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“売れない芸人”に共通する特徴をザコシショウが明かす「YouTubeでバズっても“売れた”とは違う」

女子SPA! 2025年1月14日 15時47分

「地元で冠番組を持ちたい」。そんな長年の野望を、50歳にして叶えたのがピン芸人のハリウッドザコシショウさん。SBS(静岡放送)で月1回放送中のバラエティ番組『冠ザコシの冠冠大冠』もスタートしています。芸人のキャリアが多様化するなか、ベテラン芸人として昨今の若手芸人に対して思うことを聞きました。

◆「やっぱりテレビが一番」だと思う理由

――昨今、芸人さんのキャリアが多様化していますよね。舞台に出る方やYouTuber、小説家、映画監督、俳優、MCなど、いろんな活躍の場があります。ザコシショウさんも、新たなキャリアを考えたりしますか?

ザコシショウ:いや、俺はもうお笑いしかできないし、やりたくない。別にYouTuberになるつもりもないです。実際、お笑いをやって動画で食えている人はほとんどいない。僕はお笑いを続けつつ、YouTubeは趣味なので。必ず観てほしいと思ってないし、文句を言う人は観ないでくださいっていつも言ってます。

――最近の若手芸人さんは、ネット動画に力を入れる方も増えていますよね。その傾向についてはどう思いますか?

ザコシショウ:出られる場があるのは、正直、うらやましいです。昔は、出られる場は舞台かテレビしかなかったし。ネットはテレビよりも観てくれる人が多い分、やり方次第でチャンスはあると思います。

ただ、一方で、YouTubeでお笑い芸人がやっていることって、テレビの真似事が多いなぁとも思います。正直、若手に対しては「YouTubeでバズったからって、自分が売れたと思うなよ」と思ったりします。YouTubeは自分で配信する以上は何回でも出られるかもしれないけど、テレビは笑いを取り続けないと出続けられないから。

――出演者としては、テレビとYouTubeの違いを感じるものですか?

ザコシショウ:全然違います。YouTubeは自分の感覚で作るので、何を言ったっていいし、編集も自分でできる。でも、テレビは放送日や時間が決まっているし、自分が登場するコーナーの尺に合わせて調整しなくちゃいけない。たとえば、30分間のネタ番組の枠に合わせて10組芸人が出るとすれば、1組あたり3分しか出番がないんです。どうやってその短い時間で自分のネタをやれるかが勝負。しかも、その枠をオーディションとかで勝ち取らないといけないから、競争率も高い。

――テレビの場合は、他人と競争して勝ち取らないと、そもそも人目に触れることすらできないってことですね。

ザコシショウ:もし、自分がいまからお笑いを始めるなら、多分最初から動画をやっていると思うんですよ、最初からね。だから、いまの若手の在り方は全然いいと思います。一方で、動画もやりつつテレビ出演も目指したらとは思います。その方が、二本柱になるし、エサはいろんなところに撒いていた方が、売れる可能性も高くなるから、そっちの方が絶対にいいでしょ。

◆最近の若手芸人は、頭がよすぎる

――活躍の場が増える一方で、賞レースでトップを取っても必ずしも売れるわけではないという傾向もありますよね。

ザコシショウ:R-1で優勝した街裏ぴんくは、まさにその代表例。「嘘をつき続けるキャラ」としてブレイクしたけど、中途半端に2枚目ぶるのがよくないなって(笑)。あいつは「お前、おもしろくないな」っていじられたほうが活きるんです。だから、もっと自分のいじられ方を考えたほうがいいと思います。あいつ、かっこつけすぎなんですよ! あと、最近はキャラが面白い漫才師が少ないのも要因かもしれないですね。

――たしかに、学歴も高くて頭の良い若手が増えていますね。

ザコシショウ:みんな頭がいいから、論理的に突き詰めたネタが多い。ただ、本人のキャラが薄いから、バラエティ番組とかでは目立たないんです。俺はキャイ~ンさんや錦鯉みたいなキャラが濃い漫才師が好きだから余計そう思うのかもしれないけど、キャラ重視の漫才師が増えたらもっとおもしろくなるのになって思っています。

まぁ、キャラが薄いのは、お笑いのみならず、プロ野球でもプロレスでも一緒ですけど。昔は王貞治さんや長嶋茂雄さんのような野球選手や、長州力さんや天龍源一郎さんのようなレスラーなど、一度見たら忘れられないようなキャラの濃い人がたくさんいましたから。

――ザコシさんもNSCの11期生でしたが、当時はキャラが濃い人が多かったですか?

ザコシショウ:そうですね。当時のNSCは不良とか変な人もたくさんいましたから。たとえば、面接に行ったら、隣の人が何を思ったか、木の被り物を作って座っている人がいたり。その人は落ちていましたけど(笑)。

◆売れているか売れてないかよりも大切なこと

――売れる人と売れない人には、どんな差があると思いますか?

ザコシショウ:「やりたいことをやってるかどうか」じゃないですかね。芸人でも多いんです。「もうやりたいことがわからない」って言っている人。でも、それっておかしくないですか?「お笑いをやりたい」と思っているから、この業界に入ってきているわけですから。

先日も、後輩から「キングオブコントでなかなかいい順位が取れないから、飲みいってくれますか」と言われて行ったんです。そのとき、「お前、やりたいことって何なの?」って聞いたら、「わかんないんですよ」って言う。結局、この仕事は売れているか売れてないかよりも、やりたいことをやれているかやれていないかが大事だと思います。

◆死ぬまでにお笑いでやりたいことは全部やる

――「これをやったほうが売れるな」という戦略よりも、自分がやりたいことのほうが重要なんですね。

ザコシショウ:やりたいことをずっと続けていけば、いつかは当たるんです。反対に、やりたくないことで売れても、結局続かないし。あと、自分の気持ちに嘘をついて「これをやったほうが売れるな」って思ってやったネタって、どうしてもおもしろくないんです。そりゃそうですよ、自分がやりたくないことを、うまく表現できるわけがないんだから。僕も悔いのないように、お笑いでやりたいことは全部やり尽くしていきたいです。

――10年後は、何をしていたいですか?

ザコシショウ:10年後は、もうヨボヨボしていると思います。いまYouTubeで「シュシュっとごくろうさん」っていう番組を、野生爆弾のくっきーと一緒にやっているんです。あいつのほうが3歳くらい若いから、「俺より瞬発力があるなぁ」って思うことも多くて。会話の途中で反応が遅れたり、固有名詞が出てこなくて、「あれ」とか「これ」とか「それ」とかの言葉しか出てこなかったりするときは、「衰えたな」ってがっくりします……。

――では、20年後は?

ザコシショウ:20年後は死んでいるかもしれませんね(笑)。仮に生きていたとしても、頭が回らなくて多分つまんなくなっているから、お笑いはやめさせられているかも。そうなる前に、お笑いでやりたいことは全部やっておきたいです。

【ハリウッドザコシショウ】

1974年2月13日生まれ、静岡県清水市(現・静岡市清水区)出身。「R-1ぐらんぷり2016」優勝。2021~2024年にかけて、同大会審査員を4年連続で務める。SBS(静岡放送)『冠ザコシの冠冠大冠』、MBSラジオ『アッパレやってまーす!』などに出演。ハリウッドザコシショウX (@zakoshisyoh)、公式Youtubeチャンネル「ザコシの動画でポン!」

<取材・文/藤村はるな 撮影/尾藤能暢>

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