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51歳芸人が「日本のドラマ界に欠かせなくなった」3つの理由。“替えのきかなさ”はどこから来るのか

女子SPA! 2025年2月2日 15時47分

ドラマ『ホットスポット』(日本テレビ系、日曜よる10時30分~)で角田晃弘が演じる“高橋さん”がツボすぎる!

同作は、ひょんなことから宇宙人と出会った主人公・清美(市川実日子)の日常を描く「地元系エイリアン・ヒューマン・コメディ」。角田=高橋さんはビジネスホテルで働く清美の“ちょっと苦手な先輩”ですが、物語の核となる、ある重要な秘密を持っています。彼を見ていると、改めて俳優・角田晃弘が日本のドラマ界に欠かせない存在になったと感じます。その理由はどこにあるのでしょうか。

※この記事には、ドラマ『ホットスポット』第1話と、『半沢直樹』(2020年)の一部ネタバレを含みます。

◆芸人俳優からドラマ・映画俳優へ。角田晃弘、進化の軌跡

言わずもがな角田は、2009年のキングオブコントで優勝したお笑いトリオ「東京03」のメンバーです。東京03は日常のシチュエーションを描くリアル系コントが人気で、今も単独ライブのチケットは入手困難といわれています。

お笑い芸人がドラマや映画に出演することは決して珍しくありません。話題性のための出演というケースもありますが、高い演技力をもっている芸人が多いことも確か。角田も2011年頃からコンスタントにドラマに出演するようになりました。

当初はまだ「芸人さんが俳優をしている」という印象で、芸人としての色の方が濃かったように思います。しかし、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019年)やドラマ『これは経費で落ちません!』(同)などで俳優としての才能を徐々に印象付けていきます。

そして、日曜劇場『半沢直樹』(2020年)、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年)の2作品をきっかけに、いよいよ“ドラマ界に欠かせない俳優”というイメージへと変化。2023年の映画『怪物』では、喜劇俳優としてだけではない、角田の存在感を発揮しました。

そして現在放送中の『ホットスポット』では、普通のおじさんに見せかけて実は宇宙人、という重要な役どころを担っています。物語の“核”として、いつも嫌そうな顔をしながら主人公たちに振り回される姿でシュールな笑いを誘う角田。そんな彼が、日本のドラマ界に欠かせない理由は大きく3つあります。

◆理由1:隣にいそうなルックスで油断させてくる

リアリティのあるドラマを制作するにあたって、芸人や個性派俳優たちの存在は欠かせません。角田もそのひとりであることは間違いないでしょう。職場や友人、隣人に角田のような佇まいの人は確かに“いそう”です。

『半沢直樹』においても、上司に頭が上がらずヘコヘコする銀行員・三木役は、まさに職場に“いそう!”な存在でした。物語のはじめは「残念な銀行員を象徴的に表す役どころなのかな?」と油断していましたが、まさかの大活躍! 追い詰められ切迫した角田の表情と演技は、忘れられません。超実力派俳優たちの演技合戦が人気だった大ヒットシリーズに、確かな爪痕を残しました。

◆理由2:フツメン風なのに、醸し出される唯一無二の空気感

どこにでも“いそう”な人という、作品の世界に馴染む力は確かなものです。しかし、それだけではないところも角田の魅力ではないでしょうか。気づかされたのは、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』での角田の佇まい。

松田龍平・岡田将生と並んで、松たか子演じる主人公・とわ子の元夫を演じました。どこにても“いそう”なおじさんの風体ながら、ただ者ではない独特の空気感に驚かされます。作中で、周囲からは「器が小さい」と思われていますが、憎めないチャーミングさがあり目が離せませんでした。

そして『ホットスポット』の高橋さん役でもまさしくその強みが発揮されています。角田が凄いと感じるのは、“中年男性”の佇まいと、“宇宙人”っぽくもある佇まいの両方を醸し出している点です。宇宙人としてまるでヒーローのような特別な力をもっているのに、その力を使うと発熱や関節痛、痒みといった副作用に見舞われると語る、リアルな中年男性感はお見事! 両方の属性に説得力を持たせる、角田の不思議な存在感はまさに唯一無二ではないでしょうか。

◆理由3:確かな演技力と作品に馴染む力のハイブリッド

東京03のコントを見た人なら誰でも、トリオ全員の演技力が高いことは分かるはずです。コントはある設定のなかで役を演じるわけですから、コントで頂点を極めた東京03の角田が、俳優としてドラマに出演し活躍することは決して不思議ではありません。実際に角田は、どんな役どころも実に個性的に、印象的に演じています。

しかし、コントとドラマを見比べると感じるのです。角田が絶妙に演技を使い分けていることを。観る者に役の特徴や台詞をオーバーに分かりやすく伝えるコント。一方でドラマや映画での角田は、作品の世界観や相手役に合わせてトーンを調整しています。

『ホットスポット』は、市川・平岩紙・鈴木杏の幼馴染3人を中心とした会話劇が人気ですが、同作においても、角田の力を強く感じます。「他愛もないおしゃべり」という非常に長尺のやりとりを自然に聴かせ、さらに視聴者を惹きつけることは実に難しいもの。そんな3人の女子トークを繰り広げる実力派女優たちの演技を、角田は自然に受け止め、3人の会話にすっと馴染んでいます。それは、簡単そうでとても難しいことのはず。角田が高い演技力を調整しながら、作品・場面ごとに使い分けている何よりの証拠です。凄まじい表現力の持ち主であると、改めて感じさせられます。

◆俳優・角田にとって新たな代表作に

宇宙人・高橋さんのキャラがあまりにもツボで、「ぜひお友だちになりたい!」と思っているのは、筆者だけではないはずです。『ホットスポット』は恐らく俳優角田にとって新たな代表作となることでしょう。

周囲に振り回されながらも、宇宙人として頑張る彼の活躍を、引き続き見守りたいと思います。

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201

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