配信系オリジナルの様々なドラマが話題を集めた2024年。配信ならではの過激なテーマを扱ったものに加え、見応えのある映像美に惹かれるもの、ハラハラして夜な夜な一気見してしまうようなものなど、良作が数多く制作されました。今年配信されたもので、冬休みの一気見におすすめの作品をご紹介します。
※以下、各作品の予告編に含まれる内容以上のネタバレはありません。
◆『極悪女王』(Netflix)
まずは今年、話題性もインパクトも大きかったNetflixオリジナルドラマ『極悪女王』。1980年代に女子プロレス界で旋風を巻き起こしたダンプ松本を、ゆりやんレトリィバァが体当たりで演じています。ライオネス飛鳥を演じた剛力彩芽と長与千種を演じた唐田えりか両名の熱演も注目を集めました。
◆見どころは? 物語のテンポがよくて一気見にも最適!
物語はダンプ松本の幼少期からはじまり、3人の少女がプロレスラーを目指していくという展開です。特に見どころなのは、少女だった松本香が覚醒し、徹底した悪役レスラー・ダンプ松本へと変貌していくシーン。そして最終回の髪切デスマッチにおける、ゆりやん×唐田の体を張った迫力あるプロレスシーンです。ふたりの女優魂がぶつかり合う音が聞こえるようで、胸がいっぱいになる感動のラストでした。
映像やセット、スタイリングに至るまで当時の空気を色濃く表現しており、どっぷりとその世界観に浸れる演出の妙も光ります。また、全5話の本作は、物語のテンポがよくて一気見には最適! あの熱く、切なくもあるガチンコバトルは必見です。
◆『【推しの子】』(Prime Video)
Amazonと東映のタッグで制作されたドラマ『【推しの子】』は想像以上の面白さでした。社会現象になるほどのヒットとなった、原作:赤坂アカ氏、作画:横槍メンゴ氏による同名漫画が原作です。
伝説のアイドル・アイ(齋藤飛鳥)の子ども“推しの子”として転生した双子のアクア(櫻井海音)とルビー(齊藤なぎさ)。母の死の真相を追いかける兄と、母のようなアイドルになることを目指す妹が芸能界に足を踏み入れ、その光と影に飲み込まれていくさまを描いています。
◆原作を心からリスペクトして制作されている
実写化の一報が流れたときは、ネガティブな反応が多かった印象ですが、前評判を吹き飛ばすクオリティの仕上がり。原作を心からリスペクトしているスタッフ・キャストで制作されていることがよく分かります。
また、主要キャストの若手俳優たちの演技もフレッシュながら秀逸でした。特に個人的“推し”は、昨年のドラマ『泥濘の食卓』(テレビ朝日系)で、アクアを演じる櫻井海音と泥仕合を展開した原菜乃華! 元天才子役の女優でアイドルとして活動することになる有馬かなを演じ、心情を繊細に表現しています。
12月20日からドラマの続きを描く映画『【推しの子】-The Final Act-』も公開中。物語の鍵を握る謎の男“カミキヒカル”を二宮和也が演じることが発表されました。全8話を視聴後に、映画館に足を運ぶフルセットを堪能してみては?
◆『十角館の殺人』(Hulu)
ミステリー界の巨匠・綾辻行人氏の代表作「館」シリーズの第一作目を実写映像化したHulu作品『十角館の殺人』もおすすめです。
元ミステリ研究会メンバー・江南孝明(奥智哉)と、江南と共に謎を追い求めることになる島田潔(青木崇高)が「死者からの手紙」を発端に、半年前に亡くなった天才建築家・中村青司(仲村トオル)の死の真相を紐解いていく作品です。
こちらも主要キャストは若手が多いですが、それぞれがもつ人間味をとてもよく表現。そこに青木崇高が絡むことにより、見応えのある演技合戦が楽しめます。
◆映像化不可能とされていたトリックを、どのように実写化?
