いま「パーカーを着るおじさんはおかしいのか論争」がネット上を賑わせています。
発端は、コラムニストで脚本家の妹尾ユウカ氏(27)がYouTubeの「新R25チャンネル」で、「40歳近くになってパーカーを着てるおじさんは結構おかしいと思う」と語ったことでした。37歳男性の「素敵なおじさんになるにはどうすれば?」という相談に妹尾氏が数々の助言をしていた中での発言でしたが、この部分が独り歩き。パーカーを愛用するホリエモンこと堀江貴文氏(52)や、ひろゆきこと西村博之氏(48)などの著名人がXで反応し、“論争”にまで発展しています。
大前提として、おじさんでも誰でも全員が好きなものを好きなように着れば良いのですが、どうして「パーカー論争」がここまで盛り上がっているのかは気になります。この話題について、ファッションスタイリスト&ライターの角 佑宇子(すみ ゆうこ)さんに意見を聞きました。
◆パーカーおじさんの大半は「楽だから着ているだけ」のはず
――今回の「パーカーおじさん論争」について、スタイリストとしての率直な感想は?
角 佑宇子さん(以下、角):言わんとしていることはわかりますが、妹尾さんの発言が切り取られて出回った「おじさんはパーカー着るな」を最初に見たときは、かなりの極論だなと感じました。
パーカーを着るおじさんの大多数は若作りのためではなく、楽だから着ているのだと思うんです。スーツを着る必要のない職場で私服出社なら、ほとんどの人が周りにどう見られるかなんて考えもせず、単に楽なパーカーを選ぶのではないでしょうか。
――妹尾さんの発言も「おじさんのパーカーは全ておかしい」ではなく、若作りでパーカーを着る男性への否定的な意見だったようですね。
角:妹尾さんのいう「若作りを狙ってるパーカーおじさん」はおそらく、年齢を重ねてもB系・ストリート系のファッションブランドを好んで着ている人のことではないかなと思います。しかし、そうしたストリートファッションを好んでパーカーを着るおじさんも、若者にウケる・ウケないを基準にしているのではなく、20代の若い頃からそういう服装を好んでいただけにすぎないはず。例えば女性でも、若い頃からエスニックや古着を好んで、モテや流行とは関係なく着こなしている方はいますよね。
もちろん、一部には若者の流行を追いかけて、鮮度の高い自分でいようとするおじさんもいないわけではないと思いますが、かなりの少数派ではないでしょうか。
◆なぜ「パーカーおじさん論争」はここまで燃え上がるのか
――このパーカー問題、SNS上ではホリエモン氏やひろゆき氏の意見で「論争」にまで発展しました。
角:ホリエモンさんやひろゆきさんは、先にお伝えした「人に見られるかどうかを気にしないで楽な服を着ているおじさん」なので、余計に反論したのだろうなと思います。
今回は「パーカー」という老若男女に広く着られているカジュアル服だからこそ、多くの人を刺激しました。もしそうではなく、例えば昔のギャル男よろしく「タイトなダメージデニムにとんがりブーツのおじさん」の話だったら、ここまで論争が盛り上がることもなかったかもしれません。
◆商談でパーカーを着るのはアリ? パーカーのTPO問題
――妹尾氏はその後「ちなみにこれ『商談の際などにパーカー着てる会社員のジジイなんなん?』って話だったのが『ジジイはパーカー着るな』という形で拡散されてしまったんだけど」と発信しています。パーカーを着る際のTPOについては、どう思われますか?
