニックは絶対やらない」とずっと言ってた>とありました。以前、クリニックのプロデュースもされていますが、どういうきっかけだったんでしょうか。
インフルエンサーになりたてのころからクリニックを開業したいという思いはあったんですが、その時に、SNS上で経営コンサルをやっている人から「クリニックのプロデュースをしませんか?」と声がかかって……。
当時は“自分のお金で自分で開業する”と言うところまでは具体的に考えていなくて、とにかく“自分のクリニックです”と言えるものを出したかったんです。
最初は、自分で色々決められるとのことだったのでやったんですけど、実際はいろいろなことをクリーンにやっていける環境ではなくて。
クリニックに導入する機械も、施術のメニューも、決めていいという割には「これってどうなの?」と思うことを最終的に決定されたりと、自分の意に反するような運営方法で、患者さんにもスタッフにも優しくなかったんですよね。
でも、自分がお金を出している訳じゃないから意見を言う権限もないし、会社として上の方針に従わなきゃいけないし、自分のやりたいことをやれる場所じゃないのに、名前だけ使われているような感じがすごかったんです。
スタッフからの不満も私にくるんですけど、私は経営を左右できる立場じゃなかったから、スタッフの思うようにはやらせてあげられないし、でも不満だけはぶつけられるという状況。あまり自分のやりたかった働き方ではないなと言うのは、中に入って思いましたね。
◆経営陣から嫌がらせを受けることも
――なるほど。自分のクリニックだけれども、あくまでプロデュースなので、最終的な決定権はなかったということなんですね。
そうですね。集客についても会社の上から言われたりしていたんですが、「こう言う施術をメニューとして出さないと、患者さんは来ないです」と言っても聞いてもらえないし、集客するために必要なものも用意してもらえなくて。
私のインフルエンサー力だけで患者さんを呼ぶという方針だったのですが、自分が納得のできる美容医療を提供できる環境じゃあまりなかったので、そのクリニックに患者さんを呼びたくなかったんです。ここで働いていてもクリーンじゃないなと思ったこともあって、辞めました。
――当時はみるくナースさんがスタッフにパワハラをしたという噂もSNSで流れていました。真実はどうなんでしょうか。
スタッフが契約内容上の仕事をあまりにもやらないので「やらないんだったら給料下げるよ」と指摘したらパワハラと言われました。実際は辞めたスタッフに家の最寄り駅を掲示板に書かれたり、経営陣の人から今も根も葉もないことを言われたり、今でも嫌がらせを受けていたりします。
◆美容クリニック業界の闇
――大変でしたね……。みるくナースさんのSNSを見ていると、現状の美容クリニック業界の闇みたいなものも感じられます。
法律的にグレーなことをやってるクリニックもすごく多いです。クリニックには医療施設の管理を行う「管理医師」が必ず役職として居る必要があって、保健所に“この人が管理医師です”って届け出を出さなきゃいけないんです。
他の診察するドクターがいても、何かあったら管理医師の責任になるので、ドクターはあまりやりたがらないんですよね。
なので、管理医師をやってくれる人を探すのが結構難しいんですけど、月何十万ももらえるから名義貸しだけしている人もいるんですよ。届け出を出す時に名前だけ借りるみたいな。
でも、それって法律的にアウトなんですよ。週何日以上出勤しなければいけないとか決まりがあるんですけど、守ってないところがものすごく多いですね。
――普段から責任者がクリニックに居ない状態のクリニックもあるってことですね……。恐ろしい……。
開業した先生が管理医師をやっているクリニックはもちろん在中しているんですけど、それ以外のクリニックだと、そういった決まりがあるのに守ってないところがものすごく多いです。
業者の人たちが私に「(管理医師のルールを)守ってるのすごいですね」って言うくらい。でも、私はそういう患者さんから見てもわからないところもきちんとしたいんです。
◆スタッフが気持ちよく長く働ける環境を作っていきたい
