JR東日本グループが手がける荷物輸送サービス「はこビュン」の取り組みが広がっている。新幹線や特急列車を使った定期便で、神奈川県内では開始から2年半で100件を超えた。割高なコストがネックとなるが、「物流の2024年問題」により利用増の期待もかかる。
午前9時32分、JR東京駅のホームには小田原駅発の特急「湘南14号」が到着。続々と乗客が下車する中、グループ会社のジェイアール東日本物流の2人組の男性が待機する。乗客が降りたのを確認すると、すぐさま車内へ。青いビニール袋がかけられた発泡スチロールを2箱手にし、向かった先は、東京駅構内の鮮魚小売店「sakana bacca(サカナバッカ)」。店長の清水俊明さんは2箱受け取ると、手早く処理し、同45分には店頭に鮮魚が並んだ。清水さんは「きょうのマダイは脂がのっていて刺し身でも良さそう」とほほ笑んだ。
JR東日本横浜支社(横浜市西区)では、22年10月から小田原漁港(小田原市)で水揚げされた鮮魚を毎週、東海道線の特急「湘南」に積んで都内まで届けている。輸送するのは当日朝、水揚げされた魚で2箱程度。車内販売用の準備室を活用し、毎週火曜に実施。輸送費は、小田原の卸売業者が支払う。
同支社地域共創部の担当者は「もともとは新幹線で始まったサービス」と語る。地方の食材を首都圏の住民に食べてもらうための取り組みで、JR東日本では17年7月から、新幹線で各地方の果物や野菜を輸送し、東京駅で「朝どれ新幹線マルシェ」を実施した。
しかし、新型コロナウイルス禍で、鉄道利用者が減少。新幹線でも空席が目立つ中、貨客混載という形で、列車で乗客と荷物も合わせて輸送する新サービスを提供できないかとテストが重ねられた。最近の新幹線での事例では臨床検体や血液、精密機器といった非食品の輸送も展開する。