角:今回は妹尾さんの対談先がスーツ出社が必須ではないIT企業だったというのもあり、その業界特有の服装自由な在り方について是非を問われたのかなと思います。業界によってルールは大きく異なるので、職場がそれをOKとしているならば、パーカーを着る自由があっても良いのではないでしょうか。
私が仕事でお会いするWEBデザイナーさんや動画クリエイターさんなども、年齢問わず商談時は基本カジュアルな服装です。TPOを気にするべき場といえば、リリースイベント、レセプションパーティと呼ばれるようなオフィシャルな行事ではスマートカジュアルに切り替えるかなぐらいです。
とはいえ、ヨレヨレ・シワシワのパーカーを着ているとなったら、それは清潔感という意味で公的な場にそぐわないとされますよね。見る人に不快感を与えない程度の清潔感がある服装で、それが企業の規則に反しないのであれば、私が言うまでもないですが、おじさんがパーカーを着ていたって何も問題はありません。
◆清潔感ときちんと見え“お仕事向きパーカー”の特徴は
――同じパーカーというアイテムでも、デザインや素材で「清潔感」や「きちんと感」は変わってくるでしょうか?
角:デザインや素材はたしかに多少関係はあります。この定義自体はそもそも細かく設定されているわけではないので難しいところです。「強いて言うなら」の話にはなりますが……
ロゴデザインのもの、生地がしっかりしていないもの、マットな質感のコットン素材のパーカーはカジュアル度が高い印象を与えますね。アパレル企業など、服装の自由度が特に高い職種以外では避けた方が無難かもしれません。それよりは、スムース生地でツヤ、光沢感のあるもので、単色無地もののほうが“会社向きなパーカー”ではあります。
これらはあくまで「きちんと感を出したいなら」のお話で、これを着ないとNGというわけではありません。
◆パーカーで「だらしなく見える人」の特徴
――せっかくなので、パーカーの着こなしについてもお話を聞かせてください。同年代でも、パーカーが似合って素敵な人もいれば、逆に老けて見えたり、だらしなく見えたりする人もいます。パーカーで残念に見えてしまう人の特徴は?
角:まず、パーカーでだらしなく見える人の特徴は「清潔感がないこと」です。具体的には、フードがつぶれている、洗濯ジワがついている、フードの紐がほつれている、裾リブのストレッチが伸び切っている、食べカス・ゴミ・シミがついているなど、不潔要素があるパーカーを着ていれば、コーデに関係なくだらしなく見えてしまいます。
――長年着ていると自分では気づきにくいかもしれません。時々チェックした方がいいですね。
◆パーカーを着ると老けて見えるなら、“色”を変えてみて
角:あとは、“パーカーでちょっと古く見えてる人”の特徴なのですが、「むかし流行っていて、今は流行っていないデザイン」が要注意です。例えば男性の場合、スタッズやドクロ、ラインストーンなどのちょっとイカついデザインですね。「ちょい悪な俺」というブランディングが、若作りに見られることはあるかと思います。
女性の場合は、身幅がジャストサイズでフードが小さめ、ジップアップタイプ、やや薄手の生地、杢調素材のパーカーは昔の定番パーカーの要素なので“古い感じ”が出やすいです。
それから、大人女性はベージュ・グレー・カーキなどのくすんだ色だと顔色が悪く見えて老け感が出てしまいがちなので、着こなしでカバーするか、パーカーの色を白もしくは黒・ネイビーにすると良いですね。
◆流行のシルエットを着るのは「若作り」とは違う
――パーカーおじさん問題から、パーカーの注意点まで色々とお聞きしました。
角:最後に一つだけ。動画内で妹尾さんは「若い人が着る服を顔が老けてるおじさんが着るからミスマッチがイタい」とされていますが、ファッションにおける若作りは「若い頃に似合っていた自慢の服・昔流行りだったけど今は終わってるデザインの服を着ている」というほうがパッと見の“イタ見え感”が強い印象です。
パーカーはそれこそ、定番服。過度にうるさいデザインなどでなければ、昔流行したものより、今流行りのシルエットの服を着ている方がよほど若見えします。そのあたりは、ぜひ皆さんにお伝えしたいところです。
<コメント&イラスト/角佑宇子 取材・文/女子SPA!編集部>
【角 佑宇子】
(すみゆうこ)ファッションライター・スタイリスト。スタイリストアシスタントを経て2012年に独立。過去のオシャレ失敗経験を活かし、日常で使える、ちょっとタメになる情報を配信中。2023年9月、NHK『あさイチ』に出演。インスタグラムは@sumi.1105
発端は、コラムニストで脚本家の妹尾ユウカ氏(27)がYouTubeの「新R25チャンネル」で、「40歳近くになってパーカーを着てるおじさんは結構おかしいと思う」と語ったことでした。37歳男性の「素敵なおじさんになるにはどうすれば?」という相談に妹尾氏が数々の助言をしていた中での発言でしたが、この部分が独り歩き。パーカーを愛用するホリエモンこと堀江貴文氏(52)や、ひろゆきこと西村博之氏(48)などの著名人がXで反応し、“論争”にまで発展しています。
大前提として、おじさんでも誰でも全員が好きなものを好きなように着れば良いのですが、どうして「パーカー論争」がここまで盛り上がっているのかは気になります。この話題について、ファッションスタイリスト&ライターの角 佑宇子(すみ ゆうこ)さんに意見を聞きました。
◆パーカーおじさんの大半は「楽だから着ているだけ」のはず
――今回の「パーカーおじさん論争」について、スタイリストとしての率直な感想は?
