11月に入り、今年も全国各地の大学で文化祭・学園祭が行われる中で、お笑いコンビ・オズワルドを中心に、「学園祭で手抜きをしている芸人がいる」と真意不明の告発がSNSで飛び交い、大騒動を巻き起こしている。
◆オズワルドやパンクブーブーらにネットで手抜き告発。芸人が反論
今回の騒動をまとめると、X(旧ツイッター)上で「オズワルドがとある学園祭で手を抜いていた」「ネタもやらずにダラダラトークだけだった」と証言するユーザーが登場。これに呼応するかのように、さまざまな芸人の名前を実名で取り上げ、学園祭や地方営業で手を抜いていたと告発する動きが出始めた。
さらに、M-1王者であるパンクブーブーも学園祭で過去に手抜きをしていたとやり玉に挙げるユーザーも出現し、収集がつかない状況になった。
この騒動に、当事者であるオズワルド・伊藤俊介が自身のXで「しっかりネタやって鼻血出るくらい滑ったんだよ。芸風的に勘違いされやすいけども」と配信し、さらに相方の畠中悠は「学祭でネタは絶対にやってます! 手も抜きませんが手を抜いてるくらいつまんなかったならすみません!」とコメントを発表。
他の芸人も手抜きはしていないとSNSでコメントを出しているが、一般ユーザーの間では芸人を擁護する投稿と、実際に手抜きをされたという投稿が入り乱れることに。
今回、なぜここまで騒動が大きくなったのか? 過去に、地方のテレビ局に数年間在籍したことがあり、実際に芸人の地方営業の様子を間近に見てきた筆者が、問題点と裏側を紹介したいと思う。
◆文化祭・学園祭という特殊なステージが生み出す難しさ
芸人が参加する文化祭・学園祭は主に大学がメインで、一部の私立高校などが芸人を呼ぶことがある。大学の場合は実行委員が芸人をブッキングすることが多く、高校の場合は教師も参加し、各事務所に要請を行うことがほとんどだ。
中にはイベント会社を間に挟むこともあるだろうが、芸人にとって特殊な舞台になることは間違いないのが文化祭・学園祭だ。
「ルミネtheよしもと」などに代表される劇場の舞台の場合、運営はすべてプロでタイムスケジュールもしっかり決まり、芸人も登板する舞台によってネタの選定ができる。だが、文化祭・学園祭においては、お笑いの舞台に慣れているスタッフが勢ぞろいしているわけではない。
学生が主体で舞台を作るので、プロが運営するステージとは違ったチグハグさが出てしまうのは当然のことだ。そういったステージではやりやすい時間配分でないこともあり、芸人は臨機応変に盛り上げなくてはならなくなる。
ちなみに、筆者が仲の良い芸人に聞いたことがあるが、一緒に参加するコンビが遅れたことで、学園祭のステージにて予定より1時間近く持ち時間が伸びたことがあったと聞く。そうなった場合、芸人も戸惑い結果として見ている観客からしたら「手抜き」だと受け取られる場面も出てくるだろう。
また、コントが主軸の芸人たちは、小道具の関係もあり、ステージでネタを満足に披露できないケースもある。そうなると、テレビでネタを見ていた観客は面白くなく手抜きだと感じるだろう。
以上を踏まえると、文化祭・学園祭というのはかなり難しいステージになる。踏まえれば、SNS上で書き込まれている批判は、話半分で見るほうが良いことは間違いないだろう。
◆芸人にとってもおいしい地方営業、手抜きすれば呼ばれなくなる
また、文化祭・学園祭とは違うが、今回は地方営業についても多くの芸人が賛否の対象になっている。
地方営業はお祭りや会社のイベントなど多岐にわたるが、正直言って芸人にとってギャラ的においしい仕事になる。よほどポリシーがある芸人以外は、地方営業は絶対にやりたい仕事の一つであるのは間違いない。
実際、筆者が関係した地方自治体も絡んだイベントでは、テレビ出演より高額なギャラが芸人に支払われたケースもある。そう考えると、芸人が手を抜くというのは考えづらいというのが本音だ。
ただ、地方営業の場合は、ネタやトークだけでなく色々と制限がかかる場合もある。例えば、その企業のPRのためお客さんと景品をかけたじゃんけん大会をしたり、御当地の特産物をネタに混ぜてくれと無理難題を言うケースも。
芸人は自由にネタをすることができなくなる事情もあり、結果それを見て、本ネタではない等の理由で、手抜きをしたと感じる客も出てしまう現状だ。
◆SNSの情報を鵜呑みにするのは危険
今回のオズワルドとパンクブーブーへの批判を受け、多くの人がSNSで芸人を批評している。特にパンクブーブーに関しては、X上では批判的なメッセージで溢れている印象だ。
しかし、パンクブーブーは本当に手抜きをしたのだろうか? ちなみに筆者は吉本興業から一銭も貰っていないが、2人のステージにかける思いを知っているだけに「手抜き」ではなく、何かしらうまく噛み合わなかった場面があったのではないかと考える。
芸人との仕事が多かった筆者からすると、「大きなステージだから本気を出す、地方の営業だから手を抜く」という芸人はいなかったと記憶する。
そもそも、前述したように地方営業および文化祭・学園祭のギャラの良さは10年以上変わっていないので、手を抜いて干される危険を冒す芸人は皆無ではないだろうか?
