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Netflix『阿修羅のごとく』昭和男を演じる“俳優4人”の色気がすんごい! ドロ沼展開で「最も輝いていた男」は

女子SPA! 2025年1月22日 8時46分

1月9日から配信がスタートしたNetflixシリーズ『阿修羅のごとく』がとにかく最高です。1979年と1980年にNHKで放送された向田邦子脚本のホームドラマを、世界的に注目を集める是枝裕和監督がリメイク。全7話を一気見したアラフォー筆者が、面白いと感じた3つのポイントをご紹介します。

◆NHK版をリスペクトして創られたリメイク版

まず作品の概要を。『阿修羅のごとく』はまさに昭和のホームドラマで、映画化や舞台化もされてきた作品です。生き方も性格も異なる四姉妹が、年老いた父・恒太郎(國村隼)に愛人がいたことを知るところから物語はスタートします。

そこから、一見平穏な家族関係の裏に渦巻く感情が、少しずつその姿を見せはじめるのです。Netflix版の舞台もNHK版と同じく、1979年の東京。台詞やキャラクターが多少調整されている部分はありますが、話数も脚本も大筋は当時と同じです(NHK版は1979年に全3話が、その1年後に第二部として全4話が放送されました)。

NHK版と比較して観ても、当時の昭和を生きた市井の女性たちの生活をリアルに映し出していることも、ホームドラマらしい家族の会話を軸にした構成も、しっかりと受け継いでいます。クレジットも「原作・脚本 向田邦子」が冒頭にきて、「監督・脚色・編集 是枝裕和」と続くことからも、NHK版をリスペクトして制作されたことが伺えます。

◆昭和男を演じる俳優たちの色気がすんごい!

情報解禁時から、長女・綱子を宮沢りえ、次女・巻子を尾野真千子、三女・滝子を蒼井優、四女・咲子を広瀬すずが演じるという、超豪華女優陣が注目されていました。もちろん、四人それぞれの素晴らしい表現力に魅了されました。しかしそれ以上に筆者が惹きつけられたのは、昭和男を演じた俳優たちの色気! 四姉妹それぞれに対峙する男たちがやたらと色っぽいのです。

妻(夏川結衣)がいながら、夫を亡くした長女・綱子と不倫関係を続ける料亭の主人・貞治を演じるのが内野聖陽。次女・巻子の夫で、秘書(瀧内公美)との浮気を疑われる鷹男を本木雅弘。潔癖で恋愛ベタな三女・滝子と、四姉妹の父の不倫調査をきっかけに出会い、関係を深める興信所の調査員・勝又を松田龍平。そして、四女・咲子と同棲する芽の出ないボクサーを藤原季節が演じています。

香り立つ男らしさと、男の本音を映し出すダメ~な感じを、四者四様それぞれに表現していて目が離せません。特に第3話は、4人全員が“やらかし”ます。その姿の滑稽さたるや! それぞれが見せた男の生き様にやられました。個人的には、昭和のザ・サラリーマンなのに“二枚目”の色気がつい漏れてしまう、もっくんに一票!

◆今っぽいレトロ感で、昭和の風景を見事に再現

昭和レトロな世界観がイマっぽい映像美にも魅せられました。衣裳やヘアメイク、小物、セットの映し出されるすべて。至る所に昭和の時代背景が反映されており、制作スタッフたちの本気度を感じます。缶コーヒーのプルタブがちゃんと完全に離れる仕様になっていたり、雑誌『暮しの手帖』も当時の号が置かれていたり。

見ればすぐに“昭和”と分かるけど、決して古臭くない。当時の色使いやデザインのレトロさを活かしながら、すべての画角に昭和らしさを感じさせる見せ方が徹底されているのです。

俳優の演技の面でも、その再現度は光ります。ダイヤル式の黒電話(黒じゃないものもありますが)の扱いが、全員とっても自然。受話器を肩と耳に挟んだり、右耳から左耳にスムーズに持ち替えたり、口元に手を当てたり。

そして「ふたりで包(くる)まるひとつの分厚い毛布」。綱子と貞治、滝子と勝又がそれぞれに関係性を表現するアイテムとして使われていたのも印象的です。昭和の生活をリアルに再現しているからこそ、それらをチェックしたり思い出したりするのも面白いポイントでした。

◆「日常のなかにあるドロ沼」がリアルすぎる

こちらはNetflix版に限ったことではありませんが、改めて『阿修羅のごとく』の描く人間の業が、凄まじくリアルだと感銘を受けます。最近の映像作品は、視聴者に考察させたり、ジェットコースターのような展開で次々と真実が明らかになったりするものが主流。しかし、リアルな世界ではどうでしょうか?

夫が浮気をしているかも……と疑念を抱いても、何もせずやり過ごす女性も多いように感じます。また、いけないと分かっていても、ダラダラと関係を続けてしまうこともあるでしょう。ちょっとした出来事で、急激に心が変わることもあるでしょう。

「女はね、(浮気や不倫について)言ったら負け」「人間なんて厚かましいもんなんだから」など多くの台詞は、令和のイマ聞いても頷いてしまいます。視聴者に対しても、細かく心情や関係性を説明することも、すべての真実を明らかにすることもありません。暴かれないことにこそ、そこにあるドロ沼にリアリティを感じるのです。

更にいうと、登場人物たち一人ひとりのキャラクターが、役者それぞれによって再構築されたからこそ、Netflix版においても向田邦子が表現した四姉妹の物語を作品のよさをそのままに、改めて楽しむことができたのだと思います。それほどにすべての俳優が素晴らしい! 何度も観返したくなる1本です。

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ちなみにNHK版『阿修羅のごとく』は未視聴だった筆者ですが、今回NHKオンデマンドで初視聴。45年前の作品とは思えないほど引き込まれ、見応えがありました。恐るべき向田邦子脚本。令和の実力派俳優たちと是枝監督をはじめとするスタッフによって再構築された傑作、昭和生まれの方は特に必見です。

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201

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