日本全国に数多くの店舗を展開する小売店「ヴィレッジヴァンガード」(以下、ヴィレヴァン)。サブカル文化を作りあげた時代から、現在は店舗数も減り経営不振にあえいでいます。
「昔のヴィレヴァンは、今のヴィレヴァンより個性的なものがたくさん置いてあった……」と言われがちなヴィレヴァンですが、そんな声に“待った”をかける人物がいます。
熱烈なヴィレヴァンファンで、全国のヴィレヴァンを訪れては詳細をレビューし続ける「ヴィレヴァン全店まわるひと【非公式】」(@village_vanvan)さんによれば、全国にはまだまだ個性的な店舗がたくさんあるとのこと。そこで、今まで訪れた中でインパクトのあったイチオシの店舗についてお話を聞いてみました。
◆溢れ出る秘密基地感!“あの頃の自分”に出会える店舗
――今までにまわられた中で、イチオシの店舗があれば教えてください。
ヴィレヴァン全店まわる人【非公式】(以下、ヴィレ全)「たくさんあるので、絞るのは難しいのですが……。やはり名古屋にあるヴィレッジヴァンガード本店(1号店)には、機会があればぜひ行っていただきたいですね。
倉庫のような建物の中に商品が並んでいて、僕たちが小さい頃から通っていたヴィレヴァンの雰囲気を今でも継承しています。溢れ出る秘密基地感に、大人になった今でもワクワクします。情報量もとにかく多いです。自分の好きなジャンルの商品を一つ一つ見ていくと、『その商品をそこに置くんだ!』という新しい発見や楽しみを存分に味わえますよ」
――昔のヴィレヴァンの雰囲気が継承されている、というのもいいですね。
◆不良のたまっていそうな昭和感。ノスタルジーを感じる店舗
ヴィレ全「他には愛知県の岡崎市にある岡崎店や、豊明市にあるポルト店もおすすめです。店内は薄暗く、少し男くさい雰囲気が漂っていますが、車やバイクの商品がとにかく多いです。不良がたまっていそうな昭和感も良いですね。実際に不良はたまっていませんが(笑)、24時まで営業しています」――不良がたまってそうな雰囲気、というのが懐かしいですね。
ヴィレ全「まさに昔のヴィレヴァンの雰囲気がそのまま残っていて、行くだけでノスタルジーを感じられます。子どもの頃にヴィレヴァンが大好きだった方に、ぜひおすすめしたい店舗です」
◆店員さんの個性や人柄が、店内のポップから滲み出る
ヴィレ全「本店がある愛知県の店舗ばかり紹介してしまいましたが、山口県の山口店もおすすめです。山口店は路面店で、本店や岡崎店に似たテイストがあります。
ここも倉庫のような店内で、子ども時代のヴィレヴァンに戻ってきたような気持ちになります。山口店は置かれている本の数が圧倒的に多く、ポップが作者ごとにとても丁寧に書かれています。本好きで誠実そうな店員さんの人柄が、ポップから滲み出ていますね」
――ヴレヴァンのポップには店員さんの個性が出ていますよね。
ヴィレ全「また、三重県のイオンモール津南のヴィレヴァンも良いですよ。手書きのポップが驚くほどド派手で、クオリティも高いんです。きっと店員さんにすごくおもしろい方がいるんだろうな、と感じながらポップを見ています」
◆「僕はヴィレヴァンに救われた」自分を受け入れてもらえる安心感
――ヴィレ全さんは全国のヴィレヴァンをまわったり、株主総会で質問や意見を投げかけたりしていますが、なぜそこまでヴィレヴァンに愛があるのでしょうか。
ヴィレ全「ヴィレヴァンのお店も好きだし、置いてある商品も好きです。そして、僕自身が子どもの頃にヴィレヴァンと出会って救われたという思いがあります。田舎の出身なので、情報があまり入ってこない中で鬱屈(うっくつ)とした日々を送っていました。そんな中でヴィレヴァンは僕の好きなものに目覚めさせてくれたお店です」
――世の中にあるおもしろいものを教えてくれたお店だったんですね。
ヴィレ全「メインカルチャーになじめない中、15~16歳のときに近所のイオンにヴィレヴァンが入ったんです。そこで僕は初めてサブカルと出会いました。自分が好きなものがそこにあって、自分を受け入れてもらえる安心感がありました。初めて自分の好きなものに巡り合い、知らない世界と出会う喜びを感じ、自分は自分でいていいんだと思えたんです。ヴィレヴァンに自分を肯定してもらえた。
あの頃の僕は、本当にヴィレヴァンに救われていました。全国をまわって店舗の様子を発信しているのは、恩返しの気持ちもあります。一人で鬱屈としていた自分を救ってくれたヴィレヴァンに、少しでも何かできればいいなという思いです」