角 佑宇子さん(以下、角):言わんとしていることはわかりますが、妹尾さんの発言が切り取られて出回った「おじさんはパーカー着るな」を最初に見たときは、かなりの極論だなと感じました。
パーカーを着るおじさんの大多数は若作りのためではなく、楽だから着ているのだと思うんです。スーツを着る必要のない職場で私服出社なら、ほとんどの人が周りにどう見られるかなんて考えもせず、単に楽なパーカーを選ぶのではないでしょうか。
――妹尾さんの発言も「おじさんのパーカーは全ておかしい」ではなく、若作りでパーカーを着る男性への否定的な意見だったようですね。
角:妹尾さんのいう「若作りを狙ってるパーカーおじさん」はおそらく、年齢を重ねてもB系・ストリート系のファッションブランドを好んで着ている人のことではないかなと思います。しかし、そうしたストリートファッションを好んでパーカーを着るおじさんも、若者にウケる・ウケないを基準にしているのではなく、20代の若い頃からそういう服装を好んでいただけにすぎないはず。例えば女性でも、若い頃からエスニックや古着を好んで、モテや流行とは関係なく着こなしている方はいますよね。
もちろん、一部には若者の流行を追いかけて、鮮度の高い自分でいようとするおじさんもいないわけではないと思いますが、かなりの少数派ではないでしょうか。
◆なぜ「パーカーおじさん論争」はここまで燃え上がるのか
――このパーカー問題、SNS上ではホリエモン氏やひろゆき氏の意見で「論争」にまで発展しました。
角:ホリエモンさんやひろゆきさんは、先にお伝えした「人に見られるかどうかを気にしないで楽な服を着ているおじさん」なので、余計に反論したのだろうなと思います。
今回は「パーカー」という老若男女に広く着られているカジュアル服だからこそ、多くの人を刺激しました。もしそうではなく、例えば昔のギャル男よろしく「タイトなダメージデニムにとんがりブーツのおじさん」の話だったら、ここまで論争が盛り上がることもなかったかもしれません。
◆商談でパーカーを着るのはアリ? パーカーのTPO問題
――妹尾氏はその後「ちなみにこれ『商談の際などにパーカー着てる会社員のジジイなんなん?』って話だったのが『ジジイはパーカー着るな』という形で拡散されてしまったんだけど」と発信しています。パーカーを着る際のTPOについては、どう思われますか?
