映画『チャチャ』が公開中の伊藤万理華さんと中川大志さんにインタビュー。
本作は、ドラマ「美しい彼」シリーズの酒井麻衣監督によるオリジナル脚本。人目を気にせず、自由奔放な野良猫のように生きてきたイラストレーターのチャチャ(伊藤)と、ミステリアスな青年・樂(中川)が出会ったことで回転していく、一風変わったラブストーリーです。
伊藤さんと中川さんだからこそ成立した本作は、後半、ガラッと趣を変えます。作品の感想とともに、主人公チャチャの印象的なセリフの感想を訊ねると、ふたりの人との付き合い方が見えました。
◆中川さんの樂は「とても魅力的」、チャチャは「伊藤さんにぴったりだな」
――出来上がった作品を観たときに、改めて驚いた部分などはありましたか?
伊藤万理華さん(以下、伊藤):脚本通りに進んではいるんですけど、映像の力強さや美しさ、音の仕掛け、アニメーションの力などで、より変わるんだなと。ただ最初に観たときは、自分の演技がうまくできていないんじゃないかという不安が勝ってしまって、冷静になれませんでした。
脚本を読んだ時にも感じたことですが、改めて観たことがない世界観だと思いました。それから、中川さんが演じたことによって、樂が現実にいるんだと感じました。演じているときからステキだとは思っていましたが、現場で自分の感じていたことがちゃんと映っていてとても魅力的でした。
――中川さん、嬉しそうですね。
中川大志さん(以下、中川):ありがとうございます(照)。今回、伊藤さんとは初共演になるんですけど、台本を頂いたときから、チャチャ役は伊藤さんと伺っていたので、脚本を読んでみて、「チャチャの役は、伊藤さんにぴったりだな」と思っていました。
チャチャは本当に難しいキャラクターだったと思うので、現場では、もっと自分に何かできることがあったんじゃないかと思いつつも、キャラクターとしての距離感もあったので難しかったです。完成した作品は、本当に素晴らしかったですね。間違いなく、2度3度観ても楽しめる、面白い構造の映画になっていると思います。
◆誰かを好きになると、人はここまでむき出しになるんだ(伊藤)
――後半、ガラッと雰囲気の変わる作品です。感情の持って行き方に難しさはありましたか?
伊藤:樂に夢中になればなるほど、チャチャの持っていた個性的な存在感と心情から動く部分がありました。もともとのチャチャ像にそもそも苦戦していたので、本当に難しかったです。樂や他のキャラクターがいることで、チャチャの存在が見えてくるんだと解釈していきました。後半にかけては、誰かを好きになると人はここまでむき出しになるんだというか。チャチャが感じているすれちがいの切なさを体感していきました。
中川:感情の流れについては、自分のなかでイメージしていたんですけど、それのチューニング、出力がすごく難しかったです。前半と後半においての、この映画のリズム、空気感やカラーの変化が、やはり間違いなく面白いポイントのひとつなので、とにかく監督と時間をかけて話していきました。悩んだところではありますが、その作業も楽しかったです。
◆僕は普段、同じ人とばかり一緒にいます(中川)
――チャチャは「樂が嫌いなものを、私が好きで。私が嫌いなものを樂が好きだから、2人いたら丁度いい」と言います。好きなものや価値観が近いから一緒にいる人も多いと思いますが、おふたりはどう感じますか?
伊藤:価値観が違っていても、努力をすれば分かち合える要素はあると思います。自分にない要素と触れ合ったほうが、伝染していくというか、好きになるものが増えるのかなと。そうやって自分は世界を広げていった感覚があるので。私自身は価値観の内容や相手にもよりますが、同じ価値観よりは未知の部分がある人、自分にないものを持っている人のほうが知りたくなります。
中川:僕は普段、同じ人とばかり一緒にいます。気心の知れた友達、家族。それが居心地いいんですけど、だからといって価値観が一緒というわけではないですね。
仕事もプライベートも、人と関わらないと生きていけないわけですが、僕も、自分にできないことができる人や、自分にないものを持っている人にはやっぱり興味がわくし、どういう感性なんだろう、どういう感覚なんだろうと、知りたくなります。
◆友達になるかは、その人のまとっている空気感で分かる(伊藤)
――どんな人に居心地の良さを感じがちですか?
