2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(39歳・以前は小林悠として活動)。
TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
第14回となる本記事では、冬本番の札幌で落とし物を拾ったエピソードから、スマートフォンへの思いを巡らせます(以下、アンヌさんの寄稿)。
◆札幌の街でスマホを拾った
私が生活している北海道札幌市は、もうすっかり雪が積もり冬本番となってしまいました。
先日、愛犬のゴールデンレトリバーと朝のお散歩に出てしばらく歩いたところ……道の真ん中に、一台のスマートフォンが落ちているではありませんか。
黄色いカバーのスマホにはうっすらと白く雪が。拾い上げ近くの交番に届けた私。落とされた方はさぞ狼狽しているだろうとこちらの心臓もぎゅっと締め付けられました。
だって……はっきり言って、お財布をなくすよりもスマホをなくすほうが今やよっぽど痛いとも言えませんか?
◆今年の夏、羽田空港での出来事
今思えば、私もスマホがらみでかなりゾッとした出来事がありましたっけ……。
それは今年の夏の出来事。雑誌の撮影で朝一番の飛行機で東京に向かい、その日の夕方便で札幌に戻る計画でした。
愛犬の子守は父に任せていましたが、彼女(愛犬は女の子です)の生理現象やご飯の件も心配で、とにかく早く帰らなくてはと、撮影後バタバタと羽田空港に向かったのでした。
しかし羽田に着いた途端、激しい稲光! さらにとんでもない量の雨がバーっと降り始め、嫌な予感……。チェックイン後手荷物検査場へ。北海道新千歳空港行きの搭乗口に着いてみると不穏な空気が。
多くの人でひしめき合い、ちょっとした混乱状態になっていたのです。
あまりにも激しいゲリラ豪雨により飛行機の整備ができず、運航がことごとくストップするという非常事態が生じていたのでした。
◆スマホをなくし、足が震えた
いつ飛ぶのか? と係員の方に詰め寄る人の姿も。これは大変なことになったと、父に電話をしようとカバンを探ったところ……ない、ない! スマートフォンがない!!
血の気が引くとはこのこと。なんでなんで! 座って落ち着いて探したいのに周囲の椅子はまったく空いていない……。
仕事道具として何より大切なスマホがないという現実に、現場の混沌ぶりが拍車をかけ、足が震え始めました。
日本国内だとお財布やスマホをなくしても無事に戻ってくる、それが日本の良いところだなんてよく聞きますが、これだけの人が行き交う空港でスマホを落とした場合……無事にかえってくるのか……。
どうしようどうしようと泣きそうになりながらも、とりあえず、もと来た道を戻りながら探すことに。
手荷物検査場ではスマホをトレーに載せた記憶があるので、検査場から搭乗口までのどこかで紛失したことになります。
◆お手洗いに戻ってみると……
全身から変な汗を噴き出しながら小走りで地面をキョロキョロと凝視する私。思い出したのは、一度お手洗いに寄っていたという事実でした。
しかしそれは既にだいぶ前のこと……一か八かで戻ってみた私。確か自分は一番奥の個室を使ったはず、と恐る恐る駆け寄り扉を開けたところ……。
便器の背面の出っ張りに、私の携帯電話がちょこんと置かれているではありませんか! あれほど私の携帯電話が光り輝いて見えた瞬間はありません。
まるで迷子になっていた家族と再会できたかのような勢いで、携帯を拾い上げ、ハグせんばかりに両手で握り締めた私。もうその場でくるくる回りながら、よくぞご無事で! と叫びたい位の衝動を抑えるのが大変でした。
その場で父親に電話をかけ飛行機が遅れる旨を伝え、その後2時間遅れで札幌に帰った私でしたが、いやーしかし本当にあのときは生きた心地がしなかった。
良くない良くないと思いながらも、物理的にも心理的にもかなりスマホに依存していることが露呈した瞬間でした……。奇跡的にあの場にあったわけですが、もしなかったら…。…考えただけで寒気がします。
◆もはやスマホに飼われている?正しい距離感とは
そして今回私が雪の中で見つけた携帯電話。交番に届けた後40分ほどかけて愛犬とゆっくり散歩をし、もと来た場所に戻った際、
そこには1台のタクシーと、不安げに腰をかがめて何かをウロウロと探す様子のダッフルコート姿の女性が。
ピンときた私は、近くの交番に届けましたよと声をかけました。彼女は驚いた表情をされながらも何度もお礼を言って下さり、タクシーで去っていかれました。
あのほっとした表情……なくなったと思った瞬間のあの絶望的な気持ち、誰も味わいたくないですよね。
ここまで携帯に依存するのは本当に良くない。なんて思いながらも現実問題、SNSの更新だって、原稿の執筆だって、写真撮影だって録音だって、すべてにおいて頼り切ってしまっている私。プライベートからビジネスに至るまで、もはやこの子がいないと私たち人間は何もできないといっても過言ではないかも。
最近だと、小さなポシェットを買い、常にスマホを斜めがけして歩いていますが、もはやスマホに飼われているような状態。
何とか主導権を自分のもとに残しておきたいものの……それができない情けない私です。みなさん、スマホとの距離感、どうされていますか?
