2025年1月期から『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)の新シーズンがはじまることが発表されました。同じ1月期には、女性のひとり呑みをテーマにした人気グルメドラマ『ワカコ酒』(BSテレ東)も放映が決定。『孤独のグルメ』シリーズも1月10日から映画『劇映画 孤独のグルメ』が公開されます。
今クールも『相棒』『民王R』『ザ・トラベルナース』(すべてテレビ朝日系)『それぞれの孤独のグルメ』(テレビ東京系)…など、過去の人気作の続編やシリーズものが大盛況。ファンには嬉しい続編ですが、大ヒットしても続編制作に至らない作品も多々あります。
シリーズ化や続編が作られるドラマとそうでないドラマの違いはどこにあるのでしょうか?
◆1話完結の作品は続編が制作されやすい
『家政夫のミタゾノ』は、2016年10月期にスタートした松岡昌弘扮する女装家政夫を中心とした痛快“覗き見”ヒューマンドラマ。2025年1月からは第7シーズンに突入します。『ワカコ酒』も第8シーズン、『孤独のグルメ』は2022年にシーズン10を超え、その後はスペシャルや特別編など、何度も新作が制作されています。
そして、『相棒』となるとなんとSeason23! 単発ドラマから数えると、25年近いという息の長いシリーズ作品となっています。他、ドラマシリーズものとして有名なのは、『科捜研の女』や12月に完結編と銘打たれた劇場版が公開される『ドクターX』(ともにテレビ朝日系)でしょうか。
これらの息の長いシリーズものに共通するのが、「1話完結」「単純で分かりやすい設定」と、「役割分担された個性的なキャラクターのメインキャスト」です。
◆タイパを大事にする人にとって最良の選択
数多いコンテンツの中から、視聴するドラマを選ぶにあたって、“タイパ”を大事にする忙しい現代人にとって、「確実にその時間を楽しむことができる」ものを選択するのは当然のこと。内容やキャラクターが既に頭の中で理解できているシリーズ物は貴重な時間を無駄なく楽しむのにうってつけです。
ドラマに限らず、テレビ番組はサブスクなどのWEB配信が隆盛となっている昨今。一度続いたシリーズものがさらに長く続くものになるのは当然なのかもしれません。
◆人気俳優主演のドラマはシリーズ化が難しい
人気ドラマが終わるたびに「続編希望!」「シリーズ化してほしい」という声があるものの、実現したのはごくわずかです。
中には、シリーズ化や映画での続編が前提で制作されるドラマもありますが、人気俳優を起用したストーリー性のある作品は、どんなに人気があったとしても、脇役をメインにしたスピンオフや、半沢直樹のように何年も時間をかけて実現するのがせいぜいでしょう。
かつては、『北の国から』『白線流し』『ふぞろいの林檎たち』などという、作家性ある名脚本家が手掛けたストーリー重視のシリーズ作品がありましたが、それは昔の話。WEBも含め、多くの媒体があり、働き方改革などが叫ばれる昨今は、多くの役者や監督・脚本家などのスタッフを再集結させるためのスケジュールを組むのは非常に難しいことです。
人気ある俳優は2年以上先までスケジュールが埋まっていることなどザラにあり、現に1本のドラマを作るにあたって、放映の1年半以上前から企画が動きはじめることが慣例のスケジュールとなっています。
しかし前述した、「わかりやすい設定と濃いメインキャラ」がドラマ内にあれば、軸のスタッフ数名と主役がそろえるだけで作品として成立するため、シリーズ化がしやすい。そしてシリーズ作品となればヒットの予想も立てやすく、スポンサーも集まりやすい。人気作となれば、ドラマ制作のための企画書も2~3枚程度で通るとも言われています。
◆秋ドラマでシリーズ化が期待されるのは『無能の鷹』
上記をふまえて、この秋に放映されたドラマで続編やシリーズ化が期待できるものとして挙げられるのは、ズバリ『無能の鷹』(テレビ朝日系)と『団地のふたり』(NHK)でしょう。
いずれもほぼ1話完結で、キャラクターが生き生きしており、設定も分かりやすい作品になっています。いずれも原作ものの作品ではありますが、『民王R』のように、世界観を壊さないことが前提で、原作設定の中で自由にうごける了承が得られれば、ドラマに限らず、映画など、多くの展開も期待できそうです。
◆シリーズものの最大の敵は「マンネリ化」
ちなみに、シリーズものの一番の敵は「マンネリ」だと言われています。
それを打破するために、『相棒』は水谷豊さん演じる右京さんの相棒を定期的に変えたり、『孤独のグルメ』は今期、様々な立場の人を主人公にした『それぞれの孤独のグルメ』という新機軸を打ち出すなど、試行錯誤を繰り返しています。しかし、それが必ずしも好評を得るとは限りません。
来年、シーズン8が放映され10年目の『ワカコ酒』の制作決定のコメントで、主演の武田梨奈さんは「変わる勇気、変わらない覚悟」と、原作にもあるモノローグを引用して、長寿シリーズになったこの作品に向けての意気込みを語っていました。
◆続編制作はスタッフ陣の努力のたまもの
ネタ切れ、出演者のスケジュール確保、変化する時代の中で変わらぬ世界観を保つこと、これらと戦いながらシリーズを長く続けることは、新しいものを作り出す以上に胆力のいるものです。
シリーズ作品の数々は、二匹目のどじょうを狙って同じようなものを安易に作っているのではありません。役者や制作スタッフの知られざる努力のたまものなのです。
<文/小政りょう>
【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦
今クールも『相棒』『民王R』『ザ・トラベルナース』(すべてテレビ朝日系)『それぞれの孤独のグルメ』(テレビ東京系)…など、過去の人気作の続編やシリーズものが大盛況。ファンには嬉しい続編ですが、大ヒットしても続編制作に至らない作品も多々あります。
シリーズ化や続編が作られるドラマとそうでないドラマの違いはどこにあるのでしょうか?
