インターネット上の仮想空間「メタバース」を活用して社会課題の解決を試みる取り組みが広がっている。神奈川県ではひきこもり当事者への支援として昨年11月からメタバース内で社会参加を促すイベントを開催。障害のあるアーティストらによる作品展示も行うなど、全国に先駆けた取り組みに成果が期待されている。
メタバースは、英語の「Meta」(超越した)と「Universe」(宇宙)を組み合わせた造語。コンピューターによる立体映像の技術を使い、自分の分身「アバター」で他の参加者と交流したり、仕事をしたりすることができる。地理的、物理的な制限がなく世界中から同時アクセスが可能で、新しい社会基盤として注目されている。
メタバースの利点を生かした支援に取り組もうと、県では2022年度に有識者らでつくる研究会を発足。障害者とひきこもり当事者を支援する観点でそれぞれ模索してきた。
内閣府が22年度に実施した調査から推定される県内のひきこもり当事者は約11万4千人。「新型コロナ禍で外出を控えた人や、自宅にいても満足度が高く支援を必要としない人なども含まれ、実態把握は難しい」(県青少年課)という。
同課の岩崎有吾課長は、メタバースを活用した経緯について「ひきこもり当事者に一方的に就業支援を促すこと自体が『対面の暴力』になりかねない。コンテンツに触れる中で仕事などの選択肢を提示したい」と説明。県がプラットフォーム「Metapa(メタパ)」内に特設した「県“つながり発見”パーク」には、仕事関連の漫画や動画も用意した。