多くの人に読まれた作品なので、ミステリー好きなら結末を知っている人も多いと思いますが、これまで長い間「映像化不可能」とされていたトリックを「どうやって実写化しているのか」を確認するという意味でも、一見の価値あり。もちろん、原作未読でも堪能できます。
また12月30日から1月3日にかけて、深夜に地上波放送(日本テレビ/関東ローカル)されることが決定! TVerでの見逃し配信もあるようなので、Huluに加入せずとも観られます。
◆『1122 いいふうふ』(Prime Video)
渡辺ペコ氏の漫画『1122』をドラマ化した、『1122 いいふうふ』も良作です。
一子(いちこ/高畑充希)と二也(おとや/岡田将生)は、結婚7年目。セックスレスで子どももいないけど仲良しなふたりが“いい夫婦”でいるために、“婚外恋愛許可制”を導入。その後の日常と葛藤を細やかに描いています。
一子は夫の恋人を公認しながら自分は女性用風俗に行くか迷い、二也はダブル不倫をしているけれど優しくて家庭的。原作でも描かれた「セックスレスの夫婦は不幸なのか」「女性の性欲はどう解消するか」といった赤裸々なテーマが、配信ドラマならではの密度で散りばめられています。
◆真剣に向き合うふたりが愛おしく、ちょっぴり羨ましい
一見ふざけたことでも、当事者夫婦にとっては大真面目。そんな当事者としての人間らしさや業のおかしみがリアルに映し出されていて、真剣に向き合うふたりを愛おしく、ちょっぴり羨ましく感じてしまいます。
個人的には毎話に必ず盛り込まれる、夫・二也の“そこじゃない感”ある行動が、リアルにパートナーがしたり言ったりするとイラっとするようなリアリティでツボでした。
今年の11月、リアルでも結婚を報告した高畑充希×岡田将生の幸せを願いながら、再視聴したい1本です。
◆『地面師たち』(Netflix)
そして、今年最も反響が大きかった配信オリジナルドラマは、Netflix『地面師たち』ではないでしょうか。
実際に起きた巨額詐欺事件「積水ハウス地面師詐欺事件」をモチーフにした新庄耕氏の同名小説を原作に、地主になりすまして不動産売却を持ちかけては巨額の金を騙しとる詐欺師集団“地面師”を描いた作品です。
過激なシーンとともに、全7話を通して息もつかせぬハラハラ展開で、まさに一気見に最適! ダブル主演の綾野剛と豊川悦司をはじめ、小池栄子、ピエール瀧、北村一輝、山本耕史、池田エライザ、リリー・フランキーなど豪華キャストで制作されました。
◆“人間の欲”を余すところなく描いて視聴者を刺激
ノンフィクション要素を取り込んだ社会派クライムサスペンス作品として人気のジャンル。しかしここまで話題になったのは、所有欲、金銭欲、感楽欲、出世欲、承認欲求……などなど現代的な“人間の欲”を余すところなく描き、視聴者を刺激したところではないでしょうか。
特に豊川悦司が演じた地面師グループのリーダー・ハリソン山中は、存在そのものにヒリヒリさせられます。まさに悪魔的。続編が強く望まれるその理由を、ぜひその目で確かめてほしい良作です。
◆『ゴールデンカムイ』『さよならのつづき』も見逃せない
ほかにも今年1月に公開されて大ヒットした劇場版の続編で、野田サトル氏の超人気漫画を実写化した『ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編』(WOWOWオンデマンド)や、有村架純×坂口健太郎×生田斗真がラブストーリーを織りなす『さよならのつづき』(Netflix)も見逃せません。配信系は初月無料のチャンネルも多いので、冬休み限定で加入して一気見してはいかがでしょうか?
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201
※以下、各作品の予告編に含まれる内容以上のネタバレはありません。
◆『極悪女王』(Netflix)
まずは今年、話題性もインパクトも大きかったNetflixオリジナルドラマ『極悪女王』。1980年代に女子プロレス界で旋風を巻き起こしたダンプ松本を、ゆりやんレトリィバァが体当たりで演じています。ライオネス飛鳥を演じた剛力彩芽と長与千種を演じた唐田えりか両名の熱演も注目を集めました。
◆見どころは? 物語のテンポがよくて一気見にも最適!
物語はダンプ松本の幼少期からはじまり、3人の少女がプロレスラーを目指していくという展開です。特に見どころなのは、少女だった松本香が覚醒し、徹底した悪役レスラー・ダンプ松本へと変貌していくシーン。そして最終回の髪切デスマッチにおける、ゆりやん×唐田の体を張った迫力あるプロレスシーンです。ふたりの女優魂がぶつかり合う音が聞こえるようで、胸がいっぱいになる感動のラストでした。
映像やセット、スタイリングに至るまで当時の空気を色濃く表現しており、どっぷりとその世界観に浸れる演出の妙も光ります。また、全5話の本作は、物語のテンポがよくて一気見には最適! あの熱く、切なくもあるガチンコバトルは必見です。
◆『【推しの子】』(Prime Video)
Amazonと東映のタッグで制作されたドラマ『【推しの子】』は想像以上の面白さでした。社会現象になるほどのヒットとなった、原作:赤坂アカ氏、作画:横槍メンゴ氏による同名漫画が原作です。
伝説のアイドル・アイ(齋藤飛鳥)の子ども“推しの子”として転生した双子のアクア(櫻井海音)とルビー(齊藤なぎさ)。母の死の真相を追いかける兄と、母のようなアイドルになることを目指す妹が芸能界に足を踏み入れ、その光と影に飲み込まれていくさまを描いています。
◆原作を心からリスペクトして制作されている
実写化の一報が流れたときは、ネガティブな反応が多かった印象ですが、前評判を吹き飛ばすクオリティの仕上がり。原作を心からリスペクトしているスタッフ・キャストで制作されていることがよく分かります。
また、主要キャストの若手俳優たちの演技もフレッシュながら秀逸でした。特に個人的“推し”は、昨年のドラマ『泥濘の食卓』(テレビ朝日系)で、アクアを演じる櫻井海音と泥仕合を展開した原菜乃華! 元天才子役の女優でアイドルとして活動することになる有馬かなを演じ、心情を繊細に表現しています。
12月20日からドラマの続きを描く映画『【推しの子】-The Final Act-』も公開中。物語の鍵を握る謎の男“カミキヒカル”を二宮和也が演じることが発表されました。全8話を視聴後に、映画館に足を運ぶフルセットを堪能してみては?
