藤沢市を拠点とするシニアベンチャーが、宇宙輸送産業に挑んでいる。独自に考案した繊維強化セラミックスは、低コストかつ耐熱性を実現。宇宙と地球を行き来する「宇宙往還機」の大気圏再突入時の高温にも耐えられそうだとして、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究を進めている。湘南発の素材を外壁に採用した“日本版スペースシャトル”が、宇宙へ飛ぶ日が来るかもしれない。
このベンチャー企業は湘南先端材料研究所(藤沢市)。谷本敏夫代表取締役(78)はかつて湘南工科大学の学長やシドニー大学客員教授を務め、複合材料の研究では第一人者とされる。
退官後は「悠々自適の生活を送ることもできた」が、2014年7月に同社を設立。中小企業基盤整備機構などが支援する起業家育成施設「慶応藤沢イノベーションビレッジ」(同)を経て、現在は「湘南藤沢インキュベーションLABO」(同)を拠点としている。
谷本さんが手がけるのは、800~千度程度の温度にも対応可能にした軽量耐熱材だ。既に特許も取得したという。従来は製造にあたり特殊な大型装置が必要でコストが課題とされていたが、谷本さんは独自の製造方法により「大企業とは1桁違う」ほどのコスト削減を実現した。
これに着目したのがJAXAだった。16年、ロケットノズルへの応用を見据えた共同研究に着手。21年には「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」の一つに採択した。