――今まで色々なものを目で見てきた経験からですね。
そうですね。バレなきゃいいでしょと言う考えは絶対に嫌。そういうところもちゃんとやっていきたいし、同じようにちゃんとやっていきたいと思っている人と働いていきたいです。
実際に今働いてくれているドクターとナースはそういう人だから、“ちゃんとさせてくれてありがとうございます”って思います。ドクターはめんどくさいからやりたがらない人も多い中、ありがたいです。
――ダメなものをきちんとダメと言ってきた、みるくナースさんだからこその信頼はありますね。
スタッフの私生活に口を出す訳じゃないけど、クリニックの名前を背負っている以上は副業はOKだけど、夜職やギャラ飲み、パパ活は絶対に禁止って言ってます。患者さんが知った時にいい気持ちはしないじゃないですか。
私のクリニックではスタッフが、出産とか結婚とか、キャリアプランの変化があったとしても、気持ちよく長く働ける場所を作っていきたいと思うし、スタッフの一員として働くだけじゃなくて、色々な経験をさせてあげたいなって思います。
私がインフルエンサーの仕事をしてるからこそできることもあると思うので。
◆念願叶ったクリニックで実現したいこと
――SNS上ではひどいクリニックで被害にあった患者さんに積極的に声をかけている印象があるんですが、そういった患者さんの受け入れもしていきたいと思っているんでしょうか。
基本的には施術を受けたクリニックで対応してもらうのが一番いいと思うんですけど、対応してもらえない患者さんを私のクリニックで診てあげたいと思ってます。“最後まで面倒見れないなら最初から受け入れるなよ”って、対応しないクリニックに対しては思いますけどね。
ただ、肌管理でのやけどって、クリニック側のミスによるものも、もちろんありますが、患者さんが診察時に伝えてなかった病気の経歴、その日の肌状態、前日使ってたスキンケアだったりが原因のこともあって、どれだけ正しい数値でやってても出てしまう場合もあるんです。だから、クリニックのミスが100%というわけじゃない。
でも、起きてしまったときにトラブルに発展するのって、信頼関係が成り立ってないからだと思うんです。今まできちんと診てあげてたら、きっとそうはならない。
例えばやけどをしてしまったら、クリニックがきちんと理由を説明して謝罪して、診察して薬を渡してって正しい対処をすれば、患者さんにも落ち度はある可能性もあるから納得してくれると思うんです。
――確かに。正しい対応をしてくれないから、SNSに書いたり、トラブルに発展したりするのでしょうね。
だから、患者さんとの信頼は大事だと思ってます。そのために、私のクリニックではナースの担当制度があって、何かあったときにすぐ相談できるようにしているので……。
SNSに被害として書かれるのは信頼関係が成り立っていないからだし、ものすごくちゃんと対応してくれているクリニックでスタッフがみんな患者さんに寄り添ってくれていれば、何かあってもSNSに書くより、そのクリニックに相談に来てくれると思ってます。
◆ドクターよりも「患者さんに近い存在である」という強み
――美容ナースが経営するクリニックだからこその強みはありますか?
皮膚科はドクターよりもナースのほうが患者さんに近い存在だなと今まで美容皮膚科に勤めた経験から思っています。クリニックによるとは思うんですけど、美容皮膚科を極めているドクターもいるけど、意外とナースの方が肌のことに詳しかったり、対応してる患者さんも数も多いっていう体感があったんです。
だから患者さんに近い存在だからこそ、患者さんも話しやすいし、ナースも寄り添えるという点で、ナースがやる強みはあるんじゃないかなと思っています。
ドクターがクリニックを経営していても、肌のことに詳しいナースがいれば同じようなことはできるかもしれないんですけど、いろんなことを決める権限がドクターではなく私にあるから、より患者に近い存在が、クリニックの方向性や導入する機械、施術のメニューなどを決めて、患者さんに寄り添ったものが提供できるのが強みだと思います。
――自身が整形経験者だからクリニックに活かせたこともあるんでしょうか?
