夫婦の門出を祝う結婚式は、お世話になった親族や友人などにこれまでの感謝を伝える大切なイベントですよね。一度に大人数を招いて行う大イベントだからこそ、時にはトラブルが起きてしまうこともあるでしょう。
今回は入籍から約1年後、前代未聞の結婚式を行ったという奈津さんから、当時の話を聞きました。
今回お話を伺った奈津さん(仮名・29歳)と夫の祐樹さん(仮名・29歳)は大阪で生まれ育った夫婦。2人共交友関係が広く、全国各地に友人がいることから、この結婚式の日に大好きな友人が集結するのを楽しみにしていました。
では、結婚式当日にいったい何が起きたのでしょうか。
◆夫婦が一生に一度の結婚式にかける想い
「私たち夫婦は産まれも育ちも大阪ですが、私たちの友人は、結婚して他県に嫁いだり、仕事の関係で遠方に住んでいる方も多く、結婚後もお互いの友人を紹介する機会がありませんでした。
結婚式への憧れと大好きな祖母から『奈津ちゃんのドレス姿が見たい』と言われていたこともあり、私たちは入籍から約1年後に大阪で結婚式を行うことに決めたんです。すでに結婚式を挙げた友人から聞いていた通り、準備は本当に大変でしたが、夫とは喧嘩することなく、2人で力を合わせて準備を進めることができました」
普段から仲の良い夫婦だという奈津さんたちは、一生で一度だから盛大に式を挙げたいと約150名ほどを招待し、結婚式を挙げたそうです。
◆式前日、夫の様子がおかしい……
「式が近づくにつれ、緊張と楽しみの感情が交互にやってきて、だんだんと実感が湧いてきていました。友人たちからも『前乗りしてもう大阪にいるよー!楽しみにしてるね!』とたくさんの連絡が来ていた結婚式前日の夜、夫が急に嘔吐したんです。
前日に刺身を食べていたこともあり『食あたりかな?』と話しつつ大事を取って早めに就寝したのですが、夜中になり夫がまたもや嘔吐。嫌な予感はしたものの、夫は『落ち着いたらすぐ行くから、先に会場入りしてて!』というので、私は朝6時頃に先に家を出ることにしました」
前日から体調がすぐれない旦那さんを見ていて、心配と焦りの気持ちがあったと、奈津さんは当時の様子を話してくれました。
「幸い家から式場が近かったこともあり、ギリギリまで様子をみようとスタッフの方と話していたのですが、『嘔吐が止まらない。お腹も痛くて、胃腸炎かもしれない』と夫から連絡が来ました。その時は頭が真っ白になり、悲しいような悔しいような言葉にならない感情になったのだけは覚えています。
式場のスタッフの方から『もし旦那さんが時間通りに来るのが難しければ、可能な範囲でオンラインで繋ぐ方法はどうですか?』などと土壇場でいろいろな提案をしていただいたのですが、夫にビデオ電話をしてみると、画面上だとしてもニコニコ笑える様子ではなさそうで、『とりあえず、任せて!』と夫に伝え、その瞬間私は一人でもなんとか式を成功させようと腹をくくりました」
きっと新郎不在の結婚式は異例だったと思う、と語ってくれた奈津さんですが、夫の弱っている姿を画面越しに見て、今すぐにでも家に帰って看病したい気持ちもありつつ、遠方からわざわざ来てくれている友人のことを考えると、なんとしてでもこの式を成功させるしかないと気持ちを切り替えたといいます。
◆新婦のみでの結婚式がスタート。参列者の反応は?