◆1話完結の作品は続編が制作されやすい
『家政夫のミタゾノ』は、2016年10月期にスタートした松岡昌弘扮する女装家政夫を中心とした痛快“覗き見”ヒューマンドラマ。2025年1月からは第7シーズンに突入します。『ワカコ酒』も第8シーズン、『孤独のグルメ』は2022年にシーズン10を超え、その後はスペシャルや特別編など、何度も新作が制作されています。
そして、『相棒』となるとなんとSeason23! 単発ドラマから数えると、25年近いという息の長いシリーズ作品となっています。他、ドラマシリーズものとして有名なのは、『科捜研の女』や12月に完結編と銘打たれた劇場版が公開される『ドクターX』(ともにテレビ朝日系)でしょうか。
これらの息の長いシリーズものに共通するのが、「1話完結」「単純で分かりやすい設定」と、「役割分担された個性的なキャラクターのメインキャスト」です。
◆タイパを大事にする人にとって最良の選択
数多いコンテンツの中から、視聴するドラマを選ぶにあたって、“タイパ”を大事にする忙しい現代人にとって、「確実にその時間を楽しむことができる」ものを選択するのは当然のこと。内容やキャラクターが既に頭の中で理解できているシリーズ物は貴重な時間を無駄なく楽しむのにうってつけです。
ドラマに限らず、テレビ番組はサブスクなどのWEB配信が隆盛となっている昨今。一度続いたシリーズものがさらに長く続くものになるのは当然なのかもしれません。
◆人気俳優主演のドラマはシリーズ化が難しい
人気ドラマが終わるたびに「続編希望!」「シリーズ化してほしい」という声があるものの、実現したのはごくわずかです。
中には、シリーズ化や映画での続編が前提で制作されるドラマもありますが、人気俳優を起用したストーリー性のある作品は、どんなに人気があったとしても、脇役をメインにしたスピンオフや、半沢直樹のように何年も時間をかけて実現するのがせいぜいでしょう。
かつては、『北の国から』『白線流し』『ふぞろいの林檎たち』などという、作家性ある名脚本家が手掛けたストーリー重視のシリーズ作品がありましたが、それは昔の話。WEBも含め、多くの媒体があり、働き方改革などが叫ばれる昨今は、多くの役者や監督・脚本家などのスタッフを再集結させるためのスケジュールを組むのは非常に難しいことです。
人気ある俳優は2年以上先までスケジュールが埋まっていることなどザラにあり、現に1本のドラマを作るにあたって、放映の1年半以上前から企画が動きはじめることが慣例のスケジュールとなっています。
しかし前述した、「わかりやすい設定と濃いメインキャラ」がドラマ内にあれば、軸のスタッフ数名と主役がそろえるだけで作品として成立するため、シリーズ化がしやすい。そしてシリーズ作品となればヒットの予想も立てやすく、スポンサーも集まりやすい。人気作となれば、ドラマ制作のための企画書も2~3枚程度で通るとも言われています。
◆秋ドラマでシリーズ化が期待されるのは『無能の鷹』
上記をふまえて、この秋に放映されたドラマで続編やシリーズ化が期待できるものとして挙げられるのは、ズバリ『無能の鷹』(テレビ朝日系)と『団地のふたり』(NHK)でしょう。
いずれもほぼ1話完結で、キャラクターが生き生きしており、設定も分かりやすい作品になっています。いずれも原作ものの作品ではありますが、『民王R』のように、世界観を壊さないことが前提で、原作設定の中で自由にうごける了承が得られれば、ドラマに限らず、映画など、多くの展開も期待できそうです。
◆シリーズものの最大の敵は「マンネリ化」
ちなみに、シリーズものの一番の敵は「マンネリ」だと言われています。
それを打破するために、『相棒』は水谷豊さん演じる右京さんの相棒を定期的に変えたり、『孤独のグルメ』は今期、様々な立場の人を主人公にした『それぞれの孤独のグルメ』という新機軸を打ち出すなど、試行錯誤を繰り返しています。しかし、それが必ずしも好評を得るとは限りません。
来年、シーズン8が放映され10年目の『ワカコ酒』の制作決定のコメントで、主演の武田梨奈さんは「変わる勇気、変わらない覚悟」と、原作にもあるモノローグを引用して、長寿シリーズになったこの作品に向けての意気込みを語っていました。
◆続編制作はスタッフ陣の努力のたまもの
ネタ切れ、出演者のスケジュール確保、変化する時代の中で変わらぬ世界観を保つこと、これらと戦いながらシリーズを長く続けることは、新しいものを作り出す以上に胆力のいるものです。
シリーズ作品の数々は、二匹目のどじょうを狙って同じようなものを安易に作っているのではありません。役者や制作スタッフの知られざる努力のたまものなのです。
<文/小政りょう>
【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