自民党の渡海紀三朗政調会長が厳しい年明けを迎えた。能登半島地震への対応に加え、党内を律する新たな「政治改革大綱」の策定を迫られているからだ。35年前、同党若手議員の政策勉強会「ユートピア政治研究会」で共に党改革を訴えた鈴木恒夫元文部科学相(中選挙区時代の旧衆院1区)は「自民を変えるラストチャンスだ」とエール。有名無実化していた最初の大綱の精神を吹き込めるかが問われている。
「ユートピア(理想の政治の意)」は1988年のリクルート疑獄に端を発した政治とカネを巡る政治不信を解消しようと集まった渡海、鈴木、石破茂、逢沢一郎の各氏ら「自称、下級武士」(鈴木氏)20人で発足。その提言などを元に自民は翌年に「政治改革大綱」をまとめた。しかし、結党以来初の下野(93年)など、混乱の中で「塩漬け状態」(閣僚経験者)のままにされてきた。
安倍派(清和政策研究会)のパーティー券収入裏金事件を巡る人事刷新で先月22日に政調会長に就いた渡海氏は、抱負として新たな「政治改革大綱」の策定を挙げ、「われわれが政治改革をやっていたころから時間も過ぎ、直すべきところもある」と付言。党政調関係者は「渡海さんにとって雌伏35年の改革大綱は『完璧』との自負がある。それを押し殺し着地点を探っているようだ」と解説した。