これまでのパブリックイメージを覆(くつがえ)す新境地――菜々緒さん主演の10月期ドラマ『無能の鷹』(テレビ朝日系)は、彼女の新たなキャラクターを引き出した良作でした。
◆菜々緒さんが俳優として頭角を現したのは悪女キャラ
そもそも菜々緒さんが俳優として頭角を現したのは、悪女キャラとしてでした。
2014年に沢尻エリカさん主演で放送された『ファースト・クラス』(フジテレビ系)で、コネ入社でファッション誌編集部に居座っている腹黒・毒舌のクセ強キャラを好演し、悪女演技に開眼しました。
2015年には松坂桃李さん主演の『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(フジテレビ系)にて、タイトルに「悪女」と冠されている、まさにその悪女役に抜擢。
2018年には満を持してGP(ゴールデン・プライム)帯の連ドラ初主演作『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)で、「悪女を超えた悪魔」というダークヒロインを演じ切ったのです。
◆悪女キャラの次に挑んだのが「しごでき」キャラ
悪女キャラをものにした菜々緒さんが次に挑んだのは、しごできキャラでした。
2018年の木村拓哉さん主演ドラマ『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)、2020年の木村文乃さん主演ドラマ『七人の秘書』(テレビ朝日系)、2021年の上白石萌音さん主演のドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)、2021年の鈴木亮平さん主演のドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)などで、次々としごできキャラでレギュラー出演。
悪女キャラが似合う俳優からアップデートし、しごできキャラも十八番としていったというわけです。
◆“強い女性”が菜々緒のパブリックイメージに
悪女キャラにもしごできキャラにも共通しているのは“強い女性”という印象。それが菜々緒さんのパブリックイメージとなっていました。
そんなパブリックイメージを逆手に取ったのが、最新主演作の『無能の鷹』だったのです。
菜々緒さん演じた主人公・鷹野ツメ子は、ITコンサル会社の営業部に所属する新入社員。エレガントな見た目とスマートな所作で超有能な中堅エース級の風格を備えているのですが……中身は真逆。
◆積み上げて来たキャリアを逆手に取った大胆な役選び
しごでき風なのは表面だけで、PCの起動の仕方がわからない、ダブルクリックやフォルダの意味がわからない、コピー機もまともに使えない、「燃費」を「もえぴ」と読んでしまう。
インテリジェンスを感じさせる落ち着いた口調で「難しいことを考えると頭が痛くなるんです」、悪びれもせずにさわやかな笑顔で「私、“なにがわからないのか”わからない」など、迷言を連発する。
そんなふうにシュールな笑いを生み出していく無能キャラでした。
あまりに菜々緒さんに悪女やしごできの印象が強かったため、“超有能に見える”という物語の根幹設定への説得力が非常に高くなりました。そして仕事が全然できないというキャラがカウンターとなり、新鮮に映ったわけです。
当然そのギャップまで計算にいれたうえで、これまでの積み上げて来たキャリアを逆手に取った、大胆な役選びだったと言えるでしょう。
◆なぜか社会派ドラマのようにも見えるから不思議
鷹野ツメ子は、無能は無能でも愛すべきキャラクターとして描かれており、トンチンカンなことばかりをするのが笑いを誘うのです。
しかも、一見するとなにも考えずに気楽に笑えるドラマなのですが、深読みすると現代社会に一石を投じる問題提起もされているように感じるという、“浅いのに奥深い”という良質さも垣間見えました。
現実社会でも鷹野のような人材を無能だと決めつけてしまう人のほうが無能だし、有能な上司や先輩ほど鷹野のような人材の才能を引き出してあげられるのだという、気づきが得られたのです。
いずれにしても、ダイバーシティ(多様性)が重んじられる現代を映し出した、社会派ドラマのようにも見えるという不思議な作品でした。
◆『無能の鷹』鷹野ツメ子の菜々緒は圧倒的に「かわいい」
いままで悪女キャラとしごできキャラで俳優として存在感を示してきたため、菜々緒さんは「きれい」と評されることが多かったと思いますが、『無能の鷹』の彼女は圧倒的に「かわいい」。
彼女のきれいさを引き出した作品は数あれど、ここまで菜々緒さんのかわいさを引き出した作品はほかになかったでしょう。
そう、『無能の鷹』は菜々緒さんのパブリックイメージを覆して新境地を開拓した作品であり、演じた鷹野ツメ子は“菜々緒史上NO.1”のかわいいキャラクターだったと言っても過言ではありませんでした。
こうして積み上げて来た役者人生を見事に“フリにした”ような『無能の鷹』は、菜々緒さんの新たな代表作になったのです。
<文/堺屋大地>
【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。現在は『現代ビジネス』、『smartFLASH』、『文春オンライン』、『集英社オンライン』などにコラムを寄稿。LINE公式サービスにて、カウンセラーとして年間で約1500件の相談を受けている。Twitter(@SakaiyaDaichi)。