「開始1時間前になり、夫からは『本当にごめんなさい。2人で準備も頑張って、みんなわざわざ来てくれるのに、申し訳ない』と電話が来ましたが、スタッフさんと急いで打ち合わせをして新婦とゲストの歓談メインの式にしようとなりました。受付で、新郎が体調不良だということを伝えることから始まり、両家の親族にも夫から連絡がきていたようで、夫のご両親からも何度も『奈津ちゃん、本当にごめんね。』と声を掛けていただきました。
一人で歩くバージンロードは寂しさもありましたが、参列者の方々が精一杯盛り上げてくれたので、最後まで笑顔で歩くことが出来、夫の体調不良を『あいつ大事な時になにやってんだよー!!』と愛のあるイジりで場を和ませてくれた夫の友人、職場の方々の声にも本当に救われました」
挙式では堂々と歩くことで何とか頑張れたという奈津さんですが、披露宴は時間を持て余さないか、盛り上がらないのではないかと、内心不安だったようです。
◆夫の友人の粋な計らいに大感動
「不安な中での披露宴でしたが、入場のときの拍手がとてもあたたかく、私はそれだけで泣きそうになってしまいました。最初の挨拶も夫不在ということで私が直前に考えて読み上げましたがこの時は“可哀想だと思われたくない”という思いが強かった気がします。
歓談を長めに設けることで親族や友人、職場の方ともたくさんお話することができ、夫の友人の一人が『みんなスマホで祐樹の顔をアップにして写真に写してやろう!』と提案してくれ、写真撮影の際は、スマホ内の画像ですが夫も一緒にいるようなショットを撮りました」
奈津さんは、初めてお会いした夫の友人が本当に優しくて感動した、と言っていました。
「私たちの式では友人の余興は予定していなかったのですが、歓談中に急に会場の照明が消え、夫の友人がサプライズで歌を歌ってくれたことに驚きました。後から聞いたのですが、体調が悪い中、夫が友人と式場になんとか連絡をとってくれて、シンガーソングライターをしている夫の友人が急遽歌を歌ってくれたようでした。カラオケ大会のようにワイワイとした雰囲気になり、続けて私の友人も歌ってくれ、最後には義父まで一曲披露してくれるという流れで、会場はとっても盛り上がりました。これは本当に予想外で心が温かくなりました」
◆式場スタッフの計らいに感涙
「参列者の皆さんの協力もあり、新郎不在となった式でも成り立たせることができて、安心してお見送りの時間になったとき、式場の方が即席で夫の等身大パネルを作ってくれていて、私の横にパネルを置いてお見送りさせていただきました。スタッフの方たちに『最後はご主人と一緒にお見送りをしましょう!』と言っていただいた瞬間、私は涙があふれて本当に感激しました。
直前に夫が体調不良となり、どん底の気持ちから始まった結婚式当日でしたが、式が終わるころにはみなさんの温かさでとても満たされた気持ちになったと同時に、夫も私も本当に良い人たちに恵まれているな、と感じました」
無事に新郎不在の式を終えた奈津さんは、後日改めて旦那さんと写真撮影をしたそうです。異例の式になってしまったとはいえ、家族や友人への感謝の気持ちが大きくなったと、当時を思い出して語ってくれました。
<取材・文/鈴木風香 イラスト/朝倉千夏>
【鈴木風香】
フリーライター・記者。ファッション・美容の専門学校を卒業後、アパレル企業にて勤務。息子2人の出産を経てライターとして活動を開始。ママ目線での情報をお届け。Instagram:@yuyz.mama
今回は入籍から約1年後、前代未聞の結婚式を行ったという奈津さんから、当時の話を聞きました。
今回お話を伺った奈津さん(仮名・29歳)と夫の祐樹さん(仮名・29歳)は大阪で生まれ育った夫婦。2人共交友関係が広く、全国各地に友人がいることから、この結婚式の日に大好きな友人が集結するのを楽しみにしていました。
では、結婚式当日にいったい何が起きたのでしょうか。
◆夫婦が一生に一度の結婚式にかける想い
「私たち夫婦は産まれも育ちも大阪ですが、私たちの友人は、結婚して他県に嫁いだり、仕事の関係で遠方に住んでいる方も多く、結婚後もお互いの友人を紹介する機会がありませんでした。
結婚式への憧れと大好きな祖母から『奈津ちゃんのドレス姿が見たい』と言われていたこともあり、私たちは入籍から約1年後に大阪で結婚式を行うことに決めたんです。すでに結婚式を挙げた友人から聞いていた通り、準備は本当に大変でしたが、夫とは喧嘩することなく、2人で力を合わせて準備を進めることができました」
普段から仲の良い夫婦だという奈津さんたちは、一生で一度だから盛大に式を挙げたいと約150名ほどを招待し、結婚式を挙げたそうです。
◆式前日、夫の様子がおかしい……
「式が近づくにつれ、緊張と楽しみの感情が交互にやってきて、だんだんと実感が湧いてきていました。友人たちからも『前乗りしてもう大阪にいるよー!楽しみにしてるね!』とたくさんの連絡が来ていた結婚式前日の夜、夫が急に嘔吐したんです。
前日に刺身を食べていたこともあり『食あたりかな?』と話しつつ大事を取って早めに就寝したのですが、夜中になり夫がまたもや嘔吐。嫌な予感はしたものの、夫は『落ち着いたらすぐ行くから、先に会場入りしてて!』というので、私は朝6時頃に先に家を出ることにしました」
前日から体調がすぐれない旦那さんを見ていて、心配と焦りの気持ちがあったと、奈津さんは当時の様子を話してくれました。
「幸い家から式場が近かったこともあり、ギリギリまで様子をみようとスタッフの方と話していたのですが、『嘔吐が止まらない。お腹も痛くて、胃腸炎かもしれない』と夫から連絡が来ました。その時は頭が真っ白になり、悲しいような悔しいような言葉にならない感情になったのだけは覚えています。
式場のスタッフの方から『もし旦那さんが時間通りに来るのが難しければ、可能な範囲でオンラインで繋ぐ方法はどうですか?』などと土壇場でいろいろな提案をしていただいたのですが、夫にビデオ電話をしてみると、画面上だとしてもニコニコ笑える様子ではなさそうで、『とりあえず、任せて!』と夫に伝え、その瞬間私は一人でもなんとか式を成功させようと腹をくくりました」
きっと新郎不在の結婚式は異例だったと思う、と語ってくれた奈津さんですが、夫の弱っている姿を画面越しに見て、今すぐにでも家に帰って看病したい気持ちもありつつ、遠方からわざわざ来てくれている友人のことを考えると、なんとしてでもこの式を成功させるしかないと気持ちを切り替えたといいます。
◆新婦のみでの結婚式がスタート。参列者の反応は?
