「車好きの聖地」として関東各地から熱狂的なドライバーが集う横浜市鶴見区の首都高速大黒線大黒パーキングエリア(PA)が今、日本の旧車や改造車に熱中する外国人観光客から脚光を浴びている。ただ、徒歩ではPAに入ることができないため、外壁の柵をよじ登って不法侵入したり、タクシーで乗り付けて帰りの足がなくなったりするなどの問題が急増。管理する首都高速道路(東京都)や神奈川県警高速隊などが対応に追われている。
昨年12月下旬の金曜日。時計の針が午後9時に近づくと、警察車両や首都高のパトロールカーが場内閉鎖を告げるアナウンスを響かせ、利用者の退場を促し始めた。次々と車が立ち去っていく光景を見て、PA内の片隅には困惑の表情を浮かべる若い男性の姿があった。
「なんで車が追い出されていくの?」。フランスからの男性留学生(19)は滞在する都内のホテルからわざわざ足を運んだものの、お目当てのスポーツカーを見ることができずぼうぜんとした。辺りには同じく手持ちぶさたな外国人観光客が10人以上立ち尽くしていた。
湾岸線、大黒線のどの方向からも入れる全方位型の大黒PAは1989年9月、横浜ベイブリッジの開通と同時に開業。ドライブの途中で訪れる一般客だけでなく、自動車の改造を披露したり、バイカーの交流の場にもなってきた。昨今は大きな音をスピーカーで流したりする「音響族」や改造バイクを乗り回す「旧車會」の集団が駐車場を占拠する事態がたびたび起こり、県警も摘発を重ねてきた。
2022年末ごろからは、新型コロナウイルスに関する水際対策の緩和に伴い、外国人観光客のPAへの来訪が増加。来訪者がSNSに書き込んだりすることで、世界的に大ヒットしたカーアクション映画などに登場する国産スポーツカーが集まる「DAIKOKU」の名前が広がっていった。
一方で、PAを管理する首都高の担当者は「外国人観光客の注目を集めると同時に、駐車場に長時間滞留するなど日本人の利用マナーも悪化してきている」と頭を悩ませる。外国人観光客による徒歩での侵入も悩みの種で、毎月10件ほど柵を越えて入り込む危険行為が確認されているという。