岸田文雄首相(自民党総裁)は29日、現職の首相としては初めて衆院政治倫理審査会へ出席した。自らが呼び水となり、公開を渋る安倍派幹部らを引っ張り出す効果はあったものの、説明内容はこれまでの国会答弁などの範囲を超えずじまい。一方で旧民主党を引き合いに立憲民主党を挑発する場面もあった。野党は反発を強め、2024年度予算案の週内採決も不透明な様相となってきた。「岸田総理の終わりの始まり」(自民の閣僚経験者)との厳しい見方も広がり始めた。
首相の決断を巡っては「捨て身で国会を動かした」との評価もある一方、「まるで『さあ、僕も一緒に行くぞ』という昭和の青春映画。今どき、はやらない」(自民重鎮)などの冷めた見方が大勢となっていた。
実際、政府・与党内にも「説明の中身に進歩がなければ火の玉ならぬ火だるまになる」(官邸関係者)との懸念が強かったという。しかし、自民執行部の機能不全状態から「サポート役や調整役の不在でほぼ丸腰のまま政倫審に突入してしまった」(同)格好だ。
質疑では立民の野田佳彦元首相から「総理が記者に対して行った『与野党の駆け引きで政倫審の開催が滞っている』との説明は間違っている。自民の身内の争いこそが原因ではないか」と指摘されると「与野党の議論が続いていたのは事実だ」などと反論。「事件に関わった議員をもっと説明に立たせるべきだ」との追及には「御党(立民)の前身(旧民主党)の代表(鳩山由紀夫元首相)が政倫審を欠席した歴史もかつてあった」と顔を紅潮させて切り返した。