漫才日本一を決める『M-1グランプリ2024』が、ABCテレビ・テレビ朝日系で12月22日に生放送される。
◆今年の審査員は9人
今回の『M-1グランプリ』は第20回の節目で、審査員も顔ぶれが大幅に変わり、石田明(NON STYLE)、海原ともこ(海原やすよ ともこ)、柴田英嗣(アンタッチャブル)、哲夫(笑い飯)、博多大吉(博多華丸・大吉)、塙宣之(ナイツ)、山内健司(かまいたち)、礼二(中川家)、若林正恭(オードリー)の9人。山内、若林は、初めて決勝大会の審査員を務める。
昨年と比較して審査員を外れたのは、松本人志(ダウンタウン)、山田邦子、富澤たけし(サンドウィッチマン)。審査員の平均年齢は約5歳若返り、歴代王者たちが審査した2015年と同じ9人審査を採用する。
果たして、今年の審査員の顔ぶれはどのコンビに有利に動くのだろうか、また新9人体制は機能するのか? 元テレビ局スタッフが、決勝に進出したコンビではなく審査員を勝手に論評したい。
◆外れたサンド富澤を残念がる声
まず、審査員を外れた3人の中で、もっとも驚きなのがサンドウィッチマン富澤だ。
現役の漫才師である富澤は、これまで審査員を務める中でおもしろい得点をつけてきた。2022年の最高得点はさや香の97点で、2023年はヤーレンズの97点と優勝コンビのウエストランド以外の2組を評価。いい意味で、場を荒らす採点を行っていて、視聴者にはおもしろい審査員だった。
本人は昨年大会の終了後にラジオ番組で“審査員を休みたい”旨を発言していたので今回は外れたのかもしれないが、芸人としても絶大な人気があるだけに、SNSで寂しがる声が多く書き込まれた。
そんな富澤に変わって新たに選出されたのが、柴田、山内、若林なのだが、もっとも注目すべきはオードリー・若林正恭だ。
◆新たな審査員にかかる期待
若林といえば、現在では多数の番組を担当する売れっ子MCだが、かつてはズレ漫才を開発して2008年大会で準優勝。独自のお笑い理論も持つ芸人であり、トーク番組『あちこちオードリー』(テレビ東京系)では、さまざまな芸人と熱い討論を繰り広げている。
また、今年開催した『オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム』では、圧巻の30分以上にわたる漫才を見せキレの良さを披露。そんな能力値は高い若林だが、誰かを批評し、採点するイメージがないだけに、どんな審査基準と得点を出すのか今から気になるところだ。
また、柴田と若林はテレビ番組で、周囲の調和を大切にするバランサーとして活躍することが多い。それだけに、シビアな審査ができるのか注目したい。
とはいえ、3人も新規の審査員が加入したことで大荒れになりそうで、おもしろい大会になることは間違いなさそうだ。
◆今回の審査員の顔ぶれで、有利になるコンビは誰?
さて、今回の審査員の顔ぶれを見て、どのコンビが有利だろうか?
まず、新規の審査員が3人いることで、トップバッターが不利になる可能性が大。3人とも手練れの芸人だとはいえ、トップバッターの点数付けは迷うところ。
昨年の令和ロマンは、トップバッターとして優勝を果たしている。とはいえ、過去の成績を見ても「基準点」を作られるだけに、最初の出順が不利なのは間違いない。しかも、柴田、山内、若林は人生で初めての『M-1グランプリ』での採点なだけに、すんなりいくはずもない。そうなれば、高い得点よりは低めの得点になる可能性が大だ。
また、個別に見ていくと、石田明は今年10月に漫才論を詰め込んだ『答え合わせ』(マガジンハウス)を発売するなど理論派として有名。今回の審査員の中で、「ハマるか」が最も大きくなりそうで、得点にバラツキが出るかもしれない。
その点、石田を尊敬している髙比良くるまを擁する令和ロマンは、石田の目指す漫才に近いものを持っている。『答え合わせ』を読んだ印象で言えば、王道の良さを取り入れつつ進化している漫才を石田は好むように思う。
そういった意味で、石田が審査員にいることで王道と進化の両面性を持つ令和ロマンの2連覇はグッと近づいたような気もする。
◆審査が荒れそうな中、台風の目はダークホースの新人
その令和ロマンだが、2連覇が取り沙汰されていることで、審査が大荒れになる確率を上げている。予選を見る限りでは令和ロマンの仕上がりが高いだけに、審査員も警戒しているだろう。審査にもバイアスがかかる可能性は否定できない。
それだけに、得点付けは過去になく難しくなっている。大荒れになりそうだと推測するのだが、そうなると目新しく勢いのあるエバース、ジョックロック、バッテリィズに加え、敗者復活を勝ち上がる1組が有利になるのではないか?
