視覚障害のある横浜市在住の夫婦が、深夜に突然訪ねてきた神奈川県警の警察官に許可なく自宅に上がり込まれた上、障害への配慮を欠いた対応を受けて精神的苦痛を被ったとして県に220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は21日、職務上の注意義務を尽くしたとはいえず、障害者差別解消法が求める合理的配慮を怠ったなどとして請求の一部を認め、県側に計27万5千円の賠償を命じた。
判決などによると19年10月9日、マンションから怒鳴り声がするなどと110番通報を受け、磯子署員ら5人が聞き込みをする中で午後11時40分ごろに夫婦宅を訪問。繰り返しインターホンを鳴らしたりドアやガラス窓をたたき、妻が玄関で応対した後は承諾なく居室内に立ち入り、10日午前0時半ごろまで滞在した。
原告側代理人によると、同法の定める合理的配慮を欠いたとして国家賠償法上の違法性を認めた判決は初めてとみられる。
高取真理子裁判長は判決理由で、緊急性があったとして深夜の訪問は適法としたが、視覚障害がある夫婦の意思に反して承諾なく居室に立ち入ったのは違法と判断。夫婦に視覚障害があると認識した署員らは、同法に鑑みて人数や性別を説明するなど「健常者なら把握できる情報を伝え、どこまで立ち入って良いか明示的に確認すべきだった」とした。
さらに現場には女性署員もいた中、視覚障害者の夫は急きょ下着姿での対応を強いられたと指摘。「女性の存在を伝えて衣服着用を確認するなど、合理的配慮は容易に可能だったのに怠った」として人格権の侵害を認めた。
県警監察官室の加藤秋人室長は「主張が一部認められず残念。判決内容を検討の上、適切に対応する」などとコメントした。