中川:自分とテンポ感の似ている人ですかね。会話のテンポとか空気感って、あると思うんです。チャチャと樂のふたりにも言えると思うんですけど、そういう動物的な嗅覚って、たぶんみんな持ってると思うんですよね。考えとか、価値観とか、それ以前の意識的なところでの居心地の良さというか。趣味が同じとか、そういうのももちろんいいんですけど、僕の場合は、あまりにぎやかな場所は好きではないので、マイペースな、ゆったりした空気感が好きです。
――伊藤さんはアーティストとしていろんな方と組まれることも多いです。刺激だけではなく、居心地の良さで関係が続いたりしますか?
伊藤:初めはその人の作っているものに惹かれてご一緒しようと思うんですけど、お友達になったりするかは、その人自身のまとっている空気感でなんとなく分かります。そこの嗅覚は結構はっきり持っている方です。
価値観が違ったり、作っているものが違えど同じテンポ感だったり。無意識にかもしれないけれど割と選んでいるんだろうな、と思います。居心地が悪かったら、結構すぐにわかってしまうタイプです(笑)。
◆ふたりは今「好きな道」で生きられている?
――チャチャは「人目を気にせず、好きに生きる」をモットーにしています。おふたりは、はたから見ていて、少なくとも「好きな道」で生きているように映ります。
伊藤:そうですね。好きな道で生きていると思います。一度やりたいと思ったら、衝動的に動いてしまうところがあります。
中川:僕も好きな道かどうかと聞かれたら、好きな道です。裏方の仕事にも興味があるんですけど、基本的には好きなことをやらせてもらっています。
――最後に改めて、公開中の『チャチャ』にひと言お願いします。
伊藤:不思議な、仕掛けのある面白い映像になっています。脚本の段階から、ジャンルレスな世界観だと思っていましたが、映像で観てもやはり面白い世界だと感じました。観てくださったみなさんの感想が楽しみです。
中川:酒井監督とは「初めまして」でした。現場で監督の頭の中を想像しながら演じていたつもりでしたが、完成したものを観て、音や光、編集のマジックというか、映像のマジック、仕掛けがたくさん詰まっていて「なるほどな」と思いました。まだ観ていない方は、どんな作品なのか、なかなか想像がつかないと思いますが、ぜひ映画を観ていただけたらと思います。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
(C) 2024「チャチャ」製作委員会
新宿ピカデリーほかにて公開中
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
本作は、ドラマ「美しい彼」シリーズの酒井麻衣監督によるオリジナル脚本。人目を気にせず、自由奔放な野良猫のように生きてきたイラストレーターのチャチャ(伊藤)と、ミステリアスな青年・樂(中川)が出会ったことで回転していく、一風変わったラブストーリーです。
伊藤さんと中川さんだからこそ成立した本作は、後半、ガラッと趣を変えます。作品の感想とともに、主人公チャチャの印象的なセリフの感想を訊ねると、ふたりの人との付き合い方が見えました。
◆中川さんの樂は「とても魅力的」、チャチャは「伊藤さんにぴったりだな」
――出来上がった作品を観たときに、改めて驚いた部分などはありましたか?
伊藤万理華さん(以下、伊藤):脚本通りに進んではいるんですけど、映像の力強さや美しさ、音の仕掛け、アニメーションの力などで、より変わるんだなと。ただ最初に観たときは、自分の演技がうまくできていないんじゃないかという不安が勝ってしまって、冷静になれませんでした。
脚本を読んだ時にも感じたことですが、改めて観たことがない世界観だと思いました。それから、中川さんが演じたことによって、樂が現実にいるんだと感じました。演じているときからステキだとは思っていましたが、現場で自分の感じていたことがちゃんと映っていてとても魅力的でした。
――中川さん、嬉しそうですね。
中川大志さん(以下、中川):ありがとうございます(照)。今回、伊藤さんとは初共演になるんですけど、台本を頂いたときから、チャチャ役は伊藤さんと伺っていたので、脚本を読んでみて、「チャチャの役は、伊藤さんにぴったりだな」と思っていました。
チャチャは本当に難しいキャラクターだったと思うので、現場では、もっと自分に何かできることがあったんじゃないかと思いつつも、キャラクターとしての距離感もあったので難しかったです。完成した作品は、本当に素晴らしかったですね。間違いなく、2度3度観ても楽しめる、面白い構造の映画になっていると思います。
◆誰かを好きになると、人はここまでむき出しになるんだ(伊藤)
――後半、ガラッと雰囲気の変わる作品です。感情の持って行き方に難しさはありましたか?
