女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「義実家・家族」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2022年10月12日 記事は取材時の状況)
==========
令和になっても、「女性は家庭を守るもの」「男子厨房に入らず(家事や炊事は女性の仕事)」など、時代錯誤とも言える謎ルールは今も一部で存在します。
朝4時には起きて家事をするという水野美奈さん(仮名・36歳)も、そんな厳しい謎ルールに困惑した一人です。
都内から水野さんが嫁いだ先は、北関東で野菜やお米を作っている農家でした。
「“農家の嫁”って、当たり前のように労働力として扱われるんです。農作業そのものより、農作業をしている家族の身の回りの世話や家事など、当然のようにフォローするというか……しかも旦那は長男だからなおさら大変でした」
この記事では、あえて「嫁」という言葉をそのまま使いながら、彼女たちの実態をお伝えします。
◆「休みだもん寝てていいわよ~、私たちは働くけど!」
その「当たり前」の内容はどういうものでしょうか。
「私たちは二世帯住宅で義父母と同居していて、夫の弟家族は徒歩15分くらいのところに住んでいます。私は地方銀行の契約社員として働き、義理の弟の妻(B子さん)は自宅で英会話教室を開いていて。つまり、私たちは自分の仕事も持っています。
でも休みの日になると、夜明け前に義理の母から恐怖のLINEが届くんですよ。
『まだ暗いから寝てていいわよ~、私たち(義父母)は畑に行くけど』
『休日なんだからゆっくりしてね。私たちには休みはないけどね(笑)』って。
あくまでも自然体で微笑みながら、遠回しに嫌みとディス(悪口)を混ぜ込んでくる様子が目に浮かぶような、絶妙にイライラするメッセージが連投されるんです」
◆畑の手伝いに育児に仕事……! 目の回る忙しさ
さらに追い打ちをかけるように、
「お昼の準備まで手が回りません(汗の絵文字)。だれかお茶やお茶菓子を届けてくれないかな~?」というメッセージが、10時、12時、15時の休憩時間のたびに送られてくるとか。
女性陣はそれぞれのお子さんたちもまだ幼く、自分の家の家事や育児に追われながら、夫と分担して分刻みの怒涛(どとう)のスケジュールでなんとかこなしているそうです。
「だから土日は私とB子さんでなんとかシフトを組んで、必死に手伝いに行っています。でももっと大変なのは、田植えや稲の収穫の時期なんです……」
田植えの時期になると、早朝から活動する義父母に合わせて4時起きは当たり前。地方の農家では「親族一丸となって田植えをする」という暗黙のルールが当然のようにあって、嫁は誰よりも早く起きることが求められるとか。
◆家政婦と清掃業者とウーバー配達員を同時にやってる
「4時に起きて義実家に行って、B子さんと合流してすぐ朝ごはん作りを開始します。三家族分、大体10人分の朝ごはんを作って、日中に田植えをするときの飲み物としてペットボトルのお茶やお菓子を買ってくる。そして家に帰って子どもたちを起こして身支度させて、義実家との往復をしていると、あっという間に時間が経ってしまいます」
さらに恐ろしいのはここからです。
「『田植えは親族総出』なので、近所の叔父や叔母、ご近所さんなど、助け合い・お互いさまの精神でものすごい人数が集まるんですよ。田植え自体は機械でやりますが、苗を車で何往復もして運んだり、何かと人手が必要みたいで。
それで義実家にも人がたくさん来るから、掃除も念入りにやるように言われるんです。嫁たちの仕事は、日中は20人以上のお弁当を手配して運んで、お茶を用意して、義実家の掃除を徹底的にやる。
家政婦と清掃業者として本気で働きながら、同時にウーバーイーツの仕事もしているくらい激務でした」
うわあ……。
◆夜の「田植えお疲れ様会」でも女性たちは奴隷
「そして、なにより問題なのは夜です。“田植えの慰労会”として、そのまま大人数で宴会に突入するんです。食事やお酒の準備は、すべて嫁二人でやれと担当が決まっています。
