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デビュー50周年を経てなお暴れつづける71歳俳優がスゴすぎる。もはや“永久不滅”を感じさせる

女子SPA! 2025年1月16日 8時46分

 時代劇ファンにはおなじみの『暴れん坊将軍』(テレビ朝日)シリーズ、実に17年ぶりの新作『新・暴れん坊将軍』が、1月4日に放送された。松平健が演じる8代将軍、徳川吉宗役の魅力は色褪せていなかった。

 2024年後期の朝ドラ作品として放送されている『おむすび』(NHK総合)では、松平が演じる主人公の祖父・米田永吉役の暴れん坊っぷりが話題でもある。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、暴れん坊将軍と暴れん坊じいさんの両役を演じる松平健を解説する。

◆お決まり尽くしの時代劇シリーズ

 徳川綱吉治世下、ちりめん問屋の隠居に扮した水戸光圀が、全国を旅しながら世直しをする『水戸黄門』シリーズ(TBS)では、悪代官を成敗するお決まりのクライマックスに「この紋所が目に入らぬか」という決め台詞がある。

 同様に、征夷大将軍である徳川吉宗自ら江戸の世直しをする『暴れん坊将軍』シリーズでも、決め台詞「余の顔を見忘れたか!?」が炸裂する。水戸藩の水戸光圀と紀州藩の藩主から将軍になった徳川吉宗という、御三家に出自をもつキャラクターによる破天荒な世直し物である。

 決め台詞のあとには仰々しい効果音が入る。仰々しいけどこれがないと締まらない。視聴者にとってもお決まり。時代劇ならでは。待ってましたの興奮がある。お決まり尽くしの時代劇シリーズである後者から、実に17年ぶりの新作『新・暴れん坊将軍』が放送されたのは素直に嬉しいものである。

◆恒例の新年スペシャル

『暴れん坊将軍』といえば松平健。松平健といえば『暴れん坊将軍』。2024年には、松平健のデビュー50周年を記念して舞台化作品が明治座で上演された。2025年新年に放送された『新・暴れん坊将軍』は、周年の延長というわけである。

『暴れん坊将軍』シリーズ大ファンである筆者は、ちょうど2024年の年の瀬に時代劇専門チャンネル(2024年12月24日放送)で、記念すべきスペシャル第1弾作品『暴れん坊将軍Ⅱ スペシャル 吉宗失脚!?初春一番の大江戸裁き!』(1985年)を見た。

 シリーズ第1作目(1978年)から吉宗のライバル役として登場する尾張大納言宗春(尾張徳川家は御三家の筆頭)が、なにかと将軍の座を狙ってくる。吉宗が唯一成敗できない相手でもある徳川宗春を中尾彬がぎらぎらした眼差しで怪演していた。悪だくみを試みた幕臣たちが成敗される中、ひとりプイッとふてくされるこの宗春役を『新・暴れん坊将軍』では、GACKTが伊達者風情で現代的に演じている。

◆デビュー50周年を経てなお永久不滅を感じさせる

 17年ぶりの新作で、しかも新年スペシャルともなれば、こうしたアップデートが有名時代劇シリーズにも求められるのだろう。とはいえ、お決まりの「余の顔を見忘れたか!?」は、さすがに変わらずクライマックスまで温存されるかと思ったら、冒頭でいきなり繰りだされる。

 上様、ちょっとサービスが過ぎるんじゃないか。松平健は、第1作から寸分違わない口跡で、この決め台詞を発している。すごい。上様が身体にしみこんで、いつ演じてもすぐに憑依できてしまうのである。

 決め台詞のあとの見せ場であるチャンバラ場面は、松平の年齢による多少もったりした手さばきをカット割りでカバーしながら、切れ味はまだまだ鋭い。デビュー50周年を経てなお永久不滅を感じさせる。

◆『暴れん坊将軍』とリンクする朝ドラ『おむすび』

 50周年を記念した2024年から2025年にかけて、どこか『暴れん坊将軍』的なDNAが刻まれたかのような、暴れん坊ぶりのキャラクターを演じるドラマ作品がある。橋本環奈主演の朝ドラ『おむすび』である。

 松平が演じるのは、主人公・米田結(橋本環奈)の祖父・米田永吉。家庭をかえりみず、破天荒に好き勝手放題の永吉は、息子である米田聖人(北村有起哉)と確執がある。

 第3週第12回の回想場面では、トラック運転手である永吉が「万博たい」といってひとり見物にでかけてしまう。困っている人がいたら、すぐさまトラックで駆けつける。ネット上では、永吉の人助け精神を『暴れん坊将軍』とリンクさせる声もある。

◆自家製の効果音をこしらえる松平健

 松平の代名詞にちなんで、“暴れん坊じいさん”と形容してもいいかもしれない。第1週第2回で描かれる米田家の夕食場面を見ると、ちょっとした類似(?)がある。

 永吉は焼酎の水割りとつまみで晩酌しながら、テレビで野球中継を見ている。応援するチームが点をとられると、悔しそうに「かぁ~~~」と発する。この響き、なんか似ている……。

 下手なこじつけを承知でいうのだが、「かぁ~~~」の響き、決め台詞を発した吉宗が謁見の座にあるショットがインサートされるときの効果音に聞こえた。高橋英樹主演の『桃太郎侍』(日本テレビ、1976年)でも使用された、東映スタジオ仕込みの効果音に対して、暴れん坊じいさん役を演じる現在の松平健が、自家製の効果音をこしらえているように思うのだ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu

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