複数の空き家を宿泊施設に再生し、近隣の飲食店などを巻き込んで地域全体を「ホテル」と見立て地域活性化を目指すプロジェクトが、横須賀市浦賀地区で進んでいる。ホテルのレセプション機能と客室がある建物1棟を現在展開している民間事業者が、空き家の古民家を新たに改修して宿泊施設とする計画に着手した。事業者は「市内の空き家対策や、移住者増加の一つの形として地域貢献できれば」と話している。クラウドファンディング(CF)で空き家の改修費用の支援も呼びかけている。
空き家を活用した分散型ホテルの取り組みは過疎化に直面したイタリアで始まり、「アルベルゴ・ディフーゾ」(AD)として知られる。空き家の増加や人口減に直面する横須賀でADを実現しようとプロジェクトを始めたのが麦島康友さん(43)。市内出身で不動産会社などに勤めた後、2018年から愛媛県に移住し、地域おこし協力隊として活動した。
移住経験を通じてADを知り、昨春、不動産会社時代の元同僚で一緒に移住していた永田鏡子さん(45)と宿泊事業や不動産業などを手掛ける会社「RE&H」を設立した。
ADへの第1弾として京急浦賀駅に近く、浦賀ドックに隣接する築約60年の3階建てビルを改装。以前は学童保育施設として利用され、5年近く空き物件となっていた。1階を分散型ホテルのレセプション機能とレストラン・カフェスペースに、2階は5人まで泊まれる客室に改修した。「酒と宿と不動産」と名付けた施設は、国内外の観光客を中心に利用され、現在の稼働率は8割程度という。
現在、宿泊者には近隣の飲食店を紹介したり、麦島さんも同行したりするなどして、地域の回遊性を高める努力をしている。複数の宿泊施設の整備を進めて地域でADの認知度を上げつつ、飲食店などと協力や連携も深めていきたいという。
今年は第2弾として、レセプション施設から徒歩8分にあり、空き家だった築約80年の木造平屋の改修に着手した。地元の大学生や高校生とも協力して、浦賀の活性化や新たな宿泊施設のプランを考えながら取り組んでいる。「若者の柔軟なアイデアを取り入れながら進めていきたい」と麦島さん。宿泊施設は今夏の営業開始を目指している。