川崎市麻生区の自宅で2021年、介護していた長男=当時(37)=を拘束し、死亡させたとして、逮捕監禁と保護責任者遺棄致死の罪に問われた父親で無職の男の被告(71)の裁判員裁判の判決公判で、横浜地裁は28日、保護責任者遺棄致死罪について無罪を言い渡した。逮捕監禁罪の成立は認め、懲役3年、執行猶予5年とした。求刑は懲役6年だった。
公判で検察側は、統合失調症の疑いが指摘されていた長男が脳出血を起こし、寝たきりとなって衰弱していたのに被告は医療措置を受けさせず、床ずれによる感染で死亡させたと主張。一方、被告は逮捕監禁は認めたが、保護責任者遺棄致死罪については「医師の診断を受けなければいけない状態と思わなかった」などと無罪を主張していた。
足立勉裁判長は判決理由で、長男に外傷は見当たらず利き手は動かせていたことから、医学知識のない被告が脳出血などに気付くのは容易でないと指摘。被告が床ずれを見た事実も認められず、医療が必要な状況と認識していたとはいえないと判断し、同罪について無罪を言い渡した。
逮捕監禁罪については、長男が全裸で外出して警察が出動したことから拘束を始めたと認定。「公的支援を受ける機会は幾度もあった。約4カ月監禁を続けた態様は悪質」と非難した。