◆ノスタルジーに浸ったり、大人だからこその出合いを楽しんだり
――ヴィレヴァンは、ヴィレ全さんを肯定してくれた場所だったんですね。
ヴィレ全「はい。だからこそ、ヴィレヴァンの店舗閉店の話を聞くととても悲しいですし、自分に何かできることはないかなと考えます。僕以外にも、ヴィレヴァンに自分の好きなものを肯定してもらえた人はたくさんいると思うんです。そんな方には、ぜひまたヴィレヴァンに足を運んでもらいたいですね。
あの頃を思い出し、ノスタルジーに浸るのもいいですし、大人になった今だからこそ、新たな出合いを楽しむのもいいと思います。きっと、あの頃とは違った『好き』を見つけられるはずです」
◆「ヴィレヴァンは変わってしまった」と言うのはもったいない
――また違う出合いがありそうですね。
ヴィレ全「『ヴィレヴァンは昔と変わってしまった』という声をSNSでもよく目にします。でも、近所の数店舗だけまわってそう思うのは、ちょっともったいない気がします。まだまだ、店員さんが試行錯誤しながら遊び心を出している店舗はたくさんあります。地方に行った際など、ぜひもう一度ヴィレヴァンを覗いて、買い物をしてほしいと思います」
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ヴィレヴァンの経営不振の話から全国のおすすめの店舗まで、ヴィレヴァン愛を存分に語ってくれたヴィレ全さん。そこにはヴィレヴァンへの恩返しの想いがありました。ヴィレヴァンに最近行っていないなという方こそ、ふらりと入ってみてはいかがでしょうか。新しい興味の森に迷い込み、あの頃とは違った「好き」が見つかるかもしれません!
【ヴィレヴァン全店まわるひと【非公式】】
全国に300店舗以上あるヴィレッジヴァンガードを北は北海道、南は沖縄・宮古島まで全店訪問を目指して全国をまわり中。Xにて、訪れた全ての店舗の記録を掲載。X:@village_vanvan
<取材・文/瀧戸詠未 写真提供/ヴィレヴァン全店まわるひと【非公式】>
【瀧戸詠未】
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーランスライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。X:@YlujuzJvzsLUwkB
「昔のヴィレヴァンは、今のヴィレヴァンより個性的なものがたくさん置いてあった……」と言われがちなヴィレヴァンですが、そんな声に“待った”をかける人物がいます。
熱烈なヴィレヴァンファンで、全国のヴィレヴァンを訪れては詳細をレビューし続ける「ヴィレヴァン全店まわるひと【非公式】」(@village_vanvan)さんによれば、全国にはまだまだ個性的な店舗がたくさんあるとのこと。そこで、今まで訪れた中でインパクトのあったイチオシの店舗についてお話を聞いてみました。
◆溢れ出る秘密基地感!“あの頃の自分”に出会える店舗
――今までにまわられた中で、イチオシの店舗があれば教えてください。
ヴィレヴァン全店まわる人【非公式】(以下、ヴィレ全)「たくさんあるので、絞るのは難しいのですが……。やはり名古屋にあるヴィレッジヴァンガード本店(1号店)には、機会があればぜひ行っていただきたいですね。
倉庫のような建物の中に商品が並んでいて、僕たちが小さい頃から通っていたヴィレヴァンの雰囲気を今でも継承しています。溢れ出る秘密基地感に、大人になった今でもワクワクします。情報量もとにかく多いです。自分の好きなジャンルの商品を一つ一つ見ていくと、『その商品をそこに置くんだ!』という新しい発見や楽しみを存分に味わえますよ」
――昔のヴィレヴァンの雰囲気が継承されている、というのもいいですね。
◆不良のたまっていそうな昭和感。ノスタルジーを感じる店舗
ヴィレ全「他には愛知県の岡崎市にある岡崎店や、豊明市にあるポルト店もおすすめです。店内は薄暗く、少し男くさい雰囲気が漂っていますが、車やバイクの商品がとにかく多いです。不良がたまっていそうな昭和感も良いですね。実際に不良はたまっていませんが(笑)、24時まで営業しています」――不良がたまってそうな雰囲気、というのが懐かしいですね。
ヴィレ全「まさに昔のヴィレヴァンの雰囲気がそのまま残っていて、行くだけでノスタルジーを感じられます。子どもの頃にヴィレヴァンが大好きだった方に、ぜひおすすめしたい店舗です」
◆店員さんの個性や人柄が、店内のポップから滲み出る
