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玉袋筋太郎が思う“美しく枯れている良いオンナ”とは?「そういう人のほうが可愛いよ」

女子SPA! 2024年12月11日 15時46分

 お笑いコンビ・浅草キッドの玉袋筋太郎さんがレギュラー出演する、趣ある町中華めぐる番組『町中華で飲ろうぜ』(BS-TBS 毎週月曜よる10時)。玉袋さんは昭和文化をこよなく愛し、生粋の町中華好きとしても知られています。

 前編では、改めて、町中華の魅力を語ってもらうと共に、ひとりでは入店するのを躊躇っているおひとり様の背中を押してもらいました。

 後編では、玉袋さんの実際にあった“町中華での良い話”、そして最後に、おひとり様の背中を押してもらうとってもシンプルな言葉をいただきました。

◆「どんな天才作家でも台本に書けない」清田みくりの言葉

――『町中華で飲ろうぜ』には2024年4月から元乃木坂46で俳優の樋口日奈さん、俳優の清田みくりさんが新メンバーに加わりました。玉袋さんからどう映っていますか?

玉袋:びっくらこいたよ。俺は町中華にはよく行くし、これまでもそういう環境で生きてきたけれど、そうではないみくりちゃんや日奈ちゃんを見てると「すげぇや」って思うもんね。みくりちゃんには「エスパー」って愛称を名付けたんだけど、餃子を頼んでさ、小皿出されて「タレの作り方がわからない」なんて言うわけよ。Uber世代だから。出前のおかもち見て「知らない」ってさ。ありゃエスパーだよ。

俺なんかじゃ絶対考えられない行動を取ったり発言をするわけさ。「オイスターソース」を聞き間違えて「おいしさソース」って言うからね。そんなん普通出ないよ。どんな天才作家でも台本に書けない。そんなところが女子メンバーの面白さだと思いますよ。

◆正直もう普段は町中華を食べたくないよ。それでも……

――玉袋さん流の町中華メニューの組み立て方はありますか?

玉袋:俺は普通だよ。でもさ、昔の飲食店ってビールを頼んだら、必ず柿の種とかちょっとしたつまみがくっついてきたわけ。今はそれがないよね。スナックなんかに行くと、ママが作ったマカロニサラダがちょっと出てくるみたいなことがあるんだけど、そこには喜びがあるんだよね。俺もこの番組で週に何回かロケに行くから、正直もう普段は町中華を食べたくないよ。それでも通っちゃう店があるんだよ。

――カメラがまわってなく通う町中華があるんですね。

玉袋:まわってないよ。でもさ、もうその店の人とはツーカーな関係だし、本当は番組でも紹介したいよ。それで「ママ、マスターお願い。『町中華』出てよ」って言ったことがあるんだけど、「ありがたいんだけど、うちはいいよ」って言うんだよ。俺なんて10数年通っているんだから許してくれると思うじゃん。そこが俺の浅はかなところだったね。「うちは夫婦だけでやってるし、紹介されて人が増えちゃって、常連さんが来られなくなっちゃうのが困るから」ってさ。実は、この番組はオファーを断られる率が高いんだよ。でも「うちはいいです」って言われても「嫌な野郎だな」とは決して思わないね。

――“今いる常連を大事にしたい”という気持ちの表れですもんね。

玉袋:そうそう。そういう心の機微みたいなものも通っていくうちにわかるかもしれないし、女子SPA!の読者もいろんなドラマとか好きだと思うけど、与えられたものばかり楽しむんじゃなく、自分から物語の中に入っちゃえばいいよ。その上、ご飯も食べられるっていうね。

◆レバニラ食ってて感無量だった

――玉袋さんのように町中華ロケに頻繁に行っていても、“つい行きたくなっちゃう店がある”というのはすごく幸せですよね。

玉袋:本当だよ。それとさ、自分が小さい頃に通っていたお店の事を思い出せばいいんだよ。うちは商売をやっていたし、親父も呑兵衛だったんだけど、日曜になって家族でメシ食いに行くとなると「チャーハン食いたい」となって町中華に行くのよ。そこで俺も幼いながら、お店の人たちの家族構成とかも見てるわけ。

俺が中学に上がった頃、その店の子どもも中学生だったんだけど、グレちゃうんだよ。お父さん、お母さんは一生懸命やってるのにさ、悲しいよね。そんで中学を卒業するとどっかにいなくなっちゃう。高校も行かねぇでどっかで遊んでたんじゃないのかね。

25年後もまだその店はやってっから、行くわけよ。そしたら、厨房でその不良になっちゃった奴が鍋を振ってるのよ。声かけたりしないけど、そういうことがあったりするとさ、「最後はやっぱりここなんだ……」って考えちゃうよね。レバニラ食ってて感無量だったよ。