私のクリニックでは外科をやる訳ではないので、整形経験者であることが強みになることはないんですが、やっぱり私は美容医療で努力して綺麗になったと言う経験があるので、綺麗になりたい人の気持ちはすごく理解できるんです。
それって、患者さんからしても、元から綺麗でキラキラしている人より、努力して変わった人の方が安心できるかなって。
人からはそんなに気にならないよって言われることでも、自分にとってはすごく気になる……みたいな、人にはわからない悩みがあることは理解できる。それは皮膚治療だけじゃなく、外科治療も自分自身がたくさんやってきたからこそ分かることでもあるかもしれません。
◆開業資金7000万円は融資と貯金
――クリニックをオープンするにあたって苦労したことはありますか?
苦労だらけです。単純にやることが多すぎてタスク管理ができない。周りの開業している医師の先生からも「コンサル入れないの?」って言われて、入れてないって言うと「信じられない!」って驚かれます。
全部自分でやってるから、大変だろうなとは思っていたんですが、想像以上でした。薬剤を発注するにしても業者の数がものすごく多いし、ネットに載ってない業者もあるので、どこがいいかを相見積とって比較したり。
クリニックに導入するWi-Fiとか、プロバイダの設定とか言われても意味がわからないし、契約書作りとか、保険関係とか、今までやったことのない仕事が次々降ってくるのがキツいですね……。
――クリニックの開業資金は正直どれくらい掛かったんでしょうか?
運転資金込みで約7000万円です。内訳は、銀行と日本政策金融公庫から融資で4400万円を借りて、あと約2500万円はこれまで働いて貯めた自分の貯金です。
融資の4400万円は、正直信じられない金額を借りれたねって言われます。ドクターだと1億円くらいでも借りれるんですが、私はドクターではないから信用に欠けるんですよね。
なので、事業計画書をしっかり書いて、何度も面談してプレゼンして、いつまでにいくら稼いでどのくらい返せるのか、どうしてこのくらい患者がくると思うのかまでしっかり提示して、借りることができました。
◆お金は何が何でも絶対自分で100%出したかった
――ご自分で2500万円貯金されていたというのもすごいですね。
クリニックをやると決めて貯めていたわけではないんですが、“何かしたくなった時のために貯めておこう”というのはずっと昔から思っていました。例えば学校に行きたくなったら通えるように、仕事を辞めたいと思ったらすぐ辞められるように。
クリニックの開業に使うとは思ってなかったですし、こんなにお金がかかるとかは思ってなかったですけどね。お金を理由に自分がやりたいことを諦めたくない。ものを買うことは諦められるけど、何かをやりたいという夢は諦められないじゃないですか。
――強いこだわりがあるんですね。
お金は何が何でも絶対自分で100%出したかったんです。クリニックをやるってなった時に「お金出すよ」っていう大人もたくさんいたし、誰かにお金を出してもらうことだってできたかもしれないけど、そうすると「お金出してもらってるし……」となって、自分がやりたいことができなくなるっていうのが前の経験であったので。
◆普段からコンビニも行かず、ペットボトルも買わない
――2500万円の貯金はかなりの額だと思うのですが、どうやって貯められたんですか?
