10月24日、歌手で子役の「ののちゃん」こと村方乃々佳が、ミツカン「カンタン酢トマト大試食会」に登場。
◆自ら商品ソングを売り込み共演者とからむ、進化した子供タレント芸
商品を使ったミネストローネを試食して「野菜嫌いのお子様にも絶対に合うと思う」とコメントしたかと思いきや、同席した女性4人組のお笑いグループ「ぼる塾」とも、“まぁねー”でやり取りしてみせる器用さまで披露し、進化した子供タレント芸で楽しませてくれました。
「すごくおいしかったから、カンタン酢トマトの歌を歌いたいです」と自ら売り込むののちゃんに、ミツカンの担当者が快諾したところでイベントはお開きに。
最近では自身の公式インスタグラムで腕にタトゥーっぽい落書きをした写真も波紋を呼びましたが、相変わらず注目を集めているようです。
そんなののちゃんも、早いものでもう6歳。2021年、2歳のときに歌った「いぬのおまわりさん」が大バズりすると、ミニアルバム「ののちゃん 2さい こどもうた」をリリース。2023年には史上最年少の童謡歌手としてギネス認定されたのです。
音楽番組やバラエティ番組にも多数出演し、童謡のみならず「たしかなこと」(小田和正)や「裸の心」(あいみょん)などのJポップまで歌いこなす姿が多くの大人たちの心をつかみました。
最近ではテレビ番組で耳にする機会が減りましたが、自身のYouTubeチャンネルやレコード会社の公式動画では最新版の歌をチェックできます。
「ぼる塾」と流暢(りゅうちょう)な絡みを見せるほどに成長したののちゃんの歌は、いまどんなことになっているのでしょうか?
◆期待されていることを理解してのサービス精神
まず自身のYouTubeチャンネル。8ヶ月前に更新された「ハローキティ」が一番新しい動画です。お母様といっしょにカラオケで歌っています。
一見、あの溌剌(はつらつ)とした子供らしさ、言葉を発音すること自体が楽しくて仕方ないといったアタック感の強さは変わっていないように思われます。
しかし、そこにある種の客観性と自重する力が働いていることは見逃せません。
つまり、2歳の歌声を期待されていることを6歳の子供なりに理解してしまっている。頭で理解できてしまっている分だけ、勢いが削がれている。ののちゃんの中で、サービス精神とストッパーがせめぎ合っている、きゅうくつな歌になっているのですね。
“成長したのだからそれぐらいの気をつかえるのも当たり前じゃないか”と思う人もいるかもしれません。しかし、それは周りの顔をうかがうような、びくびくとした処世術なのではないでしょうか。
2歳のときみたいになんて恥ずかしくて歌えるわけがないでしょ、という健全に逆らう子供らしさがあまり感じられない。そこに、息苦しさを感じるのです。
◆「子供」を職人芸で表現せざるを得なくなった辛さ
「三百六十五歩のマーチ」(水前寺清子)のカバーを聞くと、その息苦しさが定着してしまっているようです。
全力で口角をあげ、言葉の最初でほんの少しだけ音程を外す愛嬌を忘れない。2歳の無意識が生み出した奇跡のバランスを崩してはいけないのだと、そこから成長した本人が感じてしまう不条理。このスタイルで歌う限り、ののちゃんは成長すればするほど、幼さを無理に演じなければいけなくなってしまうでしょう。
早く出来すぎた完成形に向かって、後ろ歩きをしているような歌だからです。
ののちゃんの辛さは、誰よりもていねいに「子供」という記号を職人芸で表現せざるを得なくなった子供の姿にあるのだと思います。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
◆自ら商品ソングを売り込み共演者とからむ、進化した子供タレント芸
商品を使ったミネストローネを試食して「野菜嫌いのお子様にも絶対に合うと思う」とコメントしたかと思いきや、同席した女性4人組のお笑いグループ「ぼる塾」とも、“まぁねー”でやり取りしてみせる器用さまで披露し、進化した子供タレント芸で楽しませてくれました。
「すごくおいしかったから、カンタン酢トマトの歌を歌いたいです」と自ら売り込むののちゃんに、ミツカンの担当者が快諾したところでイベントはお開きに。
最近では自身の公式インスタグラムで腕にタトゥーっぽい落書きをした写真も波紋を呼びましたが、相変わらず注目を集めているようです。
そんなののちゃんも、早いものでもう6歳。2021年、2歳のときに歌った「いぬのおまわりさん」が大バズりすると、ミニアルバム「ののちゃん 2さい こどもうた」をリリース。2023年には史上最年少の童謡歌手としてギネス認定されたのです。
音楽番組やバラエティ番組にも多数出演し、童謡のみならず「たしかなこと」(小田和正)や「裸の心」(あいみょん)などのJポップまで歌いこなす姿が多くの大人たちの心をつかみました。
最近ではテレビ番組で耳にする機会が減りましたが、自身のYouTubeチャンネルやレコード会社の公式動画では最新版の歌をチェックできます。
「ぼる塾」と流暢(りゅうちょう)な絡みを見せるほどに成長したののちゃんの歌は、いまどんなことになっているのでしょうか?
◆期待されていることを理解してのサービス精神
まず自身のYouTubeチャンネル。8ヶ月前に更新された「ハローキティ」が一番新しい動画です。お母様といっしょにカラオケで歌っています。
一見、あの溌剌(はつらつ)とした子供らしさ、言葉を発音すること自体が楽しくて仕方ないといったアタック感の強さは変わっていないように思われます。
しかし、そこにある種の客観性と自重する力が働いていることは見逃せません。
つまり、2歳の歌声を期待されていることを6歳の子供なりに理解してしまっている。頭で理解できてしまっている分だけ、勢いが削がれている。ののちゃんの中で、サービス精神とストッパーがせめぎ合っている、きゅうくつな歌になっているのですね。
“成長したのだからそれぐらいの気をつかえるのも当たり前じゃないか”と思う人もいるかもしれません。しかし、それは周りの顔をうかがうような、びくびくとした処世術なのではないでしょうか。
2歳のときみたいになんて恥ずかしくて歌えるわけがないでしょ、という健全に逆らう子供らしさがあまり感じられない。そこに、息苦しさを感じるのです。
◆「子供」を職人芸で表現せざるを得なくなった辛さ
「三百六十五歩のマーチ」(水前寺清子)のカバーを聞くと、その息苦しさが定着してしまっているようです。
全力で口角をあげ、言葉の最初でほんの少しだけ音程を外す愛嬌を忘れない。2歳の無意識が生み出した奇跡のバランスを崩してはいけないのだと、そこから成長した本人が感じてしまう不条理。このスタイルで歌う限り、ののちゃんは成長すればするほど、幼さを無理に演じなければいけなくなってしまうでしょう。
早く出来すぎた完成形に向かって、後ろ歩きをしているような歌だからです。
ののちゃんの辛さは、誰よりもていねいに「子供」という記号を職人芸で表現せざるを得なくなった子供の姿にあるのだと思います。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4