そして宴会中に女性陣は一切座ることもできずに、ひたすら料理を作ったり、お酒を運んだり、お酌をしたり、バタバタと駆け回っています。
もう本当に疲労困憊。私たちだって慰労され、労われるべきじゃないのかと……。でも朝から動いているお義母さんも文句を言わず台所でバタバタと働いているので、なにも言えないんですよね。
『ああ、これが日本の悪しき習慣か』と絶望しながら、怒りを込めて義父のビールを泡だらけにして注いでやる。もう全部泡まみれ。でもこの怒りと疲れは泡のようには消えないんですよ」
取材中も当時の様子を思い出したのか、何度も眉間にふか~いシワを寄せ、語気を強めていた水野さん。心中お察しします……。
◆ぶち切れた嫁たちは、ついに“逆襲”を企てる
一日中動き回って疲弊し、足はむくみまくって膨張した棒のような状態。そして台所は男子禁制! とばかりに、男性陣は一切手伝わない。こんな生活が3年ほど続き、今年の6月の田植えで4回目を迎えることに。
ただ今年は“ある異変”が起きたそうです。
「『起きた』というより、起こしたんです。台所は男子禁制! で、男性陣は食って飲んで騒いで、女性陣は奴隷のごとくこき使われるなんて、今の時代さすがにおかしいですからね。しかも男性陣が自分たちで、『男は台所に入れないから、手伝えない~(笑)』とか言っちゃうんですよ。ここは昭和飛び越えて、江戸時代かよ! って。
でもただ反論するだけじゃ気が済まないし、なにより面白くない。そこでBさんと考えたのが『酒池肉林作戦』でした」
酒池肉林(しゅちにくりん)って、贅沢の限りを尽くした宴会のことですよね。今の女性陣たちの状況とは、真逆のような気がしますが……。
◆スパークリングで乾杯! 台所でゲリラ女子会
「宴会のときの『台所は男子禁制』を逆に利用したんです。宴会の予算はもらっていたので、ちょっといいスパークリングワインを買って、デパ地下の名店オードブルを揃えて、塩水ウニやレバーペーストをお取り寄せして。シャインマスカットも大きいヤツを二房買いました。
そして、男性陣の宴会の方は、お弁当チェーン店の激安オードブル4人前を二つと、発泡酒。それを段ボールでドーン! と居間において、『もう自由にやっちゃってくださいね♪』と言い放って台所に直行です」
台所は水野さんとB子さん、そして子どもたちも呼んで、飲めや歌えの大騒ぎ状態に。
「途中でお義母さんや叔母さんたちがのぞきにきて、『ちょっと! 何やってるの!』とお説教されかけましたが……」
絶対怒られますよね。どうやって乗り切ったんですか?
◆B子の“策略”で叔母も義母も涙目に
「今までの理不尽な扱いを訴えて、さらに『お義母さんたちは、若い頃、もっと苦労されたんじゃないですか……?』と、B子さんが相手をホロっとさせるような、情に訴えかけるように声をかけ続けたんです(笑)。そしたら、『あなたたちにも、本当に苦労をかけたわね(泣)』『今までごめんなさい』と叔母も義母も涙目になり、あっけなく陥落」
B子さん、なんという策士……!
「お酒も入って大グチ大会になり、義母の許可をもらって義父のお気に入りの超高級ブランデーも飲みまくり。
台所でのゲリラ飲み会が盛りあがる一方で、居間の宴会は普段よりランクダウンした食事とお酒でなんとも微妙な雰囲気に。なにより、動き回る女性たちがいないから、男性陣はご不満みたいでした」
◆「男子禁制なんでしょ?」男性たちはシャットアウト
そして、義父が珍しく台所にやってきたそうで……
「『なにやってんだ~?』『こっちに来んのか』と声をかけてきて、台所を開けようとしたんです。でも義母がぴしゃっと手で扉を閉めて、『ここは男子禁制なんでしょ!!』と一言。さらにスライドの扉を、ほうきでつっかえ棒にしちゃって、どうやっても入ってこれないようにバリケードまで作っていました。
追い打ちをかけるように叔母が、『こっちはこっちで、普段旦那や男衆にたまってる不満を吐き出しているんです! そんな中に入りたい!?』と一喝して追い返してしまって(笑)。男尊女卑や、女性だけこき使われる文化には心底嫌気がさしますが、こうやって楽しみながら、私たちの代でその習慣を変えていきたいです」
<取材・文&イラスト 赤山ひかる>
【赤山ひかる】