伊藤:樂に夢中になればなるほど、チャチャの持っていた個性的な存在感と心情から動く部分がありました。もともとのチャチャ像にそもそも苦戦していたので、本当に難しかったです。樂や他のキャラクターがいることで、チャチャの存在が見えてくるんだと解釈していきました。後半にかけては、誰かを好きになると人はここまでむき出しになるんだというか。チャチャが感じているすれちがいの切なさを体感していきました。
中川:感情の流れについては、自分のなかでイメージしていたんですけど、それのチューニング、出力がすごく難しかったです。前半と後半においての、この映画のリズム、空気感やカラーの変化が、やはり間違いなく面白いポイントのひとつなので、とにかく監督と時間をかけて話していきました。悩んだところではありますが、その作業も楽しかったです。
◆僕は普段、同じ人とばかり一緒にいます(中川)
――チャチャは「樂が嫌いなものを、私が好きで。私が嫌いなものを樂が好きだから、2人いたら丁度いい」と言います。好きなものや価値観が近いから一緒にいる人も多いと思いますが、おふたりはどう感じますか?
伊藤:価値観が違っていても、努力をすれば分かち合える要素はあると思います。自分にない要素と触れ合ったほうが、伝染していくというか、好きになるものが増えるのかなと。そうやって自分は世界を広げていった感覚があるので。私自身は価値観の内容や相手にもよりますが、同じ価値観よりは未知の部分がある人、自分にないものを持っている人のほうが知りたくなります。
中川:僕は普段、同じ人とばかり一緒にいます。気心の知れた友達、家族。それが居心地いいんですけど、だからといって価値観が一緒というわけではないですね。
仕事もプライベートも、人と関わらないと生きていけないわけですが、僕も、自分にできないことができる人や、自分にないものを持っている人にはやっぱり興味がわくし、どういう感性なんだろう、どういう感覚なんだろうと、知りたくなります。
◆友達になるかは、その人のまとっている空気感で分かる(伊藤)
――どんな人に居心地の良さを感じがちですか?
中川:自分とテンポ感の似ている人ですかね。会話のテンポとか空気感って、あると思うんです。チャチャと樂のふたりにも言えると思うんですけど、そういう動物的な嗅覚って、たぶんみんな持ってると思うんですよね。考えとか、価値観とか、それ以前の意識的なところでの居心地の良さというか。趣味が同じとか、そういうのももちろんいいんですけど、僕の場合は、あまりにぎやかな場所は好きではないので、マイペースな、ゆったりした空気感が好きです。
――伊藤さんはアーティストとしていろんな方と組まれることも多いです。刺激だけではなく、居心地の良さで関係が続いたりしますか?
伊藤:初めはその人の作っているものに惹かれてご一緒しようと思うんですけど、お友達になったりするかは、その人自身のまとっている空気感でなんとなく分かります。そこの嗅覚は結構はっきり持っている方です。
価値観が違ったり、作っているものが違えど同じテンポ感だったり。無意識にかもしれないけれど割と選んでいるんだろうな、と思います。居心地が悪かったら、結構すぐにわかってしまうタイプです(笑)。
◆ふたりは今「好きな道」で生きられている?
――チャチャは「人目を気にせず、好きに生きる」をモットーにしています。おふたりは、はたから見ていて、少なくとも「好きな道」で生きているように映ります。
伊藤:そうですね。好きな道で生きていると思います。一度やりたいと思ったら、衝動的に動いてしまうところがあります。
中川:僕も好きな道かどうかと聞かれたら、好きな道です。裏方の仕事にも興味があるんですけど、基本的には好きなことをやらせてもらっています。
――最後に改めて、公開中の『チャチャ』にひと言お願いします。
伊藤:不思議な、仕掛けのある面白い映像になっています。脚本の段階から、ジャンルレスな世界観だと思っていましたが、映像で観てもやはり面白い世界だと感じました。観てくださったみなさんの感想が楽しみです。
中川:酒井監督とは「初めまして」でした。現場で監督の頭の中を想像しながら演じていたつもりでしたが、完成したものを観て、音や光、編集のマジックというか、映像のマジック、仕掛けがたくさん詰まっていて「なるほどな」と思いました。まだ観ていない方は、どんな作品なのか、なかなか想像がつかないと思いますが、ぜひ映画を観ていただけたらと思います。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
(C) 2024「チャチャ」製作委員会
新宿ピカデリーほかにて公開中
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi