日本画風の猫漫画で人気を博している、うぐいす歌子さん。彼女の描く猫目線の「あるある」がリアルでかわいいと評判を呼んでいます。
2025年1月に待望の書籍発売を控えたうぐいすさんに、猫漫画を描き始めたきっかけから、気になる書籍の内容まで聞いたところ、意外な事実をたくさん知ることができました。
⇒漫画を最初から読む
◆きっかけは「フォロワーさんのお宅の猫」
――猫の漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
うぐいす歌子さん(以下うぐいす):海上自衛官として働いていた経験を基に、主人公のペンギンを中心に動物で結成された組織の日常を描いた漫画『2士ペン君 』をSNSに投稿していました。
この漫画の同人誌を発売したところで一区切りついたので、本格的に猫の漫画を描き始めました。フォロワーさんのお宅の猫をモデルに絵を描き始めたんです。
『2士ペン君』を投稿していたときは、せいぜい5,000いいねくらいだったのに、猫の漫画を投稿したら3万を超えたときもありました。それ以来、「キジネコ様」のアカウントを作成し、こちらで猫の漫画を投稿しています。
◆海上自衛隊で美大の学費を稼ぎ、日本画を専攻
――日本画風なのはなぜでしょう?
うぐいす:高校生のときから美大を目指していたんですけど、私の実家はあまり裕福ではありませんでした。そこで、海上自衛隊に入隊して、学費を稼いだという経緯があります。
ただ、美大に入学した後も経済的に余裕はなかったので、日本画を専攻しても、高価な日本画絵具ではなく、安価な墨でばかり描いていたんです。それが今の漫画の作風に影響しています。
――ペンネームは歌川国芳から取ったのでしょうか?
うぐいす:いえ、私が潰瘍性大腸炎を患っていたときに、大阪にある石切劔箭神社にお参りに行ったら、だいぶ状態が良くなり、漫画の仕事も軌道に乗ったという経験があります。その神社でおみくじを引いたところ、ウグイスに関する歌が詠まれていたので、縁を感じてペンネームにしました。
◆漫画に登場する猫たちのモデルは?
――キジネコ様、クロネコ様、コネコ様のモデルは?
うぐいす:キジネコ様は別のお宅の、クロネコ様とコネコ様は私の家の猫です。しかし、私は猫が好きで小学校から飼っていたこともあり、今まで一緒に暮らしてきた猫たちとの思い出もエピソードにしながら描いていますね。
――スミレさんという女性と男性が出てきます。こちらもモデルはいるのでしょうか?
うぐいす:猫の漫画を描き始めたときは、人間を出すつもりは全くありませんでした。出したとしても、顔は見えないくらいにしようと。ですが、今度漫画を出版するKADOKAWAの編集者さんのリクエストで、2人をときどき出しています。ちなみに、男性は夏目漱石の本名から取って、金之助といいます。
2人は、「たぶん夫婦なのかなぁ?」くらいの感覚で描いています。詳細な設定は決めていなくて、「描き始めたらなんとかなるやろう」といった感じでした。
キジネコ様の飼い主がスミレさんで、残りの2匹の飼い主が金之助で、などと少し考えていたんですけど、世帯が別という設定が面倒くさくなってしまいました(笑)
◆SNSの投稿は「キジネコ様」が代行のワケ
――ネタはどのように考えているのでしょうか?
うぐいす:まずは猫を描いています。描いてみないと、「その子が何を思っていそうか」がわからないんです。描いてから猫との思い出や体験を記憶から引っ張り出して、エピソードを足しています。1~3ページくらいの漫画は、そのようにして描いています。
――描くときに意識していることがあれば。
うぐいす:猫が柔らかく見えるように描くことです。日本画を描く人間って、細部まで描きたがるんですけど、あまり描き込みをし過ぎないようにしています。
――SNSの投稿をネコ様が代行しているのはなぜでしょう?