奇想天外な体験談、業界の裏話や、社会問題などを取材する女性ライター。週刊誌やWebサイトに寄稿している。元芸能・張り込み班。これまでの累計取材人数は1万人を超える。無類の猫好き。
==========
令和になっても、「女性は家庭を守るもの」「男子厨房に入らず(家事や炊事は女性の仕事)」など、時代錯誤とも言える謎ルールは今も一部で存在します。
朝4時には起きて家事をするという水野美奈さん(仮名・36歳)も、そんな厳しい謎ルールに困惑した一人です。
都内から水野さんが嫁いだ先は、北関東で野菜やお米を作っている農家でした。
「“農家の嫁”って、当たり前のように労働力として扱われるんです。農作業そのものより、農作業をしている家族の身の回りの世話や家事など、当然のようにフォローするというか……しかも旦那は長男だからなおさら大変でした」
この記事では、あえて「嫁」という言葉をそのまま使いながら、彼女たちの実態をお伝えします。
◆「休みだもん寝てていいわよ~、私たちは働くけど!」
その「当たり前」の内容はどういうものでしょうか。
「私たちは二世帯住宅で義父母と同居していて、夫の弟家族は徒歩15分くらいのところに住んでいます。私は地方銀行の契約社員として働き、義理の弟の妻(B子さん)は自宅で英会話教室を開いていて。つまり、私たちは自分の仕事も持っています。
でも休みの日になると、夜明け前に義理の母から恐怖のLINEが届くんですよ。
『まだ暗いから寝てていいわよ~、私たち(義父母)は畑に行くけど』
『休日なんだからゆっくりしてね。私たちには休みはないけどね(笑)』って。
あくまでも自然体で微笑みながら、遠回しに嫌みとディス(悪口)を混ぜ込んでくる様子が目に浮かぶような、絶妙にイライラするメッセージが連投されるんです」
◆畑の手伝いに育児に仕事……! 目の回る忙しさ
さらに追い打ちをかけるように、
「お昼の準備まで手が回りません(汗の絵文字)。だれかお茶やお茶菓子を届けてくれないかな~?」というメッセージが、10時、12時、15時の休憩時間のたびに送られてくるとか。
女性陣はそれぞれのお子さんたちもまだ幼く、自分の家の家事や育児に追われながら、夫と分担して分刻みの怒涛(どとう)のスケジュールでなんとかこなしているそうです。
「だから土日は私とB子さんでなんとかシフトを組んで、必死に手伝いに行っています。でももっと大変なのは、田植えや稲の収穫の時期なんです……」
田植えの時期になると、早朝から活動する義父母に合わせて4時起きは当たり前。地方の農家では「親族一丸となって田植えをする」という暗黙のルールが当然のようにあって、嫁は誰よりも早く起きることが求められるとか。
◆家政婦と清掃業者とウーバー配達員を同時にやってる
「4時に起きて義実家に行って、B子さんと合流してすぐ朝ごはん作りを開始します。三家族分、大体10人分の朝ごはんを作って、日中に田植えをするときの飲み物としてペットボトルのお茶やお菓子を買ってくる。そして家に帰って子どもたちを起こして身支度させて、義実家との往復をしていると、あっという間に時間が経ってしまいます」
さらに恐ろしいのはここからです。
「『田植えは親族総出』なので、近所の叔父や叔母、ご近所さんなど、助け合い・お互いさまの精神でものすごい人数が集まるんですよ。田植え自体は機械でやりますが、苗を車で何往復もして運んだり、何かと人手が必要みたいで。
それで義実家にも人がたくさん来るから、掃除も念入りにやるように言われるんです。嫁たちの仕事は、日中は20人以上のお弁当を手配して運んで、お茶を用意して、義実家の掃除を徹底的にやる。
家政婦と清掃業者として本気で働きながら、同時にウーバーイーツの仕事もしているくらい激務でした」
うわあ……。
◆夜の「田植えお疲れ様会」でも女性たちは奴隷
「そして、なにより問題なのは夜です。“田植えの慰労会”として、そのまま大人数で宴会に突入するんです。食事やお酒の準備は、すべて嫁二人でやれと担当が決まっています。
そして宴会中に女性陣は一切座ることもできずに、ひたすら料理を作ったり、お酒を運んだり、お酌をしたり、バタバタと駆け回っています。