シンプルにめちゃくちゃ働いてました。クリニックで働く前後はインフルエンサーの仕事をしていたので、休む暇はなかったですね。
誕生日のご飯以外、友達と1回も会わない時がありました。すごく付き合いが悪くなって、そのせいで友達に遊びにも誘われなくなってしまったんですけど、あの時働いてたおかげでお金も貯まりましたね。
――以前のインタビューでも思いましたが、すごく倹約家ですもんね。
普段からタクシーに乗らないし、コンビニにも行かないし、ペットボトルも買わないし、外食も基本的にはしない。友達とのご飯もするならランチ。ブランドものも買わないのも大きいかな。全く持っていないわけじゃないですけど、自分でジュエリーを買ったのもここ1~2年で、27歳くらいまでは何も買ったことなかったです。
――インフルエンサーらしからぬ生活ですね。最後に伝えたい言葉あれば
美容クリニックを探すときに多くの人はSNSなどを使って探すと思うんですけど、自分で行かないと分からないこともたくさんあると思うんです。
安いところがいいわけでもないし、だからと言って安いところが悪いわけでもない。あまり値段にとらわれずにクリニックに行って判断したほうがいいかなと思います。
私のクリニックはすごく安いわけでも、すごく高いわけでもないけど、この額のお金を払う価値があるなと思ってもらえるような価値を提供しようとは思ってるので、是非きてほしいですね。
<文/瑞姫>
【瑞姫】
1994年生まれ。奈良県出身。エンタメメディアでの芸能ライターとしての経験を経て、フリーランスのライターに。主にエンタメ・トレンド系の取材・インタビューを中心に、恋愛コラムの執筆を行っている。フォロワー数4.5万人のTwitterでは恋愛・美容系について発信する、インフルエンサーとしても活動中。漫画と散歩と猫が好き。
Twitter:@mizuki32k
==========
美容医療に従事する看護師を指す“美容ナース”。そんな美容ナースが広く知られる存在になる先駆けであるのが、現在もインフルエンサーとして活動しながら、今年9月に自身のクリニックを開業した、みるくナースさんです。
みるくナースさんは美容整形した過去を公表し、そのために使った総額は1000万円を超えていると明かしています。また、昨年『女子SPA!』に登場した際には、美容ナースになる前の東大病院での病棟勤務の経験や、医療の現場に立ち続けることへの思いを語ってくれました。
今回、融資や貯金など約7000万円を捻出し、完全に1人でクリニックの開業へと踏み切った彼女。ここまで強い意志を持って自身のクリニックを作ろうとしたのはなぜなのか?
インタビューを進めていくと、美容クリニック業界の闇と、それに真っ向から立ち向かい、彼女のモットーである“賢く強く可愛い女”を体現する、意志の強さと思いを知ることができました。
◆自分の理想の美容医療を提供したかった
――クリニックをオープンさせようと思ったきっかけを教えてください。
自分のSNSを見て来てくれる患者さんには、自分が思う美容医療を提供したいという思いが強くて、どこかのクリニックに所属するより、自分でクリニックを作ったほうが自分の納得のいくものを提供できるというのが、“開業するしかない!”と思ったのがきっかけですね。
美容ナースとして7年働いてきて、働くクリニックによって方針が違うから、自分がやりたいと思ってること全部ができる場所はなかったんです。
いろいろな患者さんを診てきたし、いろんなところで働いて、インフルエンサーだけではなく、美容の仕事はずっと続けたいなと思っていたんですけど。
――クリニックの開業を報告するInstagramの投稿では<過去に酷く騙されたこともあり、一度諦めた夢で「クリニックは絶対やらない」とずっと言ってた>とありました。以前、クリニックのプロデュースもされていますが、どういうきっかけだったんでしょうか。
インフルエンサーになりたてのころからクリニックを開業したいという思いはあったんですが、その時に、SNS上で経営コンサルをやっている人から「クリニックのプロデュースをしませんか?」と声がかかって……。
当時は“自分のお金で自分で開業する”と言うところまでは具体的に考えていなくて、とにかく“自分のクリニックです”と言えるものを出したかったんです。