――物語が繋がる感じがありますね。

玉袋:俺は勝手に物語を作るのが好きだし、美談が好きなんだけど、でもそういうのを自分の世界の中で楽しめるんだから。良いもんだよ。

◆寡黙な大将の「お父さんを超えたね」という言葉

――店の成長も楽しめる一方で、自身の成長や取り巻く環境の変化も感じられますよね。

玉袋:いつしか子どもができて、家族で店に通うわけじゃん。3歳くらいになったら連れていくのかな。んで、子どもは当然1人前なんか食べられないわけ。プラスチックの塗装が禿げちゃった皿と先割のスプーンなんかが出てきて、それ使って食べさせてさ。その子ども大きくなってくるわけだよ。1人前をようやく食べられたときに、店主が「食べられたね」なんて言うわけ。こっちはこっちで子どもの成長と店の歴史、自分の老い、育ててきた感動とかを味わってるわけよ。

俺自身も子どもを育てる上で、そんな経験をしたよ。好きなつけ麺屋に、せがれを小さい頃から連れてっていたんだけどさ。いつも俺は野菜つけそばの大盛りを食ってたんだけど、大盛りだから分けられるじゃん。でも子どもは成長していくよね。あいつが中学に上がったときに、連れてったらようやく一人前を食ってね。寡黙な大将で何十年と通ってる俺でも、合わせて10分も喋ってないよ。だけど、その大将が「ようやく一人前を食べられるようになったね」って声かけてくれたのよ。それは感動したよ。

中学になると色気付いて一緒には行かなくなったんだけど、18歳の頃にまた連れてって、あいつも派手な格好してるもんだから、大将は俺の子どもだとわかるわけないと思った。でもせがれが大盛りを食べて、俺が普通盛りを食べたときに大将が「お父さんを超えたね」だって。

――良い話ですね。

玉袋:長年通っているとそういうことがあるわけ。俺の町中華ロマンっていうのはそういうのにあって、番組でも一期一会ながらそういう部分が画面から伝わって届いてくれれば良い。町中華ではみんなが主人公になれるし、目立ちたくないときは脇役になれば良いんだから。町中華の暖簾の中にはそんなドラマがあるんですよ。

◆腐敗じゃなくて発酵食品になるべき

――女性向けのメディアなのであえて伺いますが、2024年3月に書籍『美しく枯れる。』(KADOKAWA)を上梓された玉袋さんが考える“美しく枯れている女性”とは?

玉袋:あらがってない人じゃないかな。だって、あらがったって無理に決まってるんだから。重力にも勝てないし、加齢に勝てるわけないんだよ。そこで「勝てない!」って言いながら戦っている人が好きだよ。受け入れちゃうほうがいいよ。受け入れつつも、キレイな人っているじゃん。そういうふうになるとラクになるんじゃないの。人生の競争から逃げてるなんて思わなくていいと思うよ。

――比べる必要は何もないと。

玉袋:そうそう。すべて受け入れちゃえばいいんだよ。そういう人のほうがかわいいよ。俺がそういうふうに物事を見ちゃうっていうのもあるんだけど、腐敗じゃなくて発酵食品になるべきなんだよ。

――なるほど。発酵食品は確かに旨味が増して美味しいですね。

玉袋:発酵食品、美味いじゃん。だってさ、見た目はキレイだけど、心が腐敗している奴っているじゃん。見た目と心のちょうどいい発酵具合っていうのがあるんだよ。それが美しく枯れている良いオンナじゃないですかね。

◆「やっぱり扉は自分で開けるべきなんだよ」

――最後に改めて町中華にひとりで飲みに行く勇気の出ない方に言葉をいただけませんか。

玉袋:俺に何かを言われるんじゃなく、やっぱりその扉は自分で開けるべきなんだよ。そうすると自分のマップが広がるんだから。「ポケモンGO」と一緒だよ。新しいポケモンを見つける感覚で飛び込んじゃえばいいんだよ。嫌だったら、二度と行かなければいいだけなんだから。その権利はあるんだからさ。

怖がる必要もないよ。今の町中華に頑なな親父なんかいない。いたとしても、それは向こうのモーションだけだよ。こっちが“お邪魔してます”って気持ちで行けば、何にも怖くないよ。

ネットだけを見て、最短距離でいい店を探す奴は本当の美味しさを知らないと思うよ。だってそれは人との積み重ねでようやく味わえるものだから。ネット検索は、マラソンでいったらドーピングだよ。ナチュラルな人は美しいし、ドーピングなんかしないじゃん。まずは近所にある気になる店に入っちゃえばいいよ。

――番組を見ていると“今日はどんな出会いがあるんだろう”と視聴者側からしてもワクワクしますが、まさにそんな感じで飛び込めばいいと。

玉袋:そうだよ。町中華にもいろんなドラマがあって、主役を張ってた奴がある日、突然脇役になることもある。そういうドラマを見に行けるんだよ。そんな感覚でみんなも気軽に楽しんでよ。

<取材・文/中山洋平 撮影/市村円香>

【中山洋平】
1983年生まれ。群馬県前橋市出身、埼玉県川越市育ち。主にエンタメ分野のニュース・インタビュー記事を執筆。サウナ、ビジネスホテル、ファッション、Mリーグ、ボウリング、The Beatles、サザンオールスターズ、坂道シリーズ、お酒を好む。X:@yhinakayama

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