ヴィレ全「本店がある愛知県の店舗ばかり紹介してしまいましたが、山口県の山口店もおすすめです。山口店は路面店で、本店や岡崎店に似たテイストがあります。
ここも倉庫のような店内で、子ども時代のヴィレヴァンに戻ってきたような気持ちになります。山口店は置かれている本の数が圧倒的に多く、ポップが作者ごとにとても丁寧に書かれています。本好きで誠実そうな店員さんの人柄が、ポップから滲み出ていますね」
――ヴレヴァンのポップには店員さんの個性が出ていますよね。
ヴィレ全「また、三重県のイオンモール津南のヴィレヴァンも良いですよ。手書きのポップが驚くほどド派手で、クオリティも高いんです。きっと店員さんにすごくおもしろい方がいるんだろうな、と感じながらポップを見ています」
◆「僕はヴィレヴァンに救われた」自分を受け入れてもらえる安心感
――ヴィレ全さんは全国のヴィレヴァンをまわったり、株主総会で質問や意見を投げかけたりしていますが、なぜそこまでヴィレヴァンに愛があるのでしょうか。
ヴィレ全「ヴィレヴァンのお店も好きだし、置いてある商品も好きです。そして、僕自身が子どもの頃にヴィレヴァンと出会って救われたという思いがあります。田舎の出身なので、情報があまり入ってこない中で鬱屈(うっくつ)とした日々を送っていました。そんな中でヴィレヴァンは僕の好きなものに目覚めさせてくれたお店です」
――世の中にあるおもしろいものを教えてくれたお店だったんですね。
ヴィレ全「メインカルチャーになじめない中、15~16歳のときに近所のイオンにヴィレヴァンが入ったんです。そこで僕は初めてサブカルと出会いました。自分が好きなものがそこにあって、自分を受け入れてもらえる安心感がありました。初めて自分の好きなものに巡り合い、知らない世界と出会う喜びを感じ、自分は自分でいていいんだと思えたんです。ヴィレヴァンに自分を肯定してもらえた。
あの頃の僕は、本当にヴィレヴァンに救われていました。全国をまわって店舗の様子を発信しているのは、恩返しの気持ちもあります。一人で鬱屈としていた自分を救ってくれたヴィレヴァンに、少しでも何かできればいいなという思いです」
◆ノスタルジーに浸ったり、大人だからこその出合いを楽しんだり
――ヴィレヴァンは、ヴィレ全さんを肯定してくれた場所だったんですね。
ヴィレ全「はい。だからこそ、ヴィレヴァンの店舗閉店の話を聞くととても悲しいですし、自分に何かできることはないかなと考えます。僕以外にも、ヴィレヴァンに自分の好きなものを肯定してもらえた人はたくさんいると思うんです。そんな方には、ぜひまたヴィレヴァンに足を運んでもらいたいですね。
あの頃を思い出し、ノスタルジーに浸るのもいいですし、大人になった今だからこそ、新たな出合いを楽しむのもいいと思います。きっと、あの頃とは違った『好き』を見つけられるはずです」
◆「ヴィレヴァンは変わってしまった」と言うのはもったいない
――また違う出合いがありそうですね。
ヴィレ全「『ヴィレヴァンは昔と変わってしまった』という声をSNSでもよく目にします。でも、近所の数店舗だけまわってそう思うのは、ちょっともったいない気がします。まだまだ、店員さんが試行錯誤しながら遊び心を出している店舗はたくさんあります。地方に行った際など、ぜひもう一度ヴィレヴァンを覗いて、買い物をしてほしいと思います」
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ヴィレヴァンの経営不振の話から全国のおすすめの店舗まで、ヴィレヴァン愛を存分に語ってくれたヴィレ全さん。そこにはヴィレヴァンへの恩返しの想いがありました。ヴィレヴァンに最近行っていないなという方こそ、ふらりと入ってみてはいかがでしょうか。新しい興味の森に迷い込み、あの頃とは違った「好き」が見つかるかもしれません!
【ヴィレヴァン全店まわるひと【非公式】】
全国に300店舗以上あるヴィレッジヴァンガードを北は北海道、南は沖縄・宮古島まで全店訪問を目指して全国をまわり中。Xにて、訪れた全ての店舗の記録を掲載。X:@village_vanvan
<取材・文/瀧戸詠未 写真提供/ヴィレヴァン全店まわるひと【非公式】>
【瀧戸詠未】
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーランスライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。X:@YlujuzJvzsLUwkB