最初は、自分で色々決められるとのことだったのでやったんですけど、実際はいろいろなことをクリーンにやっていける環境ではなくて。
クリニックに導入する機械も、施術のメニューも、決めていいという割には「これってどうなの?」と思うことを最終的に決定されたりと、自分の意に反するような運営方法で、患者さんにもスタッフにも優しくなかったんですよね。
でも、自分がお金を出している訳じゃないから意見を言う権限もないし、会社として上の方針に従わなきゃいけないし、自分のやりたいことをやれる場所じゃないのに、名前だけ使われているような感じがすごかったんです。
スタッフからの不満も私にくるんですけど、私は経営を左右できる立場じゃなかったから、スタッフの思うようにはやらせてあげられないし、でも不満だけはぶつけられるという状況。あまり自分のやりたかった働き方ではないなと言うのは、中に入って思いましたね。
◆経営陣から嫌がらせを受けることも
――なるほど。自分のクリニックだけれども、あくまでプロデュースなので、最終的な決定権はなかったということなんですね。
そうですね。集客についても会社の上から言われたりしていたんですが、「こう言う施術をメニューとして出さないと、患者さんは来ないです」と言っても聞いてもらえないし、集客するために必要なものも用意してもらえなくて。
私のインフルエンサー力だけで患者さんを呼ぶという方針だったのですが、自分が納得のできる美容医療を提供できる環境じゃあまりなかったので、そのクリニックに患者さんを呼びたくなかったんです。ここで働いていてもクリーンじゃないなと思ったこともあって、辞めました。
――当時はみるくナースさんがスタッフにパワハラをしたという噂もSNSで流れていました。真実はどうなんでしょうか。
スタッフが契約内容上の仕事をあまりにもやらないので「やらないんだったら給料下げるよ」と指摘したらパワハラと言われました。実際は辞めたスタッフに家の最寄り駅を掲示板に書かれたり、経営陣の人から今も根も葉もないことを言われたり、今でも嫌がらせを受けていたりします。
◆美容クリニック業界の闇
――大変でしたね……。みるくナースさんのSNSを見ていると、現状の美容クリニック業界の闇みたいなものも感じられます。
法律的にグレーなことをやってるクリニックもすごく多いです。クリニックには医療施設の管理を行う「管理医師」が必ず役職として居る必要があって、保健所に“この人が管理医師です”って届け出を出さなきゃいけないんです。
他の診察するドクターがいても、何かあったら管理医師の責任になるので、ドクターはあまりやりたがらないんですよね。
なので、管理医師をやってくれる人を探すのが結構難しいんですけど、月何十万ももらえるから名義貸しだけしている人もいるんですよ。届け出を出す時に名前だけ借りるみたいな。
でも、それって法律的にアウトなんですよ。週何日以上出勤しなければいけないとか決まりがあるんですけど、守ってないところがものすごく多いですね。
――普段から責任者がクリニックに居ない状態のクリニックもあるってことですね……。恐ろしい……。
開業した先生が管理医師をやっているクリニックはもちろん在中しているんですけど、それ以外のクリニックだと、そういった決まりがあるのに守ってないところがものすごく多いです。
業者の人たちが私に「(管理医師のルールを)守ってるのすごいですね」って言うくらい。でも、私はそういう患者さんから見てもわからないところもきちんとしたいんです。
◆スタッフが気持ちよく長く働ける環境を作っていきたい
――今まで色々なものを目で見てきた経験からですね。
そうですね。バレなきゃいいでしょと言う考えは絶対に嫌。そういうところもちゃんとやっていきたいし、同じようにちゃんとやっていきたいと思っている人と働いていきたいです。
実際に今働いてくれているドクターとナースはそういう人だから、“ちゃんとさせてくれてありがとうございます”って思います。ドクターはめんどくさいからやりたがらない人も多い中、ありがたいです。
――ダメなものをきちんとダメと言ってきた、みるくナースさんだからこその信頼はありますね。