「開始1時間前になり、夫からは『本当にごめんなさい。2人で準備も頑張って、みんなわざわざ来てくれるのに、申し訳ない』と電話が来ましたが、スタッフさんと急いで打ち合わせをして新婦とゲストの歓談メインの式にしようとなりました。受付で、新郎が体調不良だということを伝えることから始まり、両家の親族にも夫から連絡がきていたようで、夫のご両親からも何度も『奈津ちゃん、本当にごめんね。』と声を掛けていただきました。
一人で歩くバージンロードは寂しさもありましたが、参列者の方々が精一杯盛り上げてくれたので、最後まで笑顔で歩くことが出来、夫の体調不良を『あいつ大事な時になにやってんだよー!!』と愛のあるイジりで場を和ませてくれた夫の友人、職場の方々の声にも本当に救われました」
挙式では堂々と歩くことで何とか頑張れたという奈津さんですが、披露宴は時間を持て余さないか、盛り上がらないのではないかと、内心不安だったようです。
◆夫の友人の粋な計らいに大感動
「不安な中での披露宴でしたが、入場のときの拍手がとてもあたたかく、私はそれだけで泣きそうになってしまいました。最初の挨拶も夫不在ということで私が直前に考えて読み上げましたがこの時は“可哀想だと思われたくない”という思いが強かった気がします。
歓談を長めに設けることで親族や友人、職場の方ともたくさんお話することができ、夫の友人の一人が『みんなスマホで祐樹の顔をアップにして写真に写してやろう!』と提案してくれ、写真撮影の際は、スマホ内の画像ですが夫も一緒にいるようなショットを撮りました」
奈津さんは、初めてお会いした夫の友人が本当に優しくて感動した、と言っていました。
「私たちの式では友人の余興は予定していなかったのですが、歓談中に急に会場の照明が消え、夫の友人がサプライズで歌を歌ってくれたことに驚きました。後から聞いたのですが、体調が悪い中、夫が友人と式場になんとか連絡をとってくれて、シンガーソングライターをしている夫の友人が急遽歌を歌ってくれたようでした。カラオケ大会のようにワイワイとした雰囲気になり、続けて私の友人も歌ってくれ、最後には義父まで一曲披露してくれるという流れで、会場はとっても盛り上がりました。これは本当に予想外で心が温かくなりました」
◆式場スタッフの計らいに感涙
「参列者の皆さんの協力もあり、新郎不在となった式でも成り立たせることができて、安心してお見送りの時間になったとき、式場の方が即席で夫の等身大パネルを作ってくれていて、私の横にパネルを置いてお見送りさせていただきました。スタッフの方たちに『最後はご主人と一緒にお見送りをしましょう!』と言っていただいた瞬間、私は涙があふれて本当に感激しました。
直前に夫が体調不良となり、どん底の気持ちから始まった結婚式当日でしたが、式が終わるころにはみなさんの温かさでとても満たされた気持ちになったと同時に、夫も私も本当に良い人たちに恵まれているな、と感じました」
無事に新郎不在の式を終えた奈津さんは、後日改めて旦那さんと写真撮影をしたそうです。異例の式になってしまったとはいえ、家族や友人への感謝の気持ちが大きくなったと、当時を思い出して語ってくれました。
<取材・文/鈴木風香 イラスト/朝倉千夏>
【鈴木風香】
フリーライター・記者。ファッション・美容の専門学校を卒業後、アパレル企業にて勤務。息子2人の出産を経てライターとして活動を開始。ママ目線での情報をお届け。Instagram:@yuyz.mama