県立海洋科学高校(横須賀市長坂)の生徒が、県名産のかんきつ類「湘南ゴールド」を餌に使用したフルーツ魚「湘南ゴールドヒラメ」を開発した。身やエンガワにほんのりとかんきつの爽やかな香りがするヒラメだ。商品化にはハードルが高いが、生徒は「地元のお店で使ってもらうなど浸透したらうれしい」と今後の展開を模索している。
同校は授業の一環として地域の漁獲量増に向け、ヒラメを種苗生産し、稚魚を海に放流している。その際、表面が白くなる「白化個体」や右側に目が寄る「右ヒラメ」といった形態異常のため放流できないヒラメが一定数出るという。
◆臭みや傷み防ぐ
これを活用できないかと、同校水産食品科の生徒が参加するクラブ活動「食の探求クラブ」が、フルーツ魚の生育を思いついた。同クラブはこれまでも未利用魚を使った缶詰など商品開発を手がけてきた。
餌にかんきつ類を混ぜることで、臭みや傷みを防ぐ効果があるとされることから、フルーツ魚は各地で養殖されている。かんきつ類を使うなら地元名産を使ったほうが良いと、かながわブランドに登録されている「湘南ゴールド」の使用を計画。県を通じてJA全農かながわに協力を依頼し、約10キロを提供してもらった。
湘南ゴールドは、小田原生まれのかんきつ類で、ゴールデンオレンジと温州ミカンを交配させた品種。県西部を中心に年間約160トン生産されている。生食のほか、飲料品や菓子などの加工品も人気がある。
◆エンガワに強い香り
生徒はサバのミンチと細かく刻んだ湘南ゴールドの皮を混ぜ、つなぎに湘南ゴールドの果汁とパン粉を入れて餌を作った。5月からヒラメを飼育し、7月から湘南ゴールド入りの餌を与え始めた。10月中旬までに約80匹が約30センチほどに成長したという。
11月17日には生徒と学校、JA全農かながわ関係者が参加してお披露目会が同校で開かれた。生徒がさばいた刺し身や、湯煎した切り身、ムニエル、ヒラメを具材に入れた茶わん蒸しの4メニューが提供された。
エンガワに特に強い香りが感じられ、参加者は「刺し身が一番香りがする」「湯煎もなかなか」と味わっていた。
同科2年の山口桃さん(17)は「やはり生食が一番風味がある。しかし、学校で生食は提供できない」と課題点を上げ、「地元のすし店など刺し身を扱う店に提供して、浸透したらいい」などと話し、今後の活用法を検討したいとしている。
◆フルーツ魚
かんきつ類の果実を餌に混ぜて育てられた養殖魚。かんきつ類には、抗酸化作用の成分が含まれるため、養殖魚特有の臭みや、傷みを抑える効果があるとされている。高知大が開発し、2007年に鹿児島県で誕生した「柚子鰤(ゆずぶり)王」が有名。養殖業が盛んな西日本ではカボスヒラメ、ミカン鯛(たい)など数多くのフルーツ魚が商品化されている。