うぐいす:2つ理由があります。1つは『2士ペン君』の登場人物の1人、ウミウくんがSNSを投稿しているようなアカウントを運用していたことがありました。そのノリで、キジネコ様のアカウントも運用しています。
もう1つはネタ帳代わりです。猫がやったことや、思いついたセリフを書き留めておくこともあります。以前、キジネコ様が庭先で野生のトカゲを捕った旨の文章のみで投稿したんです。すると、それに対して何件か攻撃的なコメントがありまして……。
だから、猫の狩りを漫画にしたときは、ゴキブリに置き換えました。読者の反応を見られると、漫画に生かせることもありますね。
◆「漫画を読むのも好き」だからこそ増やした描きおろしページ
――2025年1月8日発売予定の『今日もネコ様の圧が強い』の発売の経緯も気になります。
うぐいす:猫の漫画をSNSに5件くらい投稿したくらいのタイミングで、KADOKAWAの編集者さんから「出版は確約できないけど、どうですか?」とお声掛けいただきました。
他社から別件で書籍化のお声掛けをいただき、実現しなかったという経験をし過ぎていて、今回の書籍化の話をいただいたときは期待していませんでした。今も、「出版日までは信じないぞ!」と思っています(笑)
――描きおろしページの内容を少しだけ教えてもらえますか?
うぐいす:内容は144ページということは決まっていました。描きおろしのページ数を編集者さんから相談されたとき、「頑張って50ページくらい描きます」と返事をしたんですけど、気付いたら70ページも描いていました。
私は漫画を読むのも大好きで、読者目線で考えたときに、書きおろしが少ないと、喜んでもらえないかと思ったんです。
描きおろしの中で一番長い話は17ページあります。普段は猫目線ですが、それは人間視点になっています。内容は少しホロっとするような内容でしょうか。
◆読んでいる間だけでも楽しい気持ちになってほしい
――漫画の読者に向けてのメッセージをお願いします。
うぐいす:今、世の中にはつらいことがたくさんありますよね。漫画を描く際にずっと考え続けているのが、「私の作品を読んでいる間くらいは、つらいことを忘れられれば」ということです。
基本的に週に一度、新作漫画を更新しているので、読んでいる5秒だけは楽しい気持ちになってもらえればと思っています。
――最後に今後の展開についても教えてください。
うぐいす:今後も引き続き漫画を描いていきます。あとは、日本画で猫を書いて掛け軸にし、個展を開きたですね。しばらくアナログで描いていなくて腕が落ちているので、実現までに何年かかるかはわかりませんが。とりあえず、また描くことから始めようと思います。
【うぐいす歌子】
X(旧Twitter):@Motidukineko
Instagram:@uguisuutako
<文/増田洋子>
【増田洋子】
2匹のデグー、2匹のラットと暮らすライター。デグーオンリーイベント「デグーサロン」を運営。愛玩動物飼養管理士2級を取得。Twitter:@degutoichacora
2025年1月に待望の書籍発売を控えたうぐいすさんに、猫漫画を描き始めたきっかけから、気になる書籍の内容まで聞いたところ、意外な事実をたくさん知ることができました。
⇒漫画を最初から読む
◆きっかけは「フォロワーさんのお宅の猫」
――猫の漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
うぐいす歌子さん(以下うぐいす):海上自衛官として働いていた経験を基に、主人公のペンギンを中心に動物で結成された組織の日常を描いた漫画『2士ペン君 』をSNSに投稿していました。
この漫画の同人誌を発売したところで一区切りついたので、本格的に猫の漫画を描き始めました。フォロワーさんのお宅の猫をモデルに絵を描き始めたんです。
『2士ペン君』を投稿していたときは、せいぜい5,000いいねくらいだったのに、猫の漫画を投稿したら3万を超えたときもありました。それ以来、「キジネコ様」のアカウントを作成し、こちらで猫の漫画を投稿しています。
◆海上自衛隊で美大の学費を稼ぎ、日本画を専攻
――日本画風なのはなぜでしょう?
うぐいす:高校生のときから美大を目指していたんですけど、私の実家はあまり裕福ではありませんでした。そこで、海上自衛隊に入隊して、学費を稼いだという経緯があります。
ただ、美大に入学した後も経済的に余裕はなかったので、日本画を専攻しても、高価な日本画絵具ではなく、安価な墨でばかり描いていたんです。それが今の漫画の作風に影響しています。
――ペンネームは歌川国芳から取ったのでしょうか?
うぐいす:いえ、私が潰瘍性大腸炎を患っていたときに、大阪にある石切劔箭神社にお参りに行ったら、だいぶ状態が良くなり、漫画の仕事も軌道に乗ったという経験があります。その神社でおみくじを引いたところ、ウグイスに関する歌が詠まれていたので、縁を感じてペンネームにしました。
◆漫画に登場する猫たちのモデルは?
――キジネコ様、クロネコ様、コネコ様のモデルは?