中でも、メディアでの活躍や注目度が低いジョックロックが台風の目になると考える。どれだけ多彩なネタをジョックロックが用意できるかが問題になるが、臭い芝居と絶叫系のツッコミを繰り広げるコント漫才はパンチ力が高い。
また、ツッコミの福本ユウショウはファイナリスト記者会見で、自身の特徴的なツッコミポーズがCMに使いやすいと発言し、大暴れできるハートの強さを持っている。大会が荒れるほどに力を発揮できそうで、2連覇の令和ロマンに挑むダークホースのジョックロックという展開を見てみたい。
◆M-1グランプリ史上初の話題性のある大会に
さて、ここまで勝手に審査員を批評したが、これだけ話題性があるのは20回の歴史の中でも初。それだけに、優勝コンビだけでなく大会そのものがどんな盛り上がりを見せるか楽しみだ。
審査員がどんな得点を付けるかまで注目して、記念すべき『M-1グランプリ2024』の生放送を見ることにしたい。
<文/ゆるま小林>
【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆
◆今年の審査員は9人
今回の『M-1グランプリ』は第20回の節目で、審査員も顔ぶれが大幅に変わり、石田明(NON STYLE)、海原ともこ(海原やすよ ともこ)、柴田英嗣(アンタッチャブル)、哲夫(笑い飯)、博多大吉(博多華丸・大吉)、塙宣之(ナイツ)、山内健司(かまいたち)、礼二(中川家)、若林正恭(オードリー)の9人。山内、若林は、初めて決勝大会の審査員を務める。
昨年と比較して審査員を外れたのは、松本人志(ダウンタウン)、山田邦子、富澤たけし(サンドウィッチマン)。審査員の平均年齢は約5歳若返り、歴代王者たちが審査した2015年と同じ9人審査を採用する。
果たして、今年の審査員の顔ぶれはどのコンビに有利に動くのだろうか、また新9人体制は機能するのか? 元テレビ局スタッフが、決勝に進出したコンビではなく審査員を勝手に論評したい。
◆外れたサンド富澤を残念がる声
まず、審査員を外れた3人の中で、もっとも驚きなのがサンドウィッチマン富澤だ。
現役の漫才師である富澤は、これまで審査員を務める中でおもしろい得点をつけてきた。2022年の最高得点はさや香の97点で、2023年はヤーレンズの97点と優勝コンビのウエストランド以外の2組を評価。いい意味で、場を荒らす採点を行っていて、視聴者にはおもしろい審査員だった。
本人は昨年大会の終了後にラジオ番組で“審査員を休みたい”旨を発言していたので今回は外れたのかもしれないが、芸人としても絶大な人気があるだけに、SNSで寂しがる声が多く書き込まれた。
そんな富澤に変わって新たに選出されたのが、柴田、山内、若林なのだが、もっとも注目すべきはオードリー・若林正恭だ。
◆新たな審査員にかかる期待
若林といえば、現在では多数の番組を担当する売れっ子MCだが、かつてはズレ漫才を開発して2008年大会で準優勝。独自のお笑い理論も持つ芸人であり、トーク番組『あちこちオードリー』(テレビ東京系)では、さまざまな芸人と熱い討論を繰り広げている。
また、今年開催した『オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム』では、圧巻の30分以上にわたる漫才を見せキレの良さを披露。そんな能力値は高い若林だが、誰かを批評し、採点するイメージがないだけに、どんな審査基準と得点を出すのか今から気になるところだ。
また、柴田と若林はテレビ番組で、周囲の調和を大切にするバランサーとして活躍することが多い。それだけに、シビアな審査ができるのか注目したい。
とはいえ、3人も新規の審査員が加入したことで大荒れになりそうで、おもしろい大会になることは間違いなさそうだ。
◆今回の審査員の顔ぶれで、有利になるコンビは誰?
さて、今回の審査員の顔ぶれを見て、どのコンビが有利だろうか?
まず、新規の審査員が3人いることで、トップバッターが不利になる可能性が大。3人とも手練れの芸人だとはいえ、トップバッターの点数付けは迷うところ。
昨年の令和ロマンは、トップバッターとして優勝を果たしている。とはいえ、過去の成績を見ても「基準点」を作られるだけに、最初の出順が不利なのは間違いない。しかも、柴田、山内、若林は人生で初めての『M-1グランプリ』での採点なだけに、すんなりいくはずもない。そうなれば、高い得点よりは低めの得点になる可能性が大だ。
また、個別に見ていくと、石田明は今年10月に漫才論を詰め込んだ『答え合わせ』(マガジンハウス)を発売するなど理論派として有名。今回の審査員の中で、「ハマるか」が最も大きくなりそうで、得点にバラツキが出るかもしれない。
その点、石田を尊敬している髙比良くるまを擁する令和ロマンは、石田の目指す漫才に近いものを持っている。『答え合わせ』を読んだ印象で言えば、王道の良さを取り入れつつ進化している漫才を石田は好むように思う。
そういった意味で、石田が審査員にいることで王道と進化の両面性を持つ令和ロマンの2連覇はグッと近づいたような気もする。
◆審査が荒れそうな中、台風の目はダークホースの新人
その令和ロマンだが、2連覇が取り沙汰されていることで、審査が大荒れになる確率を上げている。予選を見る限りでは令和ロマンの仕上がりが高いだけに、審査員も警戒しているだろう。審査にもバイアスがかかる可能性は否定できない。
それだけに、得点付けは過去になく難しくなっている。大荒れになりそうだと推測するのだが、そうなると目新しく勢いのあるエバース、ジョックロック、バッテリィズに加え、敗者復活を勝ち上がる1組が有利になるのではないか?
中でも、メディアでの活躍や注目度が低いジョックロックが台風の目になると考える。どれだけ多彩なネタをジョックロックが用意できるかが問題になるが、臭い芝居と絶叫系のツッコミを繰り広げるコント漫才はパンチ力が高い。
また、ツッコミの福本ユウショウはファイナリスト記者会見で、自身の特徴的なツッコミポーズがCMに使いやすいと発言し、大暴れできるハートの強さを持っている。大会が荒れるほどに力を発揮できそうで、2連覇の令和ロマンに挑むダークホースのジョックロックという展開を見てみたい。
◆M-1グランプリ史上初の話題性のある大会に
さて、ここまで勝手に審査員を批評したが、これだけ話題性があるのは20回の歴史の中でも初。それだけに、優勝コンビだけでなく大会そのものがどんな盛り上がりを見せるか楽しみだ。
審査員がどんな得点を付けるかまで注目して、記念すべき『M-1グランプリ2024』の生放送を見ることにしたい。
<文/ゆるま小林>
【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