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』などを担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、コメンテーター、モデルとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中
TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
第14回となる本記事では、冬本番の札幌で落とし物を拾ったエピソードから、スマートフォンへの思いを巡らせます(以下、アンヌさんの寄稿)。
◆札幌の街でスマホを拾った
私が生活している北海道札幌市は、もうすっかり雪が積もり冬本番となってしまいました。
先日、愛犬のゴールデンレトリバーと朝のお散歩に出てしばらく歩いたところ……道の真ん中に、一台のスマートフォンが落ちているではありませんか。
黄色いカバーのスマホにはうっすらと白く雪が。拾い上げ近くの交番に届けた私。落とされた方はさぞ狼狽しているだろうとこちらの心臓もぎゅっと締め付けられました。
だって……はっきり言って、お財布をなくすよりもスマホをなくすほうが今やよっぽど痛いとも言えませんか?
◆今年の夏、羽田空港での出来事
今思えば、私もスマホがらみでかなりゾッとした出来事がありましたっけ……。
それは今年の夏の出来事。雑誌の撮影で朝一番の飛行機で東京に向かい、その日の夕方便で札幌に戻る計画でした。
愛犬の子守は父に任せていましたが、彼女(愛犬は女の子です)の生理現象やご飯の件も心配で、とにかく早く帰らなくてはと、撮影後バタバタと羽田空港に向かったのでした。
しかし羽田に着いた途端、激しい稲光! さらにとんでもない量の雨がバーっと降り始め、嫌な予感……。チェックイン後手荷物検査場へ。北海道新千歳空港行きの搭乗口に着いてみると不穏な空気が。
多くの人でひしめき合い、ちょっとした混乱状態になっていたのです。
あまりにも激しいゲリラ豪雨により飛行機の整備ができず、運航がことごとくストップするという非常事態が生じていたのでした。
◆スマホをなくし、足が震えた
いつ飛ぶのか? と係員の方に詰め寄る人の姿も。これは大変なことになったと、父に電話をしようとカバンを探ったところ……ない、ない! スマートフォンがない!!
血の気が引くとはこのこと。なんでなんで! 座って落ち着いて探したいのに周囲の椅子はまったく空いていない……。
仕事道具として何より大切なスマホがないという現実に、現場の混沌ぶりが拍車をかけ、足が震え始めました。
日本国内だとお財布やスマホをなくしても無事に戻ってくる、それが日本の良いところだなんてよく聞きますが、これだけの人が行き交う空港でスマホを落とした場合……無事にかえってくるのか……。
どうしようどうしようと泣きそうになりながらも、とりあえず、もと来た道を戻りながら探すことに。
手荷物検査場ではスマホをトレーに載せた記憶があるので、検査場から搭乗口までのどこかで紛失したことになります。
◆お手洗いに戻ってみると……
全身から変な汗を噴き出しながら小走りで地面をキョロキョロと凝視する私。思い出したのは、一度お手洗いに寄っていたという事実でした。
しかしそれは既にだいぶ前のこと……一か八かで戻ってみた私。確か自分は一番奥の個室を使ったはず、と恐る恐る駆け寄り扉を開けたところ……。
便器の背面の出っ張りに、私の携帯電話がちょこんと置かれているではありませんか! あれほど私の携帯電話が光り輝いて見えた瞬間はありません。
まるで迷子になっていた家族と再会できたかのような勢いで、携帯を拾い上げ、ハグせんばかりに両手で握り締めた私。もうその場でくるくる回りながら、よくぞご無事で! と叫びたい位の衝動を抑えるのが大変でした。
その場で父親に電話をかけ飛行機が遅れる旨を伝え、その後2時間遅れで札幌に帰った私でしたが、いやーしかし本当にあのときは生きた心地がしなかった。
良くない良くないと思いながらも、物理的にも心理的にもかなりスマホに依存していることが露呈した瞬間でした……。奇跡的にあの場にあったわけですが、もしなかったら…。…考えただけで寒気がします。
◆もはやスマホに飼われている?正しい距離感とは
そして今回私が雪の中で見つけた携帯電話。交番に届けた後40分ほどかけて愛犬とゆっくり散歩をし、もと来た場所に戻った際、
そこには1台のタクシーと、不安げに腰をかがめて何かをウロウロと探す様子のダッフルコート姿の女性が。
ピンときた私は、近くの交番に届けましたよと声をかけました。彼女は驚いた表情をされながらも何度もお礼を言って下さり、タクシーで去っていかれました。
あのほっとした表情……なくなったと思った瞬間のあの絶望的な気持ち、誰も味わいたくないですよね。
ここまで携帯に依存するのは本当に良くない。なんて思いながらも現実問題、SNSの更新だって、原稿の執筆だって、写真撮影だって録音だって、すべてにおいて頼り切ってしまっている私。プライベートからビジネスに至るまで、もはやこの子がいないと私たち人間は何もできないといっても過言ではないかも。
最近だと、小さなポシェットを買い、常にスマホを斜めがけして歩いていますが、もはやスマホに飼われているような状態。
何とか主導権を自分のもとに残しておきたいものの……それができない情けない私です。みなさん、スマホとの距離感、どうされていますか?
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』などを担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、コメンテーター、モデルとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中