うぐいす:キジネコ様は別のお宅の、クロネコ様とコネコ様は私の家の猫です。しかし、私は猫が好きで小学校から飼っていたこともあり、今まで一緒に暮らしてきた猫たちとの思い出もエピソードにしながら描いていますね。
――スミレさんという女性と男性が出てきます。こちらもモデルはいるのでしょうか?
うぐいす:猫の漫画を描き始めたときは、人間を出すつもりは全くありませんでした。出したとしても、顔は見えないくらいにしようと。ですが、今度漫画を出版するKADOKAWAの編集者さんのリクエストで、2人をときどき出しています。ちなみに、男性は夏目漱石の本名から取って、金之助といいます。
2人は、「たぶん夫婦なのかなぁ?」くらいの感覚で描いています。詳細な設定は決めていなくて、「描き始めたらなんとかなるやろう」といった感じでした。
キジネコ様の飼い主がスミレさんで、残りの2匹の飼い主が金之助で、などと少し考えていたんですけど、世帯が別という設定が面倒くさくなってしまいました(笑)
◆SNSの投稿は「キジネコ様」が代行のワケ
――ネタはどのように考えているのでしょうか?
うぐいす:まずは猫を描いています。描いてみないと、「その子が何を思っていそうか」がわからないんです。描いてから猫との思い出や体験を記憶から引っ張り出して、エピソードを足しています。1~3ページくらいの漫画は、そのようにして描いています。
――描くときに意識していることがあれば。
うぐいす:猫が柔らかく見えるように描くことです。日本画を描く人間って、細部まで描きたがるんですけど、あまり描き込みをし過ぎないようにしています。
――SNSの投稿をネコ様が代行しているのはなぜでしょう?
うぐいす:2つ理由があります。1つは『2士ペン君』の登場人物の1人、ウミウくんがSNSを投稿しているようなアカウントを運用していたことがありました。そのノリで、キジネコ様のアカウントも運用しています。
もう1つはネタ帳代わりです。猫がやったことや、思いついたセリフを書き留めておくこともあります。以前、キジネコ様が庭先で野生のトカゲを捕った旨の文章のみで投稿したんです。すると、それに対して何件か攻撃的なコメントがありまして……。
だから、猫の狩りを漫画にしたときは、ゴキブリに置き換えました。読者の反応を見られると、漫画に生かせることもありますね。
◆「漫画を読むのも好き」だからこそ増やした描きおろしページ
――2025年1月8日発売予定の『今日もネコ様の圧が強い』の発売の経緯も気になります。
うぐいす:猫の漫画をSNSに5件くらい投稿したくらいのタイミングで、KADOKAWAの編集者さんから「出版は確約できないけど、どうですか?」とお声掛けいただきました。
他社から別件で書籍化のお声掛けをいただき、実現しなかったという経験をし過ぎていて、今回の書籍化の話をいただいたときは期待していませんでした。今も、「出版日までは信じないぞ!」と思っています(笑)
――描きおろしページの内容を少しだけ教えてもらえますか?
うぐいす:内容は144ページということは決まっていました。描きおろしのページ数を編集者さんから相談されたとき、「頑張って50ページくらい描きます」と返事をしたんですけど、気付いたら70ページも描いていました。
私は漫画を読むのも大好きで、読者目線で考えたときに、書きおろしが少ないと、喜んでもらえないかと思ったんです。
描きおろしの中で一番長い話は17ページあります。普段は猫目線ですが、それは人間視点になっています。内容は少しホロっとするような内容でしょうか。
◆読んでいる間だけでも楽しい気持ちになってほしい
――漫画の読者に向けてのメッセージをお願いします。
うぐいす:今、世の中にはつらいことがたくさんありますよね。漫画を描く際にずっと考え続けているのが、「私の作品を読んでいる間くらいは、つらいことを忘れられれば」ということです。
基本的に週に一度、新作漫画を更新しているので、読んでいる5秒だけは楽しい気持ちになってもらえればと思っています。
――最後に今後の展開についても教えてください。
うぐいす:今後も引き続き漫画を描いていきます。あとは、日本画で猫を書いて掛け軸にし、個展を開きたですね。しばらくアナログで描いていなくて腕が落ちているので、実現までに何年かかるかはわかりませんが。とりあえず、また描くことから始めようと思います。
【うぐいす歌子】
X(旧Twitter):@Motidukineko
Instagram:@uguisuutako
<文/増田洋子>
【増田洋子】
2匹のデグー、2匹のラットと暮らすライター。デグーオンリーイベント「デグーサロン」を運営。愛玩動物飼養管理士2級を取得。Twitter:@degutoichacora