悪質なホストクラブを利用した女性客が高額な料金を請求された末、ホストが立て替えた「売掛金」を悪用し、女性客に売春を強要する事例が問題となっている。都内では店側が自主規制のルールを設けるなどの動きがみられ、県内では県警がホストクラブ店舗に一斉立ち入りするなど被害防止に取り組む中、依存症の治療などを専門とする大石クリニック(横浜市中区)の大石雅之院長は「入り口を規制することは重要だが、それだけでは彼女たちを救うことはできない」と指摘する。問題の解決策を探る議論に必要な視点を聞いた。
─現在、社会では悪質なホストクラブを取り締まる動きがみられる。
「国会では売り掛けをするようなホストクラブがまず悪くて、通う女の子たちがだまされているという図式。だからホストクラブを抑えれば、何とかなると考えられている」
─悪質なホストクラブがあるのも事実。
「ホストクラブに行く女性にとって、初回は『3千円』だった料金が『3万円』と金額が大きくなってしまうところは確かにだまされているのかもしれない。だが、今回問題になっている売掛金のために借金を重ねたり、売春をしたりする人は、だまされているかもしれないと分かった上でも、何度もホストに会いに行ってしまう人たちだ」
─大石クリニックには「ホスト依存」の女性が治療に訪れている。どういった女性たちなのか。
「まずは自己肯定感が低い人。成育や家庭環境に起因していることが多い。それに加えて発達障害がある人もいる」
─問題を解決するには今後どのような議論が必要か。
「ホスト依存に悩む女性の中には、周囲とうまくなじめないことで孤立した結果、行けばちやほやして優しくしてくれるホストに依存してしまう人がいる。今後はホストクラブを規制するだけでなく、のめりこんでしまう女性たちの支援や背景についても議論する必要があるだろう」