◆菜々緒さんが俳優として頭角を現したのは悪女キャラ
そもそも菜々緒さんが俳優として頭角を現したのは、悪女キャラとしてでした。
2014年に沢尻エリカさん主演で放送された『ファースト・クラス』(フジテレビ系)で、コネ入社でファッション誌編集部に居座っている腹黒・毒舌のクセ強キャラを好演し、悪女演技に開眼しました。
2015年には松坂桃李さん主演の『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(フジテレビ系)にて、タイトルに「悪女」と冠されている、まさにその悪女役に抜擢。
2018年には満を持してGP(ゴールデン・プライム)帯の連ドラ初主演作『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)で、「悪女を超えた悪魔」というダークヒロインを演じ切ったのです。
◆悪女キャラの次に挑んだのが「しごでき」キャラ
悪女キャラをものにした菜々緒さんが次に挑んだのは、しごできキャラでした。
2018年の木村拓哉さん主演ドラマ『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)、2020年の木村文乃さん主演ドラマ『七人の秘書』(テレビ朝日系)、2021年の上白石萌音さん主演のドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)、2021年の鈴木亮平さん主演のドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)などで、次々としごできキャラでレギュラー出演。
悪女キャラが似合う俳優からアップデートし、しごできキャラも十八番としていったというわけです。
◆“強い女性”が菜々緒のパブリックイメージに
悪女キャラにもしごできキャラにも共通しているのは“強い女性”という印象。それが菜々緒さんのパブリックイメージとなっていました。
そんなパブリックイメージを逆手に取ったのが、最新主演作の『無能の鷹』だったのです。
菜々緒さん演じた主人公・鷹野ツメ子は、ITコンサル会社の営業部に所属する新入社員。エレガントな見た目とスマートな所作で超有能な中堅エース級の風格を備えているのですが……中身は真逆。
◆積み上げて来たキャリアを逆手に取った大胆な役選び
しごでき風なのは表面だけで、PCの起動の仕方がわからない、ダブルクリックやフォルダの意味がわからない、コピー機もまともに使えない、「燃費」を「もえぴ」と読んでしまう。
インテリジェンスを感じさせる落ち着いた口調で「難しいことを考えると頭が痛くなるんです」、悪びれもせずにさわやかな笑顔で「私、“なにがわからないのか”わからない」など、迷言を連発する。
そんなふうにシュールな笑いを生み出していく無能キャラでした。
あまりに菜々緒さんに悪女やしごできの印象が強かったため、“超有能に見える”という物語の根幹設定への説得力が非常に高くなりました。そして仕事が全然できないというキャラがカウンターとなり、新鮮に映ったわけです。
当然そのギャップまで計算にいれたうえで、これまでの積み上げて来たキャリアを逆手に取った、大胆な役選びだったと言えるでしょう。
◆なぜか社会派ドラマのようにも見えるから不思議
鷹野ツメ子は、無能は無能でも愛すべきキャラクターとして描かれており、トンチンカンなことばかりをするのが笑いを誘うのです。
しかも、一見するとなにも考えずに気楽に笑えるドラマなのですが、深読みすると現代社会に一石を投じる問題提起もされているように感じるという、“浅いのに奥深い”という良質さも垣間見えました。
現実社会でも鷹野のような人材を無能だと決めつけてしまう人のほうが無能だし、有能な上司や先輩ほど鷹野のような人材の才能を引き出してあげられるのだという、気づきが得られたのです。
いずれにしても、ダイバーシティ(多様性)が重んじられる現代を映し出した、社会派ドラマのようにも見えるという不思議な作品でした。
◆『無能の鷹』鷹野ツメ子の菜々緒は圧倒的に「かわいい」
いままで悪女キャラとしごできキャラで俳優として存在感を示してきたため、菜々緒さんは「きれい」と評されることが多かったと思いますが、『無能の鷹』の彼女は圧倒的に「かわいい」。
彼女のきれいさを引き出した作品は数あれど、ここまで菜々緒さんのかわいさを引き出した作品はほかになかったでしょう。
そう、『無能の鷹』は菜々緒さんのパブリックイメージを覆して新境地を開拓した作品であり、演じた鷹野ツメ子は“菜々緒史上NO.1”のかわいいキャラクターだったと言っても過言ではありませんでした。
こうして積み上げて来た役者人生を見事に“フリにした”ような『無能の鷹』は、菜々緒さんの新たな代表作になったのです。
<文/堺屋大地>
【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。現在は『現代ビジネス』、『smartFLASH』、『文春オンライン』、『集英社オンライン』などにコラムを寄稿。LINE公式サービスにて、カウンセラーとして年間で約1500件の相談を受けている。Twitter(@SakaiyaDaichi)。