障害者は恋愛も結婚もできない─。そんな思い込みや偏見を変えるべく、障害者専門の結婚相談所を運営する会社が相模原市中央区にある。株式会社「alles liebe(アレスリーベ)」。昨年8月には相談所に就労継続支援B型施設を併設し、結婚から仕事まで一人一人の人生をサポートしている。
昨年11月、同社のホームページには60代男性と50代女性の結婚報告が新しく掲載された。
≪男性は聴覚障害をお持ちですがお話はできる方です。成婚までにはすれ違いが多くお互いが無理かも?と悩まれておりましたが、私達のお節介パワーとお二人の引き寄せる力が強くご結婚となりました≫
2人の出会いから伴走してきた同社の青木啓子社長(54)は「幸せそうな姿を見て、私たちも幸せをお裾分けしてもらっている」とうれしそうに話した。
青木さんはもともと障害者施設の職員だった。10年以上にわたり障害者と関わる中で、ある違和感がずっとあったという。「障害者の恋愛はかなりセンシティブな扱いを受けている」
施設には障害者のカップルがいた。お互いが好意を持ち、必要としていた。青木さん自身はシェアハウスに一緒に住み、後見人を付けるなどサポートすれば結婚は可能だと思ったが実現しなかった。「恋愛や結婚は『個人の問題』と支援しない風潮が強かった」
当事者自身にも思い込みがあった。「恋愛は空想の世界」「障害のある私たちは結婚できないよね」。障害者が集まる女子会に参加した際、10代、20代の女性たちは漏らしたという。
青木さんは言う。
「そんなことないのに、と思う一方で、当事者にそう言わせてしまう現実があった。人として当たり前のことを選択し、自分で決めることができるように背中を押したいと思った」。2021年、個人事業主として障害者専門の結婚相談所をスタートした。
当初、周囲からはなかなか理解されなかった。全国各地の婚活アドバイザーや相談所が集うネットワークを活用し、相手を紹介し、見合いを設定するのが常だが「障害者専門」と名乗ると断られたり、懸念を示されたりすることがあった。
一方、青木さんに問い合わせが絶えなかった。遠方からの相談も多く、その都度、相談者に会いに行った。「ありがたいことに新規会員がゼロだった月がない」。22年11月に法人化し、23年8月には就労継続支援B型の事業所を開設。JR淵野辺駅前に結婚相談所と事業所を構えた。