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秋ドラマ名作ベスト5。壮大な“日曜劇場”も感動したけど、圧倒的だったNo.1傑作は

女子SPA! 2024年12月24日 8時46分

秋クールのドラマが続々と最終回を迎えています。特にプライム帯(19~23時放送)の良作が多かった今クール。毎クールの全ドラマチェックを欠かさない筆者が、プライム帯のなかから好みで選んだ“勝手にベスト5”を発表します。

※以下、各作品の核に触れるネタバレを含みます(最終回のネタバレはしていません)。

◆噓解きレトリック

鈴鹿央士と松本穂香がダブル主演を務めた『噓解きレトリック』(フジテレビ系)は、温かな世界線が尊い作品でした。

鋭い観察眼を持つ探偵・祝左右馬(いわい・そうま/鈴鹿央士)と、人の“嘘”が聞き分けられる探偵助手の浦部鹿乃子(うらべ・かのこ/松本穂香)のコンビが、昭和初期の九十九夜町(つくもやちょう)を舞台に困りごとを解決していきます。本作には、難解なトリック解明も派手なアクションもありません。事件当事者たちの“嘘”を紐解いていくことによって、真実が明らかになっていくのです。

◆唯一無二のドラマに仕上がっていた

ハラハラする展開は少なくとも、“嘘”が解かれる度に、関係者の“閉ざされた心”も解かれていく温かさがやたらと沁みる。特に鹿乃子の母・フミ(若村麻由美)が故郷から鹿乃子を訪ね、ふたりの間にあった優しい“嘘”が解かれた第10話は涙なくしては観られませんでした。そして、飄々(ひょうひょう)としながらも器が大きく、相手をさり気なく包み込む左右馬が、本当に男前!

レトロな世界観と鈴鹿×松本をはじめとする登場人物たちが物語にマッチして、唯一無二のドラマに仕上がっていました。

◆宙わたる教室

窪田正孝主演でドラマ化した『宙わたる教室』(NHK総合ほか)は、まさに大人の青春ドラマ! 秀逸でした。

年齢もバックグラウンドもバラバラな生徒たちが通う定時制高校が物語の舞台。大学の助教授だった藤竹(窪田正孝)が理科教師として定時制高校に赴任して、さまざまな事情を抱えた生徒たち(小林虎之介、伊東蒼、ガウ、イッセー尾形)と科学部を新設。世代も性別も、育ってきた環境も、抱えている事情も違う科学部のメンバーが、力を合わせて「火星クレーターの再現」を学会で発表することに挑みます。

◆権威につぶされた教師と、不平等を知る生徒たち

この作品は一貫して、“諦めたものを取り戻す場所”をベースに、登場人物たちの成長を描いていました。かつて「科学の前では、みな平等」という考えを権威につぶされた藤竹と、平等ではないことを思い知らされてきた生徒たちが支え合っていくことで、大きな成果を生み出すのです。

平等ではなくとも、一進一退したとしても、“人は誰もが変われる”。説得力のある彼らの“成長”に、勇気をもらった視聴者は多いのではないでしょうか。

◆全領域異常解決室

実は正直、第3話くらいで視聴を離脱しかけるも、途中から急激に引き込まれたのが『全領域異常解決室』(フジテレビ系)です。特に、大ヒットドラマシリーズ『SPEC』が好きな人には強く勧めたい!

はじめは、藤原竜也演じる超常現象のスペシャリスト・興玉雅(おきたま・みやび)が、最先端科学でも解明できない、不可解な異常事件を解決する物語としてスタート。神隠し事件などで犯行声明を出していた謎の人物“ヒルコ”の謎を追っていました。しかし第5話のラストに急展開。

◆変わることのない人間の営みと現代の闇を描く

興玉は、「全領域異常解決室」(通称“ゼンケツ”)の一員である雨野小夢(広瀬アリス)に「“やおよろずの神々”が、今もそれぞれの時代の人間の姿をして生きている」と説明し、「僕も神です」と告げました。えっえっえーーーー?! と大混乱! “ヒルコ”は、自分に不都合な“神”の御霊をもつ人間(神)たちを消していたというではありませんか。

そこからも事件を通じて二転三転するたびに、物語の見え方が変わりどんどん引き込まれていきました。好き嫌いの分かれる分野であり、ツッコミどころもありましたが、今も“やおよろずの神々”を大切にする日本を舞台に、変わることのない人間の営みと現代の闇を描く興味深い作品でした。

◆海に眠るダイヤモンド

今回の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)は、とにかく壮大で豪華! というだけではない作品です。

1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島で起きたさまざまな物語が、主人公・鉄平(神木隆之介)のノートに記され、それは現代に生きる鉄平とそっくりなホストでありもう1人の主人公・玲央(神木隆之介/二役)へと繋がっていきます。

鉄平を主人公とする端島編は、“何もないけれど夢と活力に満ちあふれた時代”を生きる鉄平をはじめとする若者たち(杉咲花、土屋太鳳、池田エライザ、清水尋也、斎藤工)による群像劇。繊細な心理描写とともにイキイキと描かれており胸が高まりました。

一方で、無気力なホスト・玲央を中心とした“一見して何でもあるけれど若者が夢を持てない”現代編は、謎も多く「端島編がどう現代に結びついていくのか」に注目が集まりました。

◆過去と現在、未来の繋がりを、愛と優しさをもって伝える

入念に描かれた点と点が繋がっていく、脚本家・野木亜紀子氏の構成はあっぱれ! 登場人物たちの心情を浮き彫りにし美しく伝える監督・塚原あゆ子氏の手腕も光りました。

私たちのイマは過去を懸命に生きた人たちによって創られており、私たちのイマが未来の人たちの礎(いしずえ)になる。そんな当たり前のことを、愛と優しさをもって伝えてくれた純度の高い人間ドラマだったと思います。

◆ライオンの隠れ家

そして筆者の今期No.1は、『ライオンの隠れ家』(TBS系)です。市役所で真面目に働く兄・洸人(ひろと/柳楽優弥)と、自閉スペクトラム症の弟・美路人(みちと/坂東龍汰)のところに、異母姉・愛生(あおい/尾野真千子)の息子・愁人(しゅうと/佐藤大空)が現れたことで、事件に巻き込まれていく物語。

病気や障がいのある兄弟姉妹がいる「きょうだい児」、そして「ヤングケアラー」「虐待・DV」などの社会問題にも切り込んだ内容が描かれた本作では、不穏な展開が続きました。しかし、洸人×美路人×愁人の3人が懸命に生活を守ろうと織りなす空気感が、愛と優しさに満ちていて絶妙。

◆サスペンスではなく、心の葛藤を描いたヒューマンドラマ

登場人物たち一人ひとりが丁寧に描かれており、演じる役者さんたちの演技の解像度が高かったことも、本作の魅力です。記者の在り方について悩み続けた楓(桜井ユキ)、愛生と愁人に暴力をふるってしまった父親・祥吾(向井理)の心の闇。そして、すべての事件は解決しハッピーエンドかと思われた第10話の最後に洸人が失踪。サスペンスではなく、兄弟の心の葛藤を丁寧に描いたヒューマンドラマだったと知らしめました。

筆者は完全にロス確定です。続編はないかもしれないけど、またこの兄弟に会いたい!

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他にも、夫婦が3000万円をネコババしたことからドツボにはまっていく『3000万』(NHK総合ほか)や、良作な医療ドラマシリーズになった『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)に、松下洸平の新たな一面が光った『放課後カルテ』(日本テレビ系)などなど、今期は良作が目白押しでした。1月の冬クールドラマ開始前に、観返したいと思います。

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201

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