◆『十角館の殺人』(Hulu)
ミステリー界の巨匠・綾辻行人氏の代表作「館」シリーズの第一作目を実写映像化したHulu作品『十角館の殺人』もおすすめです。
元ミステリ研究会メンバー・江南孝明(奥智哉)と、江南と共に謎を追い求めることになる島田潔(青木崇高)が「死者からの手紙」を発端に、半年前に亡くなった天才建築家・中村青司(仲村トオル)の死の真相を紐解いていく作品です。
こちらも主要キャストは若手が多いですが、それぞれがもつ人間味をとてもよく表現。そこに青木崇高が絡むことにより、見応えのある演技合戦が楽しめます。
◆映像化不可能とされていたトリックを、どのように実写化?
多くの人に読まれた作品なので、ミステリー好きなら結末を知っている人も多いと思いますが、これまで長い間「映像化不可能」とされていたトリックを「どうやって実写化しているのか」を確認するという意味でも、一見の価値あり。もちろん、原作未読でも堪能できます。
また12月30日から1月3日にかけて、深夜に地上波放送(日本テレビ/関東ローカル)されることが決定! TVerでの見逃し配信もあるようなので、Huluに加入せずとも観られます。
◆『1122 いいふうふ』(Prime Video)
渡辺ペコ氏の漫画『1122』をドラマ化した、『1122 いいふうふ』も良作です。
一子(いちこ/高畑充希)と二也(おとや/岡田将生)は、結婚7年目。セックスレスで子どももいないけど仲良しなふたりが“いい夫婦”でいるために、“婚外恋愛許可制”を導入。その後の日常と葛藤を細やかに描いています。
一子は夫の恋人を公認しながら自分は女性用風俗に行くか迷い、二也はダブル不倫をしているけれど優しくて家庭的。原作でも描かれた「セックスレスの夫婦は不幸なのか」「女性の性欲はどう解消するか」といった赤裸々なテーマが、配信ドラマならではの密度で散りばめられています。
◆真剣に向き合うふたりが愛おしく、ちょっぴり羨ましい
一見ふざけたことでも、当事者夫婦にとっては大真面目。そんな当事者としての人間らしさや業のおかしみがリアルに映し出されていて、真剣に向き合うふたりを愛おしく、ちょっぴり羨ましく感じてしまいます。
個人的には毎話に必ず盛り込まれる、夫・二也の“そこじゃない感”ある行動が、リアルにパートナーがしたり言ったりするとイラっとするようなリアリティでツボでした。
今年の11月、リアルでも結婚を報告した高畑充希×岡田将生の幸せを願いながら、再視聴したい1本です。
◆『地面師たち』(Netflix)
そして、今年最も反響が大きかった配信オリジナルドラマは、Netflix『地面師たち』ではないでしょうか。
実際に起きた巨額詐欺事件「積水ハウス地面師詐欺事件」をモチーフにした新庄耕氏の同名小説を原作に、地主になりすまして不動産売却を持ちかけては巨額の金を騙しとる詐欺師集団“地面師”を描いた作品です。
過激なシーンとともに、全7話を通して息もつかせぬハラハラ展開で、まさに一気見に最適! ダブル主演の綾野剛と豊川悦司をはじめ、小池栄子、ピエール瀧、北村一輝、山本耕史、池田エライザ、リリー・フランキーなど豪華キャストで制作されました。
◆“人間の欲”を余すところなく描いて視聴者を刺激
ノンフィクション要素を取り込んだ社会派クライムサスペンス作品として人気のジャンル。しかしここまで話題になったのは、所有欲、金銭欲、感楽欲、出世欲、承認欲求……などなど現代的な“人間の欲”を余すところなく描き、視聴者を刺激したところではないでしょうか。
特に豊川悦司が演じた地面師グループのリーダー・ハリソン山中は、存在そのものにヒリヒリさせられます。まさに悪魔的。続編が強く望まれるその理由を、ぜひその目で確かめてほしい良作です。
◆『ゴールデンカムイ』『さよならのつづき』も見逃せない
ほかにも今年1月に公開されて大ヒットした劇場版の続編で、野田サトル氏の超人気漫画を実写化した『ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編』(WOWOWオンデマンド)や、有村架純×坂口健太郎×生田斗真がラブストーリーを織りなす『さよならのつづき』(Netflix)も見逃せません。配信系は初月無料のチャンネルも多いので、冬休み限定で加入して一気見してはいかがでしょうか?
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201