人手不足対策、快適な観光環境の整備、インバウンド(訪日客)需要の確保に向け、観光業界でもデジタルトランスフォーメーション(DX)技術を取り入れる事例が増えている。神奈川県内で進む取り組みに迫った。
「何かお困り事がありましたら、お声がけください」-。ホテルのフロントに設置された機械の前に立つと、モニター越しにスタッフが現れた。JR東日本ホテルメッツ横浜桜木町(横浜市中区)で展開中のリモート接客サービス「Remoline(リモライン)」だ。
「リモライン」とは、リモートとオンラインを掛け合わせた造語。チェックインや問い合わせの応対を、遠隔地からモニター越しに行う新サービス。対面での有人チェックインに比べ、機械での作業は約3分短縮できるという。同ホテルを運営する日本ホテルによると、同サービスは2022年4月から都内のホテルで運用を開始。横浜桜木町店では、同年7月に導入した。
運用の経緯について、同社企画グループの堀田幸助氏はこう明かす。「チェックイン時が一番、お客さまと接する機会がある場面で、ホテルマンのサービス力を発揮できる瞬間でもある。ただ新型コロナウイルス禍で、客から非対面非接触の要望があり、試行錯誤の末、現在の形となった」
こだわったのは、“有人”での対応だ。
日本ホテルが展開するリモート接客サービス「リモライン」。運用前には半年間、実証実験を実施した。アニメやイラストなどの対応も試みたが、利用者からの声を受けて、あくまで従業員での対応に踏み切ったという。同社企画グループの堀田幸助氏は「『寄り添うおもてなし』を考えたときに、やはりスタッフの顔を出した方がお客さまには好評だった」と話す。
リモラインの実施は午後2~9時。高齢者ら機械操作に不慣れな利用者には、遠隔でチェックインの手続きも代行する。英語で語りかけるなど柔軟な対応も心がける。
担当スタッフはホテルメッツ内にある都内2カ所のリモートセンターに在籍、現地ホテルの省人化にもつながった。堀田氏は「人手不足の時代。デジタルトランスフォーメーション(DX)をうまく活用していきたい」と話している。