スタッフの私生活に口を出す訳じゃないけど、クリニックの名前を背負っている以上は副業はOKだけど、夜職やギャラ飲み、パパ活は絶対に禁止って言ってます。患者さんが知った時にいい気持ちはしないじゃないですか。
私のクリニックではスタッフが、出産とか結婚とか、キャリアプランの変化があったとしても、気持ちよく長く働ける場所を作っていきたいと思うし、スタッフの一員として働くだけじゃなくて、色々な経験をさせてあげたいなって思います。
私がインフルエンサーの仕事をしてるからこそできることもあると思うので。
◆念願叶ったクリニックで実現したいこと
――SNS上ではひどいクリニックで被害にあった患者さんに積極的に声をかけている印象があるんですが、そういった患者さんの受け入れもしていきたいと思っているんでしょうか。
基本的には施術を受けたクリニックで対応してもらうのが一番いいと思うんですけど、対応してもらえない患者さんを私のクリニックで診てあげたいと思ってます。“最後まで面倒見れないなら最初から受け入れるなよ”って、対応しないクリニックに対しては思いますけどね。
ただ、肌管理でのやけどって、クリニック側のミスによるものも、もちろんありますが、患者さんが診察時に伝えてなかった病気の経歴、その日の肌状態、前日使ってたスキンケアだったりが原因のこともあって、どれだけ正しい数値でやってても出てしまう場合もあるんです。だから、クリニックのミスが100%というわけじゃない。
でも、起きてしまったときにトラブルに発展するのって、信頼関係が成り立ってないからだと思うんです。今まできちんと診てあげてたら、きっとそうはならない。
例えばやけどをしてしまったら、クリニックがきちんと理由を説明して謝罪して、診察して薬を渡してって正しい対処をすれば、患者さんにも落ち度はある可能性もあるから納得してくれると思うんです。
――確かに。正しい対応をしてくれないから、SNSに書いたり、トラブルに発展したりするのでしょうね。
だから、患者さんとの信頼は大事だと思ってます。そのために、私のクリニックではナースの担当制度があって、何かあったときにすぐ相談できるようにしているので……。
SNSに被害として書かれるのは信頼関係が成り立っていないからだし、ものすごくちゃんと対応してくれているクリニックでスタッフがみんな患者さんに寄り添ってくれていれば、何かあってもSNSに書くより、そのクリニックに相談に来てくれると思ってます。
◆ドクターよりも「患者さんに近い存在である」という強み
――美容ナースが経営するクリニックだからこその強みはありますか?
皮膚科はドクターよりもナースのほうが患者さんに近い存在だなと今まで美容皮膚科に勤めた経験から思っています。クリニックによるとは思うんですけど、美容皮膚科を極めているドクターもいるけど、意外とナースの方が肌のことに詳しかったり、対応してる患者さんも数も多いっていう体感があったんです。
だから患者さんに近い存在だからこそ、患者さんも話しやすいし、ナースも寄り添えるという点で、ナースがやる強みはあるんじゃないかなと思っています。
ドクターがクリニックを経営していても、肌のことに詳しいナースがいれば同じようなことはできるかもしれないんですけど、いろんなことを決める権限がドクターではなく私にあるから、より患者に近い存在が、クリニックの方向性や導入する機械、施術のメニューなどを決めて、患者さんに寄り添ったものが提供できるのが強みだと思います。
――自身が整形経験者だからクリニックに活かせたこともあるんでしょうか?
私のクリニックでは外科をやる訳ではないので、整形経験者であることが強みになることはないんですが、やっぱり私は美容医療で努力して綺麗になったと言う経験があるので、綺麗になりたい人の気持ちはすごく理解できるんです。
それって、患者さんからしても、元から綺麗でキラキラしている人より、努力して変わった人の方が安心できるかなって。
人からはそんなに気にならないよって言われることでも、自分にとってはすごく気になる……みたいな、人にはわからない悩みがあることは理解できる。それは皮膚治療だけじゃなく、外科治療も自分自身がたくさんやってきたからこそ分かることでもあるかもしれません。
◆開業資金7000万円は融資と貯金
――クリニックをオープンするにあたって苦労したことはありますか?