角:今回は妹尾さんの対談先がスーツ出社が必須ではないIT企業だったというのもあり、その業界特有の服装自由な在り方について是非を問われたのかなと思います。業界によってルールは大きく異なるので、職場がそれをOKとしているならば、パーカーを着る自由があっても良いのではないでしょうか。
私が仕事でお会いするWEBデザイナーさんや動画クリエイターさんなども、年齢問わず商談時は基本カジュアルな服装です。TPOを気にするべき場といえば、リリースイベント、レセプションパーティと呼ばれるようなオフィシャルな行事ではスマートカジュアルに切り替えるかなぐらいです。
とはいえ、ヨレヨレ・シワシワのパーカーを着ているとなったら、それは清潔感という意味で公的な場にそぐわないとされますよね。見る人に不快感を与えない程度の清潔感がある服装で、それが企業の規則に反しないのであれば、私が言うまでもないですが、おじさんがパーカーを着ていたって何も問題はありません。
◆清潔感ときちんと見え“お仕事向きパーカー”の特徴は
――同じパーカーというアイテムでも、デザインや素材で「清潔感」や「きちんと感」は変わってくるでしょうか?
角:デザインや素材はたしかに多少関係はあります。この定義自体はそもそも細かく設定されているわけではないので難しいところです。「強いて言うなら」の話にはなりますが……
ロゴデザインのもの、生地がしっかりしていないもの、マットな質感のコットン素材のパーカーはカジュアル度が高い印象を与えますね。アパレル企業など、服装の自由度が特に高い職種以外では避けた方が無難かもしれません。それよりは、スムース生地でツヤ、光沢感のあるもので、単色無地もののほうが“会社向きなパーカー”ではあります。
これらはあくまで「きちんと感を出したいなら」のお話で、これを着ないとNGというわけではありません。
◆パーカーで「だらしなく見える人」の特徴
――せっかくなので、パーカーの着こなしについてもお話を聞かせてください。同年代でも、パーカーが似合って素敵な人もいれば、逆に老けて見えたり、だらしなく見えたりする人もいます。パーカーで残念に見えてしまう人の特徴は?
角:まず、パーカーでだらしなく見える人の特徴は「清潔感がないこと」です。具体的には、フードがつぶれている、洗濯ジワがついている、フードの紐がほつれている、裾リブのストレッチが伸び切っている、食べカス・ゴミ・シミがついているなど、不潔要素があるパーカーを着ていれば、コーデに関係なくだらしなく見えてしまいます。
――長年着ていると自分では気づきにくいかもしれません。時々チェックした方がいいですね。
◆パーカーを着ると老けて見えるなら、“色”を変えてみて
角:あとは、“パーカーでちょっと古く見えてる人”の特徴なのですが、「むかし流行っていて、今は流行っていないデザイン」が要注意です。例えば男性の場合、スタッズやドクロ、ラインストーンなどのちょっとイカついデザインですね。「ちょい悪な俺」というブランディングが、若作りに見られることはあるかと思います。
女性の場合は、身幅がジャストサイズでフードが小さめ、ジップアップタイプ、やや薄手の生地、杢調素材のパーカーは昔の定番パーカーの要素なので“古い感じ”が出やすいです。
それから、大人女性はベージュ・グレー・カーキなどのくすんだ色だと顔色が悪く見えて老け感が出てしまいがちなので、着こなしでカバーするか、パーカーの色を白もしくは黒・ネイビーにすると良いですね。
◆流行のシルエットを着るのは「若作り」とは違う
――パーカーおじさん問題から、パーカーの注意点まで色々とお聞きしました。
角:最後に一つだけ。動画内で妹尾さんは「若い人が着る服を顔が老けてるおじさんが着るからミスマッチがイタい」とされていますが、ファッションにおける若作りは「若い頃に似合っていた自慢の服・昔流行りだったけど今は終わってるデザインの服を着ている」というほうがパッと見の“イタ見え感”が強い印象です。
パーカーはそれこそ、定番服。過度にうるさいデザインなどでなければ、昔流行したものより、今流行りのシルエットの服を着ている方がよほど若見えします。そのあたりは、ぜひ皆さんにお伝えしたいところです。
<コメント&イラスト/角佑宇子 取材・文/女子SPA!編集部>
【角 佑宇子】
(すみゆうこ)ファッションライター・スタイリスト。スタイリストアシスタントを経て2012年に独立。過去のオシャレ失敗経験を活かし、日常で使える、ちょっとタメになる情報を配信中。2023年9月、NHK『あさイチ』に出演。インスタグラムは@sumi.1105