晩秋の北海道、かつて釧路と炭鉱町・雄別を結んだ雄別(ゆうべつ)鉄道の跡を訪ねるツアーに参加した。雄別は筆者が生まれてから数年間を過ごした町。半世紀ぶりだったが、あちこちに残る痕跡を知った。
釧路市立博物館の見学会。1923(大正12)年の雄別鉄道開業から100年を期して企画された。年間100万人、貨物100万トン以上を運んでいたが、炭鉱閉山に伴い1970(昭和45)年に廃止された。
JR北海道の釧路駅では地下道奥の扉が開かれ、6番線の階段へ。雄別鉄道のホームにつながっていた。新釧路駅跡付近には、雄別炭砿の子会社だった釧路製作所が今もあり、保存されている蒸気機関車8722を見学。
その先の線路跡の一部はサイクリングロード。その脇には、駅のホームの痕跡。立体交差していた簡易軌道の橋脚がそそり立つ場所も。市の布伏内(ふぶしない)コミュニティセンターには、「古潭(こたん)・雄別歴史資料室」が置かれ、管理人さんが集めた雄別関係の写真や資料が満載。
そして終点は、かつての雄別炭山駅。クマも現れる山の中、警戒を徹底したうえで砂利道に入り、林の中のホームや転車台の跡、ボイラーの巨大煙突の下も歩くことができた。
4倍を超す応募者から選ばれた参加者には、かつてこの鉄道で釧路まで通ったという90歳の女性もいた。また、近くに住む9歳の男の子は、目を輝かせて写真を撮っていた。
「そういえば、あの崖の下で、機関車が行き来するのを眺めていたような…」筆者も幼い日の記憶がよみがえってきた一日だった。 (a)