もう本当に疲労困憊。私たちだって慰労され、労われるべきじゃないのかと……。でも朝から動いているお義母さんも文句を言わず台所でバタバタと働いているので、なにも言えないんですよね。
『ああ、これが日本の悪しき習慣か』と絶望しながら、怒りを込めて義父のビールを泡だらけにして注いでやる。もう全部泡まみれ。でもこの怒りと疲れは泡のようには消えないんですよ」
取材中も当時の様子を思い出したのか、何度も眉間にふか~いシワを寄せ、語気を強めていた水野さん。心中お察しします……。
◆ぶち切れた嫁たちは、ついに“逆襲”を企てる
一日中動き回って疲弊し、足はむくみまくって膨張した棒のような状態。そして台所は男子禁制! とばかりに、男性陣は一切手伝わない。こんな生活が3年ほど続き、今年の6月の田植えで4回目を迎えることに。
ただ今年は“ある異変”が起きたそうです。
「『起きた』というより、起こしたんです。台所は男子禁制! で、男性陣は食って飲んで騒いで、女性陣は奴隷のごとくこき使われるなんて、今の時代さすがにおかしいですからね。しかも男性陣が自分たちで、『男は台所に入れないから、手伝えない~(笑)』とか言っちゃうんですよ。ここは昭和飛び越えて、江戸時代かよ! って。
でもただ反論するだけじゃ気が済まないし、なにより面白くない。そこでBさんと考えたのが『酒池肉林作戦』でした」
酒池肉林(しゅちにくりん)って、贅沢の限りを尽くした宴会のことですよね。今の女性陣たちの状況とは、真逆のような気がしますが……。
◆スパークリングで乾杯! 台所でゲリラ女子会
「宴会のときの『台所は男子禁制』を逆に利用したんです。宴会の予算はもらっていたので、ちょっといいスパークリングワインを買って、デパ地下の名店オードブルを揃えて、塩水ウニやレバーペーストをお取り寄せして。シャインマスカットも大きいヤツを二房買いました。
そして、男性陣の宴会の方は、お弁当チェーン店の激安オードブル4人前を二つと、発泡酒。それを段ボールでドーン! と居間において、『もう自由にやっちゃってくださいね♪』と言い放って台所に直行です」
台所は水野さんとB子さん、そして子どもたちも呼んで、飲めや歌えの大騒ぎ状態に。
「途中でお義母さんや叔母さんたちがのぞきにきて、『ちょっと! 何やってるの!』とお説教されかけましたが……」
絶対怒られますよね。どうやって乗り切ったんですか?
◆B子の“策略”で叔母も義母も涙目に
「今までの理不尽な扱いを訴えて、さらに『お義母さんたちは、若い頃、もっと苦労されたんじゃないですか……?』と、B子さんが相手をホロっとさせるような、情に訴えかけるように声をかけ続けたんです(笑)。そしたら、『あなたたちにも、本当に苦労をかけたわね(泣)』『今までごめんなさい』と叔母も義母も涙目になり、あっけなく陥落」
B子さん、なんという策士……!
「お酒も入って大グチ大会になり、義母の許可をもらって義父のお気に入りの超高級ブランデーも飲みまくり。
台所でのゲリラ飲み会が盛りあがる一方で、居間の宴会は普段よりランクダウンした食事とお酒でなんとも微妙な雰囲気に。なにより、動き回る女性たちがいないから、男性陣はご不満みたいでした」
◆「男子禁制なんでしょ?」男性たちはシャットアウト
そして、義父が珍しく台所にやってきたそうで……
「『なにやってんだ~?』『こっちに来んのか』と声をかけてきて、台所を開けようとしたんです。でも義母がぴしゃっと手で扉を閉めて、『ここは男子禁制なんでしょ!!』と一言。さらにスライドの扉を、ほうきでつっかえ棒にしちゃって、どうやっても入ってこれないようにバリケードまで作っていました。
追い打ちをかけるように叔母が、『こっちはこっちで、普段旦那や男衆にたまってる不満を吐き出しているんです! そんな中に入りたい!?』と一喝して追い返してしまって(笑)。男尊女卑や、女性だけこき使われる文化には心底嫌気がさしますが、こうやって楽しみながら、私たちの代でその習慣を変えていきたいです」
<取材・文&イラスト 赤山ひかる>
【赤山ひかる】
奇想天外な体験談、業界の裏話や、社会問題などを取材する女性ライター。週刊誌やWebサイトに寄稿している。元芸能・張り込み班。これまでの累計取材人数は1万人を超える。無類の猫好き。