もちろん、ステージがつまらなかったと報告するのは見た人の自由だ。ただ、あまり無責任に「手抜きだ、印象が悪かった」とSNSで書き込むのはかなり危険。そして、そういった投稿に脊髄反射的に批判を重ねる行為はさらに危険だということを、理解しないといけない。
<文/ゆるま小林>
【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆
◆オズワルドやパンクブーブーらにネットで手抜き告発。芸人が反論
今回の騒動をまとめると、X(旧ツイッター)上で「オズワルドがとある学園祭で手を抜いていた」「ネタもやらずにダラダラトークだけだった」と証言するユーザーが登場。これに呼応するかのように、さまざまな芸人の名前を実名で取り上げ、学園祭や地方営業で手を抜いていたと告発する動きが出始めた。
さらに、M-1王者であるパンクブーブーも学園祭で過去に手抜きをしていたとやり玉に挙げるユーザーも出現し、収集がつかない状況になった。
この騒動に、当事者であるオズワルド・伊藤俊介が自身のXで「しっかりネタやって鼻血出るくらい滑ったんだよ。芸風的に勘違いされやすいけども」と配信し、さらに相方の畠中悠は「学祭でネタは絶対にやってます! 手も抜きませんが手を抜いてるくらいつまんなかったならすみません!」とコメントを発表。
他の芸人も手抜きはしていないとSNSでコメントを出しているが、一般ユーザーの間では芸人を擁護する投稿と、実際に手抜きをされたという投稿が入り乱れることに。
今回、なぜここまで騒動が大きくなったのか? 過去に、地方のテレビ局に数年間在籍したことがあり、実際に芸人の地方営業の様子を間近に見てきた筆者が、問題点と裏側を紹介したいと思う。
◆文化祭・学園祭という特殊なステージが生み出す難しさ
芸人が参加する文化祭・学園祭は主に大学がメインで、一部の私立高校などが芸人を呼ぶことがある。大学の場合は実行委員が芸人をブッキングすることが多く、高校の場合は教師も参加し、各事務所に要請を行うことがほとんどだ。
中にはイベント会社を間に挟むこともあるだろうが、芸人にとって特殊な舞台になることは間違いないのが文化祭・学園祭だ。
「ルミネtheよしもと」などに代表される劇場の舞台の場合、運営はすべてプロでタイムスケジュールもしっかり決まり、芸人も登板する舞台によってネタの選定ができる。だが、文化祭・学園祭においては、お笑いの舞台に慣れているスタッフが勢ぞろいしているわけではない。
学生が主体で舞台を作るので、プロが運営するステージとは違ったチグハグさが出てしまうのは当然のことだ。そういったステージではやりやすい時間配分でないこともあり、芸人は臨機応変に盛り上げなくてはならなくなる。
ちなみに、筆者が仲の良い芸人に聞いたことがあるが、一緒に参加するコンビが遅れたことで、学園祭のステージにて予定より1時間近く持ち時間が伸びたことがあったと聞く。そうなった場合、芸人も戸惑い結果として見ている観客からしたら「手抜き」だと受け取られる場面も出てくるだろう。
また、コントが主軸の芸人たちは、小道具の関係もあり、ステージでネタを満足に披露できないケースもある。そうなると、テレビでネタを見ていた観客は面白くなく手抜きだと感じるだろう。
以上を踏まえると、文化祭・学園祭というのはかなり難しいステージになる。踏まえれば、SNS上で書き込まれている批判は、話半分で見るほうが良いことは間違いないだろう。
◆芸人にとってもおいしい地方営業、手抜きすれば呼ばれなくなる
また、文化祭・学園祭とは違うが、今回は地方営業についても多くの芸人が賛否の対象になっている。
地方営業はお祭りや会社のイベントなど多岐にわたるが、正直言って芸人にとってギャラ的においしい仕事になる。よほどポリシーがある芸人以外は、地方営業は絶対にやりたい仕事の一つであるのは間違いない。
実際、筆者が関係した地方自治体も絡んだイベントでは、テレビ出演より高額なギャラが芸人に支払われたケースもある。そう考えると、芸人が手を抜くというのは考えづらいというのが本音だ。
ただ、地方営業の場合は、ネタやトークだけでなく色々と制限がかかる場合もある。例えば、その企業のPRのためお客さんと景品をかけたじゃんけん大会をしたり、御当地の特産物をネタに混ぜてくれと無理難題を言うケースも。
芸人は自由にネタをすることができなくなる事情もあり、結果それを見て、本ネタではない等の理由で、手抜きをしたと感じる客も出てしまう現状だ。
◆SNSの情報を鵜呑みにするのは危険
今回のオズワルドとパンクブーブーへの批判を受け、多くの人がSNSで芸人を批評している。特にパンクブーブーに関しては、X上では批判的なメッセージで溢れている印象だ。
しかし、パンクブーブーは本当に手抜きをしたのだろうか? ちなみに筆者は吉本興業から一銭も貰っていないが、2人のステージにかける思いを知っているだけに「手抜き」ではなく、何かしらうまく噛み合わなかった場面があったのではないかと考える。
芸人との仕事が多かった筆者からすると、「大きなステージだから本気を出す、地方の営業だから手を抜く」という芸人はいなかったと記憶する。
そもそも、前述したように地方営業および文化祭・学園祭のギャラの良さは10年以上変わっていないので、手を抜いて干される危険を冒す芸人は皆無ではないだろうか?
もちろん、ステージがつまらなかったと報告するのは見た人の自由だ。ただ、あまり無責任に「手抜きだ、印象が悪かった」とSNSで書き込むのはかなり危険。そして、そういった投稿に脊髄反射的に批判を重ねる行為はさらに危険だということを、理解しないといけない。
<文/ゆるま小林>
【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