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子どもの「死亡事故の恐怖」リアルに描いた漫画にゾゾッ…“生き延びる方法”まで描ききった作者の意図は<漫画>

女子SPA! 2024年12月22日 8時47分

あなたのその行動、「死」につながるかもしれません!

歩きスマホや川遊びなど、日常の何気ない行動が思わぬ死亡事故につながる危険を描いた『マンガでわかる! 死亡ピンチからの生還図鑑』(大塚志郎著/宝島社刊)は、日常に潜む危険と、それをどう防ぎ、もしもの場合にどう乗り越えるかをわかりやすく解説した漫画。ゾッとする場面も多くありながらもそのぶん胸に響くことから、「こういう知識が欲しかった」「身を守るのに最善の行動を教えてくれる」とSNSでも話題になっています。

本作の最大の特徴は、恐ろしい状況を描きながら、「死亡の危機から生還するための具体的な方法」がきっちり解説されていることです。なぜ今、この作品を描いたのか? きっかけや事例の集め方について、作者で漫画家の大塚志郎さんに話を聞きました。

◆子どもたちを守るため、危険を「分かりやすく」伝えたい

――なぜ、事故や事件を取り扱った子ども向けの漫画を描こうと思ったのでしょうか?

大塚志郎さん(以下、大塚)「ニュースを見ていると、子どもが事故や事件に巻き込まれて亡くなるというショッキングなニュースが増えています。そのようなニュースを見るたびに、なんとか対策ができないかという気持ちが湧いていました。

政府が公式に出している危機対策の情報ページも見たのですが、正直、字が多くて読みづらい(笑)! すごく正確で有益なことが書かれているのに、文章が長すぎて子どもには読むのが難しいと思ったんです。もっと子どもにわかりやすく伝えたいと思い、少しずつ漫画を描き始めたのがきっかけです。

危険な事例を積み重ねていき、ここ数年で1冊の本として形にすることができました」

◆昔から「ピンチの中で生き抜く方法」に興味があった

――漫画には多くの「死亡ピンチ」事例が描かれていますが、事例はどこから取り入れているのでしょうか?

大塚「主にテレビのニュースやネットから情報を取り入れています。テレビで気になるニュースをチェックして、その関連情報や詳細をネットで調べ、最終的には、省庁などが出しているデータで具体的な数値や情報を確認しています。

取り上げたい事例で注意して見ているのは、年間で起きている発生件数です。日常生活でどれくらい巻き込まれやすい事故なのか、という点は数字を見るようにしています。死亡事故件数が多い場合は、それだけ多くの人が日常的に巻き込まれやすく、危険な事故とも言えます。できるだけ多くの方に、注意喚起ができる内容になればと思っています。

一方で、発生件数が少なくても、最近耳にする機会が増えた事故や、ショッキングな事故も取り上げています。みなさんに伝えたい情報、知ることで対策ができる情報を調べて発信するようにしています」

――いつ頃から、事故や事件の事例を調べていたのですか?

大塚「この漫画を描くために特別に事例を集めていたわけではなく、昔から事件や事故のニュースを収集する癖がありました。ナショナルジオグラフィックの番組で、自然災害などの危機に備えるライフハックを紹介する『プレッパーズ~世界滅亡に備える人々~』もよく観ていて、昔から『生き抜く方法』を取り扱った番組が好きだったんです」

◆「地球滅亡」に備える前に、まずは身近な事故への対策を

――漫画のためではなく、以前から情報を集めていたんですね。

大塚「ノストラダムスの予言で、1999年に地球が滅亡するという話がありましたよね。このテーマに関連して、地球が滅亡した後にどう自力で生き延びるかを考える番組も観ていました。けれど、ノストラダムスや世界滅亡の予言よりも、身近な危険の方が怖いと思ったんです。災害や交通事故の方が、巻き込まれる可能性が高いですよね。

だから地球規模ではなくて、もっと身近に起き得るシチュエーションを漫画にしたいと考えていました。僕は現在40代なのですが、20代後半くらいから約10年間、なんとなくこのテーマを描きたい気持ちがあったように思います」

――もともと、子ども向けの漫画を描かれていたんですか?

大塚「もともとは少年漫画で連載デビューしましたが、その後、青年漫画に移行して活動を続けました。青年漫画を描いている中でも、いつか子どもに向けて何か描きたいという気持ちはずっとありました。そんな気持ちでいる中で、先ほどお伝えしたような子どもが巻き込まれる痛ましい事故や事件を目にする機会が増えて、描こうという思いが強くなりました。子ども向けの作品を描きたいという気持ちと、子どもに伝えたいテーマが合致したタイミングでできた作品です」

◆漫画で「危険を疑似体験してもらう感覚」が大事

――『マンガでわかる! 死亡ピンチからの生還図鑑』は、自分がその事故に巻き込まれているかのような臨場感がありました。

大塚「漫画を読んで疑似体験してもらう感覚は、とても大事にしました。実際、危機に遭遇したときに一番危ないのは、想定外のことが起きてパニックになることなんです。だから、漫画の中で一度疑似体験をしてもらい、いざ危機に陥ったときに『漫画で見たやつだ』と思い出して回避策をイメージしてもらえればと思っています。

また、漫画で危険なシチュエーションを知ることで、『このエリアは危険だ』とか『この空間は危なそう』というのを、想像できるようになってほしいという思いがあります。

例えば、増水した川がそうです。増水した川が危険と言われても、どう危険なのかは子どもには伝わりにくいですよね。一生懸命大人が危険性を説明しても、子どもは多分10秒後には別のことを考えていると思います。要するに、飽きちゃうんです。

だからこそ、漫画という形で能動的に読んで、自分ごとに置き換えてほしいんです。『なるほど』と思いながら進めれば、具体的にイメージもしやすいですよね」

◆漫画を読みながら「どうしたらいいのか?」本気で考えてみる

漫画を読むと、他人ごととは思えない事故や事件の実例がたくさん描かれていて、恐ろしい気持ちになります。だからこそ、漫画の世界に入り込みながら「こんな時はどうしたらいいのか?」や「事件や事故に巻き込まれないために、事前に対策はできないか?」と、本気で自分ごととして考えることができるのだと思います。

大人にも大いに役立つ内容ですが、特にお子さんがいる方は、一緒に「こんな時どうする?」と話しながら読むのもおすすめです。家族で身の回りに潜む危険を話すきっかけになりそうです。

【大塚志郎】

漫画家。2002年『ビッグコミックスピリッツ増刊 新僧』にて『漢とは何ぞや』でデビュー。商業誌以外にもSNSや自費出版漫画などで幅広く活動中。著書に『マンガでわかる! 死亡ピンチからの生還図鑑』(宝島社)、『漫画アシスタントの日常』(竹書房)など。

Xでも漫画を公開中。X:@shiro_otsuka

<取材・文/瀧戸詠未>

【瀧戸詠未】
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーランスライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。X:@YlujuzJvzsLUwkB

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