苦労だらけです。単純にやることが多すぎてタスク管理ができない。周りの開業している医師の先生からも「コンサル入れないの?」って言われて、入れてないって言うと「信じられない!」って驚かれます。
全部自分でやってるから、大変だろうなとは思っていたんですが、想像以上でした。薬剤を発注するにしても業者の数がものすごく多いし、ネットに載ってない業者もあるので、どこがいいかを相見積とって比較したり。
クリニックに導入するWi-Fiとか、プロバイダの設定とか言われても意味がわからないし、契約書作りとか、保険関係とか、今までやったことのない仕事が次々降ってくるのがキツいですね……。
――クリニックの開業資金は正直どれくらい掛かったんでしょうか?
運転資金込みで約7000万円です。内訳は、銀行と日本政策金融公庫から融資で4400万円を借りて、あと約2500万円はこれまで働いて貯めた自分の貯金です。
融資の4400万円は、正直信じられない金額を借りれたねって言われます。ドクターだと1億円くらいでも借りれるんですが、私はドクターではないから信用に欠けるんですよね。
なので、事業計画書をしっかり書いて、何度も面談してプレゼンして、いつまでにいくら稼いでどのくらい返せるのか、どうしてこのくらい患者がくると思うのかまでしっかり提示して、借りることができました。
◆お金は何が何でも絶対自分で100%出したかった
――ご自分で2500万円貯金されていたというのもすごいですね。
クリニックをやると決めて貯めていたわけではないんですが、“何かしたくなった時のために貯めておこう”というのはずっと昔から思っていました。例えば学校に行きたくなったら通えるように、仕事を辞めたいと思ったらすぐ辞められるように。
クリニックの開業に使うとは思ってなかったですし、こんなにお金がかかるとかは思ってなかったですけどね。お金を理由に自分がやりたいことを諦めたくない。ものを買うことは諦められるけど、何かをやりたいという夢は諦められないじゃないですか。
――強いこだわりがあるんですね。
お金は何が何でも絶対自分で100%出したかったんです。クリニックをやるってなった時に「お金出すよ」っていう大人もたくさんいたし、誰かにお金を出してもらうことだってできたかもしれないけど、そうすると「お金出してもらってるし……」となって、自分がやりたいことができなくなるっていうのが前の経験であったので。
◆普段からコンビニも行かず、ペットボトルも買わない
――2500万円の貯金はかなりの額だと思うのですが、どうやって貯められたんですか?
シンプルにめちゃくちゃ働いてました。クリニックで働く前後はインフルエンサーの仕事をしていたので、休む暇はなかったですね。
誕生日のご飯以外、友達と1回も会わない時がありました。すごく付き合いが悪くなって、そのせいで友達に遊びにも誘われなくなってしまったんですけど、あの時働いてたおかげでお金も貯まりましたね。
――以前のインタビューでも思いましたが、すごく倹約家ですもんね。
普段からタクシーに乗らないし、コンビニにも行かないし、ペットボトルも買わないし、外食も基本的にはしない。友達とのご飯もするならランチ。ブランドものも買わないのも大きいかな。全く持っていないわけじゃないですけど、自分でジュエリーを買ったのもここ1~2年で、27歳くらいまでは何も買ったことなかったです。
――インフルエンサーらしからぬ生活ですね。最後に伝えたい言葉あれば
美容クリニックを探すときに多くの人はSNSなどを使って探すと思うんですけど、自分で行かないと分からないこともたくさんあると思うんです。
安いところがいいわけでもないし、だからと言って安いところが悪いわけでもない。あまり値段にとらわれずにクリニックに行って判断したほうがいいかなと思います。
私のクリニックはすごく安いわけでも、すごく高いわけでもないけど、この額のお金を払う価値があるなと思ってもらえるような価値を提供しようとは思ってるので、是非きてほしいですね。
<文/瑞姫>
【瑞姫】
1994年生まれ。奈良県出身。エンタメメディアでの芸能ライターとしての経験を経て、フリーランスのライターに。主にエンタメ・トレンド系の取材・インタビューを中心に、恋愛コラムの執筆を行っている。フォロワー数4.5万人のTwitterでは恋愛・美容系について発信する、インフルエンサーとしても活動中。漫画と散歩と猫が好き